オレンジ系洗浄剤の恐怖

空冷 カワサキ Z1,Z2,Z1000R,のカスタム@京都コンピュータ学院自動車制御学科

オートバイや自動車,自転車を綺麗に磨こうとするとき,オレンジ皮から抽出した酸でできている洗浄剤は使用してはいけない。この洗浄剤はバイクショップや自転車屋,カーショップで普通に売られているので,この事実はあまり知られていないかもしれない。

10年ほど前からだろうか,オレンジの表皮からの抽出物でできた洗浄剤が普及し始めた。オレンジジュースを絞ったあとの残りかすから造るのだそうだ。その洗浄剤は,家庭の台所の洗剤から自動車,バイク関係のショップでも普通に見られるし,混入されているシャンプーまである。お持ちの各種ボトルの裏の成分を確かめてみて欲しい。

人体には優しい油脂を溶かす洗剤として,圧倒的な支持を得ているが,これは特にアルミ合金にとっては大敵である。そのオレンジ皮の洗浄剤が普及し始めて以来,自転車やバイクなどのビンテージもののアルミパーツが,大量に腐食し始めている。

アルミでできた古いパーツで,表面がまさにオレンジの皮のように小さな凹凸がやたら目立つものを見たことがおありだろう。あれはまさに,オレンジ皮抽出の洗浄剤で拭いた結果なのである。

このオレンジ皮を原料とする洗浄剤は,グリスや油脂を徹底的に溶かして流し去るので,ドライブチェーンやスプロケット,センタースタンドの油と泥の混ざった汚れには強いし,アルミパーツを磨くと,地肌がピカピカになる。

しかし,浸透力と残存度が高いようで,使用後に,一般の洗剤と水でよほど綺麗に洗い流さないと,金属表面に付着したまま残る。そして,それは徐々に金属表面を侵食し,一年もすると,アルミパーツは見事に腐食が進み,表面がボロボロになってしまうのだ。これでは,磨いているのではなく,腐らせていると言っても過言ではない。

金属の分子構造の間にまで浸透するのかどうか,確証を得たわけではないが,腐食の仕方を見ている限りでは,それくらい強力なように見える。徹底して普通の洗剤と水で洗浄するとしても,超音波洗浄機で洗浄するくらいの覚悟は必要だろう。

近年,中古パーツで流通しているアルミの地肌にやたら凹凸が目立つのは,まさにこれが原因である。アルミパーツは,自然に腐食したとしても,そうそう凹凸にはならないものである。オレンジ系洗浄剤で洗ったものは,見たらわかる。腐食の仕方が,まさにあちこち虫歯になっている歯のような,紅顔のにきびだらけ美少年が大人になったときの肌のような,打ち寄せる海の波に浸食される砂岩のような,,,とにかく凹凸の激しい地肌になっているのである。これは表面を多少削り取ったくらいでは,平滑にならないくらい,深い穴が開く。

スプロケットなどの油汚れの強いものに限らず,およそすべてのパーツの洗浄には,伝統的に灯油や,多少の危険性を伴ったとしても,シンナーやガソリン等,ごく普通の石油製品を使うべきである。特に,オレンジ皮抽出物のような,近年発明されたケミカルは使用しないほうが良いと思う。その瞬間は綺麗になったように見えても,後からじわじわっと侵されていくようなものが実際にあるのだ。

自動車,バイク,自転車,ボート,およそアルミ合金が使用されるものから,オレンジ皮系の洗浄剤を追放しよう。これは貴重な文化遺産を破壊する恐怖の洗剤である。

京都コンピュータ学院自動車制御学科

京都コンピュータ学院
京都情報大学院大学

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