ライムグリーン中毒②

空冷 カワサキ Z1,Z2,Z1000R,水冷GPZ900Rニンジャのカスタム@京都コンピュータ学院自動車制御学科

日本の道に一番合っているライディングポジションは,実際のところ,いわゆる「殿様乗り」なのではないかと思う。

殿様乗りとは,70年代に生まれた言葉で,白バイみたいなライディングポジションのことを言う。
背はあくまでも垂直であり,足はステップに立った後にそのまま腰を下ろした位置,腕と手を自然に前に出したところにハンドルグリップがある。裃を着て軽く正座しているか中腰になっているような姿勢だから,そういう命名になったのだろう。法定速度域までなら,体が垂直に立っていてもさほど問題はない。ホンダのCB750もカワサキのZ2も,ノーマルは,その「殿様乗り」のポジションである。

バイクライディングの姿勢には,前傾から後傾まで,色々ある。バイクにまたがっている姿を横からみたときに,戦闘的に前につんのめっているレーサーレプリカのような前傾姿勢,後ろにふんぞり返った,ハーレーのような後傾姿勢。当然,それぞれに理由がある。

カワサキでは,ニンジャGPZ900Rから,本気の前傾が始まった。直前のGPZ750,GPZ1100Fは,前傾ではあるけれども,まだ,ハンドルが高いしステップも前よりである。
大型スーパースポーツは,カワサキでは,ZX-10,ZZR1100へと進化するにつれ,前傾のレーシングポジションが当たり前になっていった。
しかし,京都の北山を走っていると,GPZ900Rのニンジャ以降のポジションは疲れるのだ。あれは,高速道路でオーバー100kmで風圧を受けていると,ちょうど前傾の体重の寄り方と風圧が均衡して,手や腕に負担がかからなくなる。しかし,中低速の山間ワィンディングでは,よほどかっ飛ばない限りは,しんどくて辛い。この前のめりのポジションは,かっ飛ぶときには操作性が良いし,そのポジションになると気合も入って,それなりに良いのだが,気合なんて,せいぜい1時間維持できたら限界だから,それ以上になると忍耐になる。

他方,ハーレーのチョッパーのような万歳ご開帳系の後ろにふんぞり返ったポジションは,コーナーに突っ込んでいくとか,コーナーからの脱出で加速する,などという曲芸師みたいな真似をするポジションではない。高速道路で直進しているときは確かに楽チンなんだが,いざ曲がろうと思うと,実は結構,苦労する。実際,あまり上手ではないハーレー乗りのコーナーリングは,普通に流れている乗用車より遅い場合がある。つまり,コーナーリングを楽しむポジションではないのである。これはこれで,結構疲れる原因になったりする。

70年代にZ2などでかっ飛ばしていた走り屋系は,セパハンとバックステップに付け替えていた。当時,バックステップは,セパレートハンドルとセットで装着されるべきものであって,セパハン,バックステップにすると,操作性が向上して,見た感じでは,殿様乗りの姿勢ではなくなったのである。
しかしその後,道交法でセパハンが禁止されて,バックステップだけが残った。人々は,コンチハンに付け替えて,バックステップを付けた。
バックステップで後ろ上方に足を移動すると,横から見ているとまるできちんと正座しているように見える。しかしハンドルはコンチであるから,正座しながら上半身は,ボクシングのファイティングポーズをとっているようにも見える。この時代のZ2などの走り屋系カスタムが,独特の,「コンチハンで正座」という姿勢を生んだのだと言えると思う。これが,Z2を初めとする,当時の走り屋系ライディングスタイルの王道となっていったのではないだろうか。

そして,その後の,ゼファーなどのネイキッドバイクも,80年代中期以降からのレーサーレプリカの,ちょっとユルイ目くらいの前傾である。これは,峠ではそこそこ良いと思うのだが,高速道路の直進ではすこししんどい。それで,よく観察してみると,多くのバイクのステップの後ろ加減,上加減が,まさに,本来はセパハンでちょうど良いのではないかと思える位置にある。
それでつまり,最近のネイキッドは,セパハンが禁止されてバックステップだけが生き残った,70年代後半の流行を引きずっているだけのようにも思えてきたのだ。本当に,コンチハン+バックステップが乗りやすいのかどうか,疑問が生じた。

そこで,ローソンレプリカであるが,これは基本は,殿様乗りのポジションである。ハンドルもコンチというよりはアップである。しかし,タンクの後部までシートが這い上がっているために,ここを山の頂として支点にして,腰を左右に移動できるようになっている。つまり,殿様乗りプラス,ちょいレーサーレプリカ体重移動式とでもいうべきか。コーナーで腰を左右に落として走るレーサーレプリカと同様の姿勢で,ハンドルが上がっておりステップが前寄りであるから,横から見ると,乗車姿勢は,レーサーのそれを,腰を中心にして,そのまますこし後ろに時計回りに15度~20度くらい,回転移動したような,姿勢である。

これが実は,普通に流しているときは殿様乗りで楽であり,攻めるときには体重移動もできて,スポーツしやすいということに気づいた。基本的に殿様乗りができるということは,ひざに負担が来ない。ただ座っているだけであるのだが,いざコーナーをクリアしていこうというときは,レーサーレプリカよろしく,ハンドルとシートの前部とで,コーナーリングの内側に尻を落とすという重心移動もやりやすい。

レーサーレプリカの姿勢のまま,重心点を中心に後ろに20度?ほど回転した姿勢というのは,万歳ご開帳系の後ろのめりとは意味が違う。じつはこれはかなり良いポジションなのではないかと思っている。

コーナーに突っ込んでいくのを卒業する年齢になったら,万歳ご開帳系のチョッパーをカワサキ空冷エンジンで作って,直進だけのんびり走ろうと企てている。アメリカという,ほとんど直進しかないような道路事情でこそ,ちょうど良いポジションなのだが,日本の道路でも,あの乗り方にふさわしい「精神の落ち着き方」もあるとは思う。コーナーでも体重移動なんてほとんどせずに,ゆっくりと,遠いところへ。

しかし,ライムグリーンの中毒症状の出ている間は,腰を左右に落とせるポジショニングができないと駄目なのである。コーナーリングとは,体重移動のために腰を左右に落とすものであり,ステップに踏ん張ってヒンズースクワットをするスポーツであって,コーナーを脱出するときは全開するしかないのである。自己満足的な曲芸の一種であるが,満面の笑みはフルフェイスヘルメットで隠しながら,日毎走り回るのである。

ライムグリーン中毒とは,色によって気分が高揚するという問題にとどまらず,走り方の問題にも展開し,生き方の問題にもなるんだよ~。

ところで,来週から,カワサキ空冷をテーマにした例の授業が始まる。あまり準備もできていないので,週末はそれに費やす予定である。

京都コンピュータ学院自動車制御学科


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京都情報大学院大学

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