愛しい彼女 その3<愛しい彼女 その2からの続き>
夏が終わり,秋が来て,2回生の一年が終わろうとしていた。Eさんは,5人目の彼氏といっしょだった。Eさんにとって,京都コンピュータ学院は,とても楽しい場所だ。多くの友人といっしょに,楽しく毎日が終わる。退屈な授業もあったけれど,それもそれなりに楽しいのは,どのクラスにも,仲良しの友達がいたからかもしれない。KCGには面白くて楽しい先生も多い。KCGきってのダンサーの先生に,HIPHOPの踊り方を習ったりして,最近はさらに,学校に来るのが楽しいと感じている。KCGは,先生の面倒見が良いことでも有名だ。
KCGでは伝統的に,年上の人も,同い年も,いっしょにワイワイしている集団がいくつもある。もちろん,ひとりで浮いている人もいるから,Eさんはそういった人にも声をかけて,できるだけ積極的に友達を増やそうとしていた。
今日のC言語の授業は,DAIGOにちょっと似ている同じバンドのO君の隣席になった。実はC言語は苦手だったけれど,わからないところはO君に聞いて,今日の最初の実習プログラムも,なんとかなった。
Eさんは大阪の北部の出身で,自宅からバスとJRで通っている。通学時間の40分を有効活用するために,最近,携帯をi phoneに変えたのだった。O君もi Phoneだった。そして,授業中にそのことがわかり,二人でメールをやりとりしながら,二人とも,自分のブログのURLを交換してブックマークしていて,気がついたらその日の授業が終わっていた。
放課後,Eさんは,5人目の彼氏がカワサキZ2で迎えに来てくれるので,正門の前で待っていた。爆音を轟かして,かなり年上の彼が,オレンジ色のバイクでやってきた。京都コンピュータ学院自動車制御学科でも教材になっている有名なオートバイなのだそうだが,Eさんは,バイクの種類なんて,どうでもよかった。彼の後ろに乗せてもらって,風に吹かれるのが好きだった。でも,さすがに冬のバイクは寒い。その日は特別に寒かったこともあって,機嫌が悪くなったEさんは,些細なことで彼と口論になり,5人目の彼氏を振ってしまった。このストーリーはあまり本論とは関係が無いのだが,京都コンピュータ学院自動車制御学科のリンクも入れておきたい筆者の気持ちもわかって欲しい。
また秋になって,O君とEさんは,3回生の後半を迎えていた。その頃,二人は,クラブ活動のバンドの練習で顔を合わせる以外には,接点が無くなっていた。時々,ブックマークに入っている相手のブログを見たけれど,Eさんにとっては,エヴァの綾波レイが好きだとか書かれているO君のブログには,あまり興味がわかなかったのだ。
Eさんは,体格の大きな先輩から時々送信されてくる,飲み会のお誘いにも,本当は行きたかったけれど,大阪の北部まで帰宅しなくてはならないEさんにとって,途中で切り上げなくてはいけない飲み会の会費は,ちょっとキツかった。
Eさんは,ゲーム学科の先生に先輩たちの話を聞くのが好きだった。授業が終わると,先生から音楽の話やゲームの話,そしてそれにかかわったKCGの先輩たちの話を聞いていた。先生の学生時代の友人で,竹内まりやの追っかけ(20年ほど前の若者用語)をしていた人がいるらしい。ギターの天才で,いまでもときどき演奏しているのだとか。フリープログラマーの例の先輩は,ギターもベースもピアノもこなす多彩な人だとか,先輩たちの話を聞くのは楽しい。
そして,バンドの仲間はみんな4回生になった。KCGでも,春休みのあたりから,就職活動たけなわとなる。そして,夏までには,バンドの皆の進路が決まっていた。
Eさんは,自宅から通える大阪のゲームソフト会社を選んだ。O君は,東京のネットゲー(ネットワークゲーム)専門の会社に決まった。ボーカルのO君は,ネットワークの技術もかなり向上し,国家試験にも合格していた。ベースのモト彼は,地元名古屋の自動車関係の会社に決まっていた。ドラムは福岡で一番大きなソフト会社だった。リードは,京都情報大学院大学へ進学することになっていた。バンドの仲間たちは,それぞれの進路に分散していくことになっていった。
彼らは,よく遊んでいたけれど,それなりにコンピュータの知識は身についていた。伝統あるKCGでは,クラスの仲間の中に,必ず,スーパープログラマーみたいな優秀な人がいる。また,真面目にすべてをマスターしてしまう,すこし年上の元社会人のネットワークスペシャリストもいる。そういった仲間に囲まれて学生時代を送ると,日常の雑談の中で技術関係の話が飛び交うから,結構自然に勉強してしまうのだ。KCGのクラスではビリでも,社会に出たらエキスパートという話は,昔からよくあることだそうだ。
KCGには,すごい量の求人が来るから,選ぶというより,くじを引くくらいの感覚で,数ページの候補の求人票を見て,会社概要,勤務地や待遇を比べる。先輩がいる会社を選ぶことも多い。ともあれ,皆,進路が決まり,あとは卒業を残すだけだった。
少年たちは,青年になり,大人になっていく道のりにあった。
ランランリランショウビダバ♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
( -_-)♪~♪♪ … (愛しい彼女 終章へ続く)