琵琶湖の鮒鮨(ふなずし)

伝統的な鮨
 諸外国で鮨というと江戸前しか知られていない。しかし,日本にはその他,江戸前の握り鮨とはまったく別の食べ物だが,江戸前握り鮨が考案される以前の,原点たる発酵した鮨と,その後の押し鮨のバリエーションが存在する。ここからは,日本の鮨を語るにおいて,欠かせないものの代表について論じていく。

琵琶湖の鮒鮨(ふなずし)
 琵琶湖名物のフナの鮨。日本の伝統的な発酵食品で,熟成を重ねて作られる。子持ちのニゴロフナを1年塩で漬け込んで,飯とともに熟成に2年といった具合である。腹の卵の部分は,フランスのウォッシュチーズを超えるほど,絶妙な味わいがある。フランスの赤ワインとチーズのマリアージュは恍惚の極地であるけれども脂っこい。近江の酒とフナ鮨の婚姻は,アジアの別方向の極であり,胃にもたれない。地元の人が,伝統的な方法で漬け込んだものが絶品なのだが,近年,琵琶湖の環境破壊で本物にはあまりお目にかかれなくなってしまった。この鮒鮨と,なれ鮨のような鮨こそが,稲作文化発祥の頃からの,西アジア一帯の伝統的保存食品であり,鮨の原点である。

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