議論

 しかし,教員・スタッフのスキルや知識もまちまちな上に,まったくの初心者からベテランまでいる学生多数を相手に,どのように何を教えるのか,何を学ぶのか,それが議論になった。

 京都コンピュータ学院自動車制御学科のカリキュラムはITが主なので,自動車工学とりわけ二輪についてはあまり授業が開講されていなかった。エンジンの基礎構造も大事だし,二輪独特の車輪とシャーシと路面の関係を知ることも大事。いやそれ以上に,バイク乗りにとって重要な知識のひとつとして,貴重な日本の文化遺産であるカワサキ空冷Zの,文化的な意味での知の体系化が一番大事ではないか。ここは学校であり,世界初の自動車制御学科なのだから,CarITを教えるのがメインテーマであるので,カワサキZの電気系統のIT化やインジェクション化とIT制御もやろうじゃないか。VMキャブにインジェクションを仕込んで,概観は当時モノ,中身はデジタルってのも面白い,云々・・。手前味噌な意見もあって,夢は展開する。

 議論百出して結局,バイク,とりわけカワサキZが好きな仲間が集まる場を創って,若者に人生を教えることを一番の目標にしようということに集約してきた。つまり,技術や知識を伝授するだけではなく,好きモノが皆で集まってワイワイとバイクを製作していたら,そこから何かが出てくるはずだと。(こういう教育方法をコンストラクティビストデザインと言う)

 まあ,楽しけりゃいいか。IT・コンピュータで日本一の伝統を誇るKCGのスローガンは,「楽しい学校」。そういえば,本学創立者は,戦争中の学徒動員で明石のカワサキ工場で飛行機を造っていたそうだ。カワサキZ1のエンジンは,「日本で最初にコンピュータを使って設計されたエンジンだ」という話を聞いたこともある。紙カードパンチと大型機の時代の話。ご縁です。

comments

前準備

 まずはカワサキZ関連のパーツをかき集めて整理する。エンジンとフレーム,ホイールやらキャブやら,電装品まで,夫々を総点検した上で,足りないものをあちこちから集める。長い間かかってコツコツ集めて倉庫や屋根裏や裏庭やらあちこちに溜め込まれていたパーツを全部ひっくり返して吟味すると,お宝をたくさん持っていたつもりが,実はたいしたものがないこともわかった。バイク一台製作するというのは,結構大変なもんだ。あれもこれも足りない。
 カワサキのパーツリスト,サービスマニュアル,雑誌,授業で配布する資料として,コピーを作成してもらう。担当の方には,感謝。そして,授業資料の収集と整理,授業用パワーポイントスライドの作成など。結構時間がかかった。開講は6月から通年の一年間,とすることになった。

comments

何故カワサキ空冷Zなのか?

 ありとあらゆるエンジンの中で,これがダントツに面白い,楽しい,感性に響いてくる,からである。偶然の賜物だとしか思えないのだが,空冷Zエンジンの奏でる音は,イタリアのカンツォーネか日本の演歌か,なんだかわからんが,心に響いてくるものがある。集合管をつけた日にゃあ,もう,唯に感涙むせぶのみ。嗚呼,Kawasaki Z!
 高度成長期の日本で設計・生産され,世界を席巻した工業製品としての当時の技術力と,そして,今なお,多くのファンを惹きつけてやまないその魅力。それは単に技術という枠を超えた,文化的な何かがある。単なる交通手段としてではなく,享楽の道具としてオートバイを設計するならば,次の時代は,絶対性能や加速,最高速ではなくて,乗って楽しいかどうか,感性に響いてくるかどうか,を,ITで実現することだ。だから,京都コンピュータ学院の底力を結集して,実現すべき対象を研究しようと。等等・・・。

第二週目の講義

 
後日の,教室での授業風景(あとから追加でアップしました)

comments

カワサキ空冷Zの実習車両について

 教員各人がすでに保有しているフレームやエンジン,各種パーツを持ち寄って,5台の空冷カワサキをレストア・カスタム製作をする。学生を5チームに分けて,いっしょにやろうということになった。

 1号車は,カワサキZ2(Z750RS)のサーキットレーサー。できるだけ当時のパーツを使って渋く仕上げる。モトマーチンのスイングアームとホイールに赤いマルゾッキを合わせて,ちょいヨーロピアン。スポンサーは<ヘッド>。エンジンはヨシムラ860cc。

 2号車は,カワサキZ1000R2をベースに,エディ・ローソンが乗った実車のレプリカ。これもサーキット専用。できるだけローソンの実車に合わせたいところ。S1レプリカというよりも,ローソンがサーキットを走った実車が目標。スポンサーは<大阪コーチャン>。

 3号車は,カワサキZ1000R1のストリート仕様,これはスポンサーの<Pop…?>のもの。

 4号車はカワサキZ750Z4のフルレストア,錆びてボロボロになった一台を再度光らせようという試み。スポンサーは<タカギトシユキ>

 5号車はカワサキZ1Rをベースに,17インチでアメリカっぽいカスタム。スポンサーは私,元締めの<輪ん>。
以上,5台を製作することにした。

 番外編として,写真のようなSR500のカスタムを組み立てる。

京都のオフィシャルさんが製作したもの

 
写真は京都のオフィシャルさんが製作したもの。クラッシックなカフェレーサー仕様。

comments

インストラクショナルデザイン(授業と教え方の設計)

 IT教育の話を少し。KCG自動車制御学科の正規科目なので,正式名称は「自動二輪特論」。前期と後期,通年での授業である。教室での基礎知識の授業と,実車を分解して組み立てる実習授業のブレンド。もちろんKCGのすべての授業がそうであるように,ネット上のKCGのEラーニングのプラットフォームにあらゆる情報が乗っていて,各資料をネットで閲覧できる。
 一方的に知識を伝授する旧来型の授業ではなくて,学生主体で学び学生が楽しめる授業を目指す。教師から学生への押し付けはできるだけNG。そして,各種資料を検索するためのサポートを可能な限り徹底する。教員たちがコレクションしてきた様々な雑誌,マニュアル,パーツリストも集めて書架に並べ貸し出しにしている。ネット上のデータ量はもちろん,書籍コレクションも含めて,情報量はハンパではない。カワサキ空冷Zに関するあらゆる情報を蓄積し,カワサキ空冷Z情報のデジタルアーカイブを創り上げていきたい。

教室での授業

教室での授業
授業は全てeラーニング化される。授業コンテンツは全部学内ネットにアップされていて,学校でも自宅からでも,ダウンロードできる。

comments