初手術

手術立会い

手術中のイメージ図

なんて言ったって,もう手術だ。

恥ずかしいのなんの,言ってる場合じゃない。手術台に上がったら,まな板の鯉よ。15:00なんてあっという間。私の手術は2件目なので,1件目の手術時間によっては前後するということだったが,殆ど時間ぴったりに呼ばれる。手術室のあるフロアへ移動し,手術室へ入室。想像以上の人数に驚く。皆に出迎えられ,自己紹介。なんだろ,これも全身麻酔に関係する事なのだろうか。あ,どもども。こんにちはタカギトシユキです。病棟ではほとんど見ない,若い男の人も何人かいる。

手術室は思ったより広く,何室かが中が繋がっている妙な造り。そのうちの一つに案内され,自分の力で手術台へ移る。初手術台。おー,この手術台,テンピュールマットレスか?? 低反発系であり,とても寝心地が良い。良い待遇。バイタル(Wikipedia)を計測する為,手術スタッフが手際良く色んなセンサを体に付けてゆく。すぐに脈拍が部屋に響き渡る。聞こえる脈拍数から,緊張せずリラックス出来ているのが客観的に分かる。ほぼ同時に,酸素マスクも装着。初酸素マスク。装着しても別に楽だとか,そういう感じは皆無。もっと違いの分かるようなアイテムかと思っていた。恐らく麻酔科医であろう人から,今から点滴ラインに麻酔薬を流して行きますねとアナウンス。入眠後は,あんな事とかこんな事とかされる訳だな。あんまり考えないでおこう。おこう…

今気付いたが,静かなクラシック曲も流れている。ネエさん,良い仕事してるぜ。それにしても,準備をする手術スタッフの動きが異常に素晴らしい。各人の手際も良く,また連携も素晴らしい。それは手術台の上から眺めていてもよく分かる。部署柄,イベント設計進行に関わる事があるが,比較にならない完成度の高さに感嘆。いやあ,手術スタッフっつーのは格好良いねえ…タカギさん,タカギさん! 終わりましたよ。ええー!!? ホンマデスカー!? 嘘でしょ。

眠いという感情を抱く暇すらなく終わった初手術。

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手術日編(その2)

コントローラ

シンプルなUIを有する介護ベッドの有線コントローラ。

その他色々な説明をしてチャキチャキ姉さんは,それではまた後で会いましょうねー(はぁーと),と退場。あれ,剃毛は? まあいいや,どうせあるんだ。あるって,冊子にも書いてあるし。あるし…

そして,また少し時間が空く。痛みに関しては,ベッドで大人しくしているとまだ皆無。ビバ内臓脂肪。動くとさすがに痛いので,大人しくしている。しかし,入院というのは慌ただしいものなんだな。体感では,次から次へと人がやってくる。なんて考えてると,検査のお知らせ。レントゲンと,肺活量系。

ここで初車椅子。点滴をキャスター付きポールから,車椅子用ポールへ移し変える。車椅子自体は,押してもらえるので楽。ただ,病院内には,建物を増築した跡があり,1センチ以下の段差がある。この乗り物,後輪は大径ホイールなのでこのぐらいの段差は体感できない程だが,問題は前輪だ。機能上,キャスターにしなければならない事と,車体レイアウト上近くに足が存在する為,一般的にどうしても小径ホイールとならざるをえない。これが,数ミリの段差であっても影響を及ぼす。エレベータの乗り降りにしても,段差を超えますねと,もれなくアナウンスをしてくれる程に。病院こそ,こういう数ミリの段差にも気を遣って欲しいものだと思う。エレベータも同様。虫垂炎で初めて分かる視点。また,エレベータの車椅子用行き先ボタンパネルの押し易さに感動。ドンピシャ(死語)。

肺活量系検査(正式な名前は不明)は,肺活量と吸う力および吐く力の測定。車椅子に乗ったままなので楽だが,お腹に力が入らない状況が辛い。その状況下でも,肺活量は平均値。吸う力および吐く力は,平均以上の良い数字が出た様子。禁煙8年が効果を出してる? 麻酔用の検査なのかなと思い,先生と話をする。全麻? 局麻? と聞かれる。そうか,全身麻酔,局所麻酔はそんな風に略すのか。よし,看護士とコンパをするような事があったら使おうと脳内メモ。

検査も無事終わり病室へ。大人しくしている分には大丈夫だが,起き上がったり,寝転がったりの速さはご老体級。それを助けてくれるのが,電動ベッド。介護ベッドとでも呼ぶのだろうか,最高。起き上がるのがすごく楽。これ,ふつうに自分用に家に欲しい。ただ,出力上げるかギアレシオ変えて,もっと速く動くようにしたい。また,有線コントローラの良い置き場がない。カールコードの曳きが強く,落とす事が数度。高さを高い状態で落としてしまうと,今の体調では拾うのが大変。大仕事。

検査から戻り暫くすると,本日の担当看護士さんが登場。おへそのゴマを取ります。あ,はいお願いします。オイルみたいなもので,おへその穴をほじほじ。あっという間に終了。

…を剃らせてください。来た,ついにこの時が。さあ,どこでも剃ってくれ。やはりこういう時の頭の中は,般若心経(高校は仏教系)だな。かなり久しぶりな読経準備を整えてると,怪訝そうな顔でのぞきこまれる。え,下腹部じゃない? 太もも? あれ。手術中は,電位差を取り除く為(うろ覚え)に,太ももに電極シールを貼る。これが,剥がす時に毛が抜けてとても痛い思いをするので,あらかじめ剃らせてくださいとの事。軽く肩透かしをくらいながら了承。電動バリカンであっという間に終了。剃るというより,刈り上げる感じか。

手術には病衣を着なければならない。その場で着替える。ズボンは,手術室への移動直前までそのままで良いようだ。これで全ての準備作業が終了。あれ,剃毛はテイモウ。テーモー。すると,最近は手術部位以外の体毛は剃らないんですよとの返答。え!? なんだって!! テイモウが無い? この冊子にも書いてあるのに? そうか,周辺は関係ないのか。ちょっと待て。じゃ,俺が昨夜振り絞ったあの勇気の意義は一体。

そんな気持ちとは裏腹に今日も良い天気。

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手術日編(その1)

注意書き

問題の冊子の一部分

手術日の朝。(誰も把握してないでしょうが,7/20(金))

病院の朝は早い。6:00起床。といっても,消灯も21:00なので,無理のない生活。朝になって分かったが,この部屋は4人部屋。他の3人の方に挨拶。なんか見た目元気そうで,何で入院してるんだこの人達という感じ。しかし,病棟の他の病室の前を通ると,病室前に千羽鶴がずらーっと並んでいる。病院のこういう雰囲気はとても苦手で,わけも分からず気分が滅入る。こんな数の千羽鶴を見たのは,10年前に広島平和記念公園に行った以来だ。同室の方々が,元気そうで良かった。6人部屋でなく,4人部屋というのも良い。また,病院特有の変な消毒薬の香りも無いのが嬉しい。快適。

うとうとしていると,7:00頃に看護士さん登場。検温,血圧,血中酸素濃度を測定。一日に何度もこれを1セットとして測定。そして7:30には,朝食が運ばれてくる。ただ,絶飲食中なので私には運ばれてこない。いいなー食事。と羨ましがっても,点滴をしているからか空腹感は相変わらず皆無。よし,この機会にダイエットするぞー。と思ったが,看護士さんの話だと,痩せる人も居れば太る人も居ます。それに,空腹感の有無も人それぞれなんですとの事。へー。

8:30になり,看護士さんと主治医二人が回診。お腹に聴診器を当て聞いたり,押したり。そこで先生が一言。レジスタンスが出てますね。なんのことだろ,北斗の拳? そうですよね,バットとリンが美男美女になった時にはほんと驚きましたよね。私,小学生でしたが,みんな自転車に黒王号て名前付けてましたよと言おうとしたが,これまた笑いを取る自信がなかったので断念。

今日の手術は,午後の2件目なので15:00頃を予定しています。オペ場(手術室の事らしい)担当看護士が,また後ほど手術に関する説明をします。と告げられ,また少しのんびり。

そうこうしていると,オペ場の看護士登場。チャキチャキ系お姉さま。全身麻酔に関してのレクチャを受ける。配布された冊子をペラペラ読みながら話を聞く。痛みが全く無く,ぐっすり寝てる間に手術が終わるという事は既知であり,私もそれぐらいしか知らなかった。入眠後は,気管へ挿管を行い人工呼吸をするというのは,少し驚きであった。喉へグイグイ管を入れられるわけか。苦しそう。入眠後なので痛みはないが,手術後に喉がヒリヒリする事があるそうな。まあしかし,お任せ。

更に,全身麻酔には他にも必要なチューブがあると説明。尿道。え? チューブ? いや,そんなの無理ですって。入りませんって。笑顔だけど,目の奥が笑っていない看護士姉さん。そうだ,きっと現代医療技術の発展の賜物である,一般人が想像もつかない,髪の毛ほどの微細チューブかなんかを使ってくれるんだよ!! で,抜かなくてもよくて,術後自然と体に吸収されるんだよ!! そんなのがあるんだよ! ちょっと嫌だけど,お任せだよ!!

妄想から無理やり引き戻され,何か好きな曲があるか尋ねられる。麻酔が効き入眠するまでの間に流してくれるらしい。手術自体にはそれほどビビってる訳ではないので,適当に落ち着くような曲を流してもらえるようお願いする。用意されている曲一覧を少し見たが,一昔前のカラオケ屋みたいな感じであった。なんでそんなに気合入ってるんだ。

それよりも,テイモウだよテイモウ。受験勉強真っ只中の時の事。友人が急性虫垂炎になった。その年齢での急性虫垂炎は珍しい。その友人,手術台か病院のベッドだかで,ではテイモウします。と言われ,なんの事か全く分からなかった。しかし,暫くして彼はその意味を知る事になる。ああ,「剃」は「てい」て読むのか,漢字は剃毛か。そうか勉強になるなあと考えながら,ジョリジョリと無茶苦茶恥ずかしかったという話。時の人を囲んで受験生大盛り上がり。ああ,俺もその立場になるなんて。

その彼のおかげで剃毛は読めるようになった。後はその時を待つばかり。

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