クローズアップ現代「ペットは泣いている ~激安競争の裏側で~」を経済学で考える

これは昨日8月5日のNHK番組です。

お嫁様は予約してくれて、昨日で見ました。

スグに感想を述べようとしましたが、

色々考えているうちに、一日経ってしまいました。

愛犬家として…だけではなく、経済学の道を歩む人として、

少々、意見を述べさせていただきたいと思います。

番組の概要は、下記の通りです。

8月5日(水)放送 ペットは泣いている~激安競争の裏側で~

右肩上がりの成長を続けてきたペット産業。そこに今、価格破壊の波が押し寄せている。不況の影響で消費が冷え込む一方、インターネットを通じてペットを販売する業者の新規参入が相次ぐなど、販売業者は増え続けている。

このため、価格競争がエスカレートし、そのしわ寄せはペットを直撃している。

コストを削減するために、繁殖犬に十分なエサも与えず、年に何回も子犬を産ませる"パピーミル(子犬工場)"と呼ばれる悪質な業者も登場。

一方で、飼い主の中にも、安易な理由でペットを手放してしまう人たちがあとを絶たず、毎年、10万頭あまりの犬が行政によって処分されている。

人間の都合に翻弄されるペットをどのように守っていけばよいのかについて考える。
(NO.2778)

スタジオゲスト
野上 ふさ子さん
(動物保護団体「地球生物会議」代表)

このドキュメンタリーの内容は、大きく分けると、

「ペットを安易に捨てる消費者側」と「ペットミルなどの生産者側」の

二つの側面からレポートしていますが、

今回の記事は、ひとまず「生産者側」の側面から、

「激安競争の裏側」について、考えてみたいと思います。

結論から述べますと、ぉぅぇぃはこのペット市場の「激安競争」の現状は、

社会にとっては望ましくない…と考えています。

しかしその理由は「ペットは泣いている」だけではありません。

ぉぅぇぃは我が家の黒姫パグ犬を愛する、いわゆる愛犬家です。

すなわち、「犬を大事な存在」「犬は家族」のような考え方の持ち主です。

しかし、この類の問題を論ずるときは、こういった立場を基づいて考えると、

正直、ちょっと「論」にするのは難しいですね。

なぜかというと、「犬は大事な存在であるかどうか?」、「犬は家族であるかどうか」というのは、

ある意味、道徳・倫理・モラルの問題であり、価値観の問題になります。

論点のボーダーそのものも、それほどハッキリしたものではないのですね。

「ペットは泣いている、可哀想!」というのは、愛犬家のぉぅぇぃの言い分でもあるのですが、

この出発点から始めようとしたら、例えば

「鶏が毎日卵産まされたり、牛が年中ミルク出されたりのはどうだ?」、あるいは

「動物の毛皮をもぎ取る、象牙を折る、クジラ漁をするのはどうだ?」のように、

論点が拡散してしまい、話が進まなくなってしまいます。

従って、ここはあえてテーマの「ペットは泣いている」から一歩下がって、

純粋に経済学の見地から、この「激安競争の裏側」について、考えてみたいと思います。

まず、ペット市場の激安競争の本質的なところはどこにあるか?というと、

ペット産業における「情報の非対称性」…が一番大きいじゃないかとぉぅぇぃが考えます。

「優れている」とされているペットは、その道を精通するプロじゃないと、そう簡単に生産できません。

ここで言う、「優れている」というのは、

メンタル的にも、フィジカル的にも、人と共に生きていくことに適している…ということです。

そのような仔犬を生育ために、

もちろん、親犬のメンタルもフィジカル面も上手にメンテする必要がありますし、

生まれてくる仔犬も、適切に育っていかなければなりません。

これらについては、動物の生態に関する知識や健康維持するための技術が必要です。

それだけでも、そう簡単ではないのですが、

さらに「愛玩」動物としての価値を高めようとしたら、

特定の血筋を維持し、特定の犬種の、特定の特徴を強く表せるため、

遺伝学や掛け合わせなどの知識が必要になります。

それらのことを考えると、「優れている」ペットを生育するのが困難…ですが、

そうではないペットを生育するのは、意外と、それほど難しくは無いのですね。

しかし、非常に困ったことに、ペットの性質上、「優れているかどうか」は、

見極め、目利きはそれほど簡単ではない…というのが、かなりクリティカルなポイントですね。

なぜなら、ペットというのは、比較的に若年…ところか、

幼児…のような状態で取引が行われますので、

成長したらどうなるのか、どういう性格をしているのか、

何か遺伝的な疾患が出てくるかどうかは、その生育の現場を見て、

そして深い知識が無い限り、仔犬を見るだけでは、なかなか知ることが出来ません。

さらに、クローズアップ現代も取り上げられたように、

ネット通販やネットオークションなどが流行っていると、

本来なら、最小限の「触って、見て、聞いて、確認する」プロセスさえ出来ないので、

そうしたら、「ベストショットの写真」と「値段」だけで「即決」するような状態になるのですね。

この現象を、経済学の「情報の非対称性」で解釈すると、

つまり、売り手であるペット生産者が知りうる情報と、

買い手である消費者が知りうる情報の間に生まれる、

情報格差が非常に大きい…ですね。

この格差によって、その気になれば、ペット生産者側は、容易に消費者を騙すことが出来ます。

クローズアップ現代を見る限り、恐らくペットを飼う人の多くは、

自分が買ったペットは、どのような環境で、どのような親犬から生まれてきたかが、

実は何一つ良く分かっていなかった…じゃないでしょうか?

経済学の立場から見るとき、ぉぅぇぃが心配するのは、

「見た目」は同じだけど、「中身」が大きく異なる場合もある商品の市場は、

一種の「レモン」市場…になってしまうことです。

「レモン」は、本来はアメリカの俗語で、質の悪い中古車を意味しています。

中古車というのは、十分な知識・情報がなければ、

外見だけを見ても、エンジンなどの中身は良く分からないのですね。

外観はどんなに立派でも、もしかしたら、交通事故で大破したことがあったり、水浸しだったり、

非常に故障しやすい…のような欠陥品かもしれません。

もちろん、外観が立派で、中身も立派な中古車も存在しています。

しかし、このような「良い中古車」と「悪い中古車」が混ざっている市場は、

もし情報の非対称性を解消出来なければ、

理論上、最終的に「悪い中古車」ばかりに成ってしまう…のですね。

「レモン市場」の原理を、ペット市場を使って説明してみます。

例えば、親犬の心身に細心の注意をはかり、

血統など理論を基づいて、良いブリーディングをするブリーダーさんが居るだとしよう。

もちろん、色々気遣い、「優れている仔犬」を生育しているので、

手間賃も含めて、この「優れている仔犬」を10匹、

少なくとも一匹25万円で売りたいと考えます。

同じごろ、親犬の心身を気にせずに、知識や技術もなく、

あんまり良くないブリーディングをするペット小売人が居るだとしよう。

もちろん、特に何も気にしていませんので、適当に掛け合わせて、

「不健康かもしれない仔犬」を生育しているとしよう。

あんまり手間隙かけてないので、この「不健康かもしれない仔犬」を10匹、

一匹5万円で売れば儲けが出るが、

この仔犬の相場は25万円なので、とりあえず25万円の値段札をつけます。

市場の中では、合計20匹の仔犬が居ます。

どれが「優れている仔犬」であり、どれが「不健康かもしれない仔犬」が分かりません。

どの犬も、25万円と表記されています。

しかし、消費者も知っています、この市場の中には、

半分の25万円の価値の「優れている仔犬」と、

半分の5万円の「不健康かもしれない仔犬」がいる…と。

「優れている仔犬」と「不健康かもしれない仔犬」の見分けが付かないので、

確率は二分の一に成るのですね。

そうしたら、消費者からしてみれば、今から買おうとしている仔犬の推定価値は、

25万*0.5+5万*0.5なので、15万円になります。

そうしたら、消費者が購入するときは、

気持ち的に「15万円で売って下さい」と交渉したくなるのです。

しかし、当たり前のことですが、「優れている仔犬」を生育しているブリーダーからしてみれば、

25万円分の手間隙をかけているのに、

15万円しか売れないなら、一匹当たりに10万円の大赤字…、

「おいおい、やってられん!」ということに成るので、この市場から撤退していきます。

逆に、「不健康かもしれない仔犬」を売っているペット小売は、

「5万円でも儲かるのに、15万円も出してくれるとは、これはウハウハ!」ということで、

さらに積極的にこの市場に参入していきます。

そうしたらどうなるかというと、「優れている仔犬」を提供するブリーダーが消え、

「不健康かもしれない仔犬」が、市場に溢れ返ってしまいます。

このような「レモン市場」では、経済学的に望ましくないとされています。

なぜかというと、高いスキルの人が作った高品質の財を売ることが出来ず、

市場には低品質の財だらけになってしまい、もちろん取引も活発じゃなくなるので、

社会全体の効用が下がってしまうのですね。

ここらへんのことをもっと知りたいのであれば、

グーグル大先生に「レモン市場」「情報の非対称性」「逆選抜」などで調べてみてください。

あるいは、ウィキペディアも基本的なことが記載されています。

このように、ぉぅぇぃは「愛犬家」として…だけではなく、

経済学の道を歩む人として、この「激安競争の裏側」のような現状は、

決して望ましくない…と考えています。

では、どうすれば改善できるのか?

もちろん、NHKに出られた動物保護団体「地球生物会議」代表の野上ふさ子の主張のように、

法律による規制が有効です。

しかし、出来ることはそれだけではありません。

落ち着いて座って、法案が成立されるまで待つだけではなく、他にも出来ることがあるはずです。

他に何が出来るかというと、一番大事なのは、「情報の非対称性」の解消…です。

つまり、買い手が積極的に売り手の情報を知ろうとすることです。

どのように親犬をメンテナンスをしているのか、

どのような環境で飼育しているのか、

どのようなポリシーでブリーディングをしているのか、

仔犬はどのような方針で育つのか、

獣医や経験豊かのブリーダーの指導を受けているのか、

などなど…、それらの情報を確認できない限り、取り引きしない…ことです。

もちろん、売り手の言うことを鵜呑み…ではなく、

例えばインターネットで評判を調べてみたり、

出来れば近所の人や、その犬舎から犬を買った方の評判も聞いたり、

あらゆるところから出来るだけ多くの情報を入手したほうが良いですね。

そして、自分がペットを買ったら、

買った犬舎の良い情報も、悪い情報も、積極的に提供するようにしましょう。

ぉぅぇぃは、インターネットの生体販売を反対しているわけではありませんが、

現在の販売形態だと、とてもじゃないけど、ダメですね。

なぜなら、「情報隠し放題」です。

どうしてもオンラインで生体販売をしたいなら、十分な情報開示…が一番重要でしょう。

それこそ、例えば24時間で犬舎の様子をインターネット中継する…くらいの配慮が必要です。

無論、長年の歳月で、信用を築き上げた単犬種の犬舎は、別扱いしても良いかと思います。

「優れているペット」を提供している犬舎も、

出来るだけ積極的に情報開示を努力してもらいたい。

「ウチらは良い仕事しているから、何も言わなくでも買ってもらえる」時代ではありませんので、

言葉だけではなく、あらゆるチャンネルを使って、自分の良さをアピールしてもらいたい。

要するに、「売り手と買い手の間に厚い信頼関係を築いていきましょう!」

「信用できない業者を業界から排除していきましょう!」…ですね。

信用に値する情報を充分に提示しない業者に「ノー」を突き出せ続け、

「お前らのやり方だと、儲からないよ!」と分からせれば、彼らもいつかやっていけなくなります。

仮にイギリス並みの法律が成立しなくでも、自分の中で、その法律の通りに行動すれば、

1人1人だと少ないけれど、少しずつ業界にプラスな影響を与えれると思います。

ペットが好き、ペットが嫌い…のようなレベルの問題ではなく、

情報の非対称性を解消していかなければ、

多くの人間に癒しを与えるペットが売買される市場もいつか廃れていく…かもしれません。

それは、社会にとって大きな損失になります。

冒頭で述べたように、ぉぅぇぃ家の人々は、「愛犬家」と分類される人種です。

我が家の黒姫パグも、いわゆる単犬種ブリーダーさんから購入しました。

我が家が購入した犬舎は、いわゆる展示販売をやっていなくて、

我々が実際に訪れ、ブリーダーさんと色々話をして、

ブリーディングの技術はどこから教わったのか、

困った時は誰に相談しているのかなどを伺いました。

黒姫パグ犬の、父パグや母パグも会って、

実際に親はどのような性格なのかも見てきました。

そのほかの、その犬舎で飼われているパグ犬らとの触れ合いました。

黒姫が生まれてきてから、我々も実際に犬舎まで会いに行ったり、

現状をブリーダーさんのメールで教えてもらったり、

様子をデジカメで撮って、送ってもらったりしていました。

黒姫パグ犬が我が家に来てから、数ヶ月の間、

ブリーダーさんも時々電話をかけて来て、

黒姫の体調などを確認しながら、こちらの心配事の相談も無料で受けてくれました。

しかし、大変残念なことですが、

この「優れているペット」を生育している犬舎は、一昨年廃業しました。

「激安競争の裏側」で、「もう、やってられん!」ということじゃないでしょうか?

実に残念…とぉぅぇぃは思います。

黒姫の父パグや母パグは、今どうなっているか…時々不安になります。

このようなことが続かないように、もちろん法律の改正も重要ですが、

出来るだけ、「良くない仔犬」を提供しようとしている業者を減らすように、

売り手の情報を丸裸にする買い手の意識も大事ですね。

さて、結構長く語ってしまいましたが、

長文、最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

かなり長かったのですが、

これで「ペットは泣いている~激安競争の裏側で~」のテーマの半分だけですね。

いつか、我が家が捨て犬の世話した経験も含めて、

「消費者側」を取り上げて、語ってみたいと思います。

↓元捨て犬ピーチ姫

宮崎パグ

居候パグ
犬と言えば骨…?
切腹しました…。
お嫁に行きます。
忍法、「マテ」の巻~
パグのくせに生意気だ!
お正月休み終わるね
チラっと雪
最後の夜…。
居候犬・その後。

関連記事:
http://blogs.yahoo.co.jp/panthera1026/30097306.html
http://blogs.yahoo.co.jp/ponpoko6691535/30314904.html
http://blogs.yahoo.co.jp/mkmk_dogs/29224764.html
http://animalhearts.blog8.fc2.com/blog-entry-248.html
http://blogs.yahoo.co.jp/pola0708/58524658.html
http://blogs.yahoo.co.jp/rayvege/29071410.html
http://blogs.yahoo.co.jp/springsanbo/20422951.html
http://blogs.yahoo.co.jp/automagclint1jp/29064578.html

comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*