IT・コンピュータ関係への進学と業界に関する誤解について

あなたと違うんです??

IT・コンピュータの分野について,一般社会が誤解していることが多々ある。高度経済成長期にわが国に蔓延した誤解とともに,これは由々しき問題であると思っている。実は今日もその大きな誤解に遭遇したので,思いつくまま書いておく。誤解とは,「大学の文系学部に進学するとツブシが利く」という昭和のなごりのような思い込みと,「IT・コンピュータは理工系である」という思い込みである。

【文系学部はツブシが利く,というのは思い込みに過ぎない】
高度経済成長期に,高校の数学や物理・化学が苦手だという理由で,高校のクラス分けで文系を選び,いわゆる私立文系へと進学する層が増えた。
昭和の戦後にできたいわゆる新制大学の大半は,予算不足が大きな理由で文系学部しか開設されなかったから,そういった高校生は大挙して私立の文系大学に進学した。
それらの大学内では,卒業後就職を望む学生に対して,あまり関係の無い文系の「学問」を教えてきた。言うまでも無く,文系学部で勉強する学問の大半は,就職後の仕事と関係が無い。(昭和の当時,理工系の大学の認可を得るには,それなりの設備が要求されたから,私学で理工系を開設するのは非常に難しかったのである)

現在,日本のビジネス界で出身大学を尋ね,専門の勉強は何をしたかを聞くと,「学生時代はクラブばかりしてました」とか,「学生時代は何も勉強しませんでしたわあ~」などと答える人がかなり多いのはご存知だろう。世界の他の国で同じ質問をすると,「大学時代は○○を勉強した」と,普通は答える。「学生時代は勉強していない」などと答えたら最期,「コイツは馬鹿か」と思われてそれで終わりである。なぜそういった差異が生じるのか。ここに戦後日本の大きな問題が横たわっているのだが,詳述はまた別の機会にしよう。

実のところ,「文系学部はツブシが利く」というのは,「大学では職業に関することは何も勉強していない」=「何にも染まっていない」ので,「企業の色に染めやすい」から,企業に歓迎されたということなのである。あまりにもそういった例が多すぎるので,日本は,「学生時代は勉強しなかった」と平気な顔で言える国に成り下がっているのだ。

ともあれ,日本という国は,「大学で勉強してもそれが就職や生涯の仕事に関係が無い」という常識が出来上がってしまっているのは事実であろう。戦前から続く「とりあえず大学へ」という信仰が根強いために,そしてまた,日本の私立大学は文系が大半であるから,上述の常識が出来上がってしまっていて,「理工系への進学者が増えない」=「理工系と思われている仕事の従事者が増えない」ことの大きな理由になっているのではないかと思われる。

・【IT・コンピュータは理工系だけではなく,文系の仕事も多くある。】
高等学校の進学先としても,京都コンピュータ学院へ進学したとか,某大学から京都情報大学院大学へ進学した,というと,「理工系へ進んだのだ」と思われるのだそうだ。
プログラミングは,確かに,数学の応用が多用されるので,プログラマーという仕事は理工系の仕事だと思い込まれている。しかし,実はどちらかというと文系の仕事であり,プログラミングは文学の一種ともいえる。そして,ひところ喧伝された「IT革命」という言葉の真の意味は,そういった理工系と思われていたコンピュータが,文系人間のものになったという意味を含んでいた。つまり,人類社会に必要不可欠なコンピュータの利用方法は,今まさに文系的な視野でもっての対処が求められているのである。

ところが,である。今なお世間の大人の大半も高校の先生たちも,「コンピュータは理工系の分野だ」と思い込んでいるので,高校生たちもそう誤解する。大学生もそう誤解している。これには情報系やコンピュータを,いまだに工学分野に分類している文科省の責任も重いのだが,そういったことの結果,IT・コンピュータ業界では慢性的な人材難が継続しているのである。

【そして必要な認識は?】
コンピュータは空気と水の次に大事である。人間社会ではすでにコンピュータは無くてはならないものになっている。すでに,コンピュータが無くては人間社会は成り立たない。経済に関するあらゆる事物や航空や鉄道等の交通制御システムから,家庭での自動車や電化製品まで,コンピュータがかかわっていないものはない。皆が持ち歩いている携帯は,あれは小型のコンピュータである。

「人類社会に必ず必要な分野で仕事をしていく」,「生涯の生業をIT・コンピュータ分野に求める」,ということが,実は昭和の時代に出来上がった「経済学部はツブシが利く」などといった妄念を遥かに超えて,現代においては,最も食いはぐれの無い賢い選択なのだが,上述の「理工系だ」との思い込みと,高等学校での理数系教育の不成立など様々な理由によって,敬遠されているのが実情だ。

結果,コンピュータ業界での求人は多いまま,就職活動という意味での売り手市場が継続しているのだが,進学に直面している高校生とその親たちと,多くの先生たちは,まだ,社会の実情からかけ離れた判断をしている向きがあまりにも多いように思う。

今,日本全国の数多のコンピュータ関連企業で,人材が求められている。大量に仕事があるのに,人が足らないという状況に陥っている。高校の先生たちも,文系大学の教授たちも,家庭の親御さんたちも,その現実を知ってもらいたいものだ。日本のソフトウェア産業界にかかわる一人として,声を大にして言っておきたい。

IT・コンピュータについて客観的に判断して,その分野に進学して,その分野の仕事に従事し,「あなたと違うんです!」と言ってみては??(笑

京都コンピュータ学院
京都情報大学院大学

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