てんぐのカレーうどん—京都の和食,日本食

 京都コンピュータ学院という名称発祥の地,里の前から北上して,京福電鉄の踏み切りを渡ると,東大路通りの西側に,うどん屋さんがある。屋号を「てんぐ」と言い,古くから繁盛している店で,カレーうどんが超有名。
 カレーうどんは,あくまでも「うどん」であって,カレーライスのご飯が麺になったものではない。茹でた麺に,ククレカレーやボンカレーをかけるだけ,なんてのは,カレーうどんの概念範疇に入れてはいけない。そういったものは,「カレーライスのライス抜きうどんの麺入り」とでも呼ぶべきである。
 カレーうどんのスープはうどん出汁が原理原則のベースであり,そこにどれだけカレー粉が入っていて,どのようにアレンジしているかが,評価基準なのである。
 その観点で,てんぐのカレーうどんは,絶品中の絶品と言える。店で他のお客さんを観察していると,半数はカレーうどんを注文している。ピリリと辛く,牛肉の切れ端が乗っていて,出汁が効いており,うどんは京都式に柔らかく,とろりんと喉の奥に消えていく。京都のカレーうどんと言うと,ここが一番である,というよりも,ここより美味いカレーうどんがあったら教えて欲しい。

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やきとり,吉田の屋台—京都の和食,日本食

 京都情報大学院大学のある百万遍から東へ10分,京大農学部の門の前,吉田山の登山口に,夜は屋台が出る。
 昔から同じ経営で,味も変わらない。うどんとおでんと焼き鳥の店だ。この焼き鳥が,関西一ではないかというくらい,イケてる。せせりという,首の周りの肉を串に巻きつけて,甘い目のタレで薄味に焼き上げるのだが,安い材料でたいしたことはしていないくせに,凡百の焼き鳥を蹴っ飛ばすほど完成されているのである。うどんも京都式の汁もろとも飲み込む,あの淡さである。おでんは時間によって出来具合が大きく異なるので,鍋の中をよく観察して,頃合の良いものだけを選ぶようにする。
 暖かい季節には,とりあえずビール,せせりが焼けるまでにおでん少々,せせりを食べたら締めに昆布かきつねうどん。冬になると,テントの中でストーブが三台焚かれて,おでんが暖かくて熱燗が美味い。しみじみと京都の夜のもうひとつの側面を感じることができる。
 日中,少しでも雨が降ると,その夜は店を出さない。昼間雨の降った日には,行っても振られることになる。

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ぎお門の親子丼—京都の和食,日本食

ぎお門

 うどん,蕎麦,丼,焼き鳥,串カツなどを日本料理・和食のディナーだと勘違いしている人がいるが,これらは日本の伝統的ファストフードである。ヨーロッパのサンドイッチや,アメリカのハンバーガーなどに比較するものであって,決して,フルコースディナーの比較対象ではない。間違っても,「ディナー」だとは思わないこと。ファストフードでありながら,健康的で,美味いところが,そんじょそこらの洋もんを寄せ付けない,和の文化の深遠なのである。さて,京都・和の文化の伝統的ファストフードと言えば,トップバッターはぎお門の親子丼やデ♪

京都コンピュータ学院洛北校から東へ20分。京都コンピュータ学院白河校(旧浄土寺校)から北上しても20分,北大路通りと白川通りのT字路から北東に入ったところに「ぎお門」がある。蕎麦・うどんの類から定食までメニューは色々あるが,なんといっても親子丼が有名である。

 やや甘すぎる嫌いがあるが,玉子の溶き方,火加減,出汁と具の比率,何をとっても申し分無い。玉子はあくまでも半熟でありながら,他の具には完全に火が通っている。この状態でテーブルに出すには,加熱時間は一瞬のタイミングしかない。よくあるように,固まった玉子がしゃぶしゃぶ出汁に浮いているようなものでは,断じて無いのだ。頃合,間合い,タイミングの勝負を見せつけてくれる。

 東京でこういった丼物を注文したら,玉子がガチガチに固まっていて,黒い汁がかかっていて,醤油と塩がきつくて,いつも驚く。そんな丼ものに慣れた関東の人から見ると,京都の親子丼はお菓子の一種かと思われるかもしれない。それくらいまったりと甘く,ほんわりとしているのだ。京都の食べ物は,例え昼のファストフードでも,塩辛い労働のためのエナジーではなくて,たゆたう日常の心和むひと時なのである。

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