学費と生活費を挿絵で稼ぐ学生

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)
【KCGの過去の学生さんたちの様々な逸話を綴っています。氏名は匿名か伏字にしてあります。】

face man

KCGには,学費を自分で稼いでいる学生も多い。

多数派はプログラミングのバイト。

週末の肉体労働で,というのもいる。

運動不足解消なのだそうだ。

ずいぶん前,挿絵画家だという学生がいた。

彼は,滋賀県の出身だった。

子供のときから絵が上手だったらしい。

両親や家のことは何も話さなかった。

「雑誌の挿絵のバイトで授業料と生活費を稼いでる」

へえー。20歳ソコソコで自立していて,偉い。

それで,どんな絵?と聞いたら

え・・・・?

ゲイの関係の雑誌の仕事!

「ホンマは恥ずかしいから言いたない」

最近はテレビにおネエが出ているけれど,

その頃は,そういうことは言いたくないのが普通だった。

活発な学生で,ボス猿みたいな感じ。

面倒見が良くて,他の学生に好かれていた。

わからないことがあったら,みんな彼に相談に行ってた。

ある日,,,

「先生,俺の仕事,コレ。」

イラストを見せてくれた。

雑誌の挿絵で,ポーズまで指定して注文が来るのだそうだ。

すごい上手だった。

「絵だけで食べていくのは,不安やんか。」

うんうん・・・。

「やっぱし,プログラミングの仕事が確かやと思う。」

そうそう・・・。

「そやから,コンピュータの技術を身に付けるねん。」

彼みたいなデキル人が

将来が不安だというので,ちょっとビックリした。

今もスゴイのに,将来をもっとマジに考えている。

学校の成績だけじゃ,人は計れない。

彼のような才能もある。

その後,彼は漫画家としてデビューしたらしい。

ペンネームは知らない。

絵は一度しか見せてもらっていないから,よく覚えていない。

だから,どの漫画家なのかはわからなかった。

何年か後,彼を良く知っている先生に聞いた。

アダルト分野で,結構売れている漫画家になっているらしい。

漫画が売れなくなったら,IT分野で働くつもりだと。

ランランリランショウビダバ♪,ラリ~リラ~ラリ~♪
ランランリランショウビダバ♪,ルンルンララーラ~♪
                                 ( -o-)y-~~~

<目次&リンク>
★一般論
KCGに入学してきた人々,卒業していった人々。=KCGの学生さんの様々なパターン
大卒・大学中退の入学者=昔から,KCGは大卒・中退の入学者が多いという話
ゲームプログラマー =ゲームプログラマーと業界の話をすこし
卒業生同士の結婚 =卒業生同士で結婚に至る場合

★個別事例
大学中退で編入学=山梨から大学中退で編入してきた学生さん
万緑草中紅一点 =和歌山出身で,誰からも好かれた実直な女子学生
お嬢様短大卒のSさん =四国の開業医のお嬢様短大卒のお嬢様。
デジタルネイティブ=今では普通になった,ネットで生きるフリーのプログラマーのはしり
学費と生活費を挿絵で稼ぐ学生  雑誌の挿絵を画いて学費と生活費を賄い,IT分野で生きていくことを願っていた学生のこと
20才で大人になった不良上がり=暴走族やヤンキーが当たり前だった80年代初頭の話
想い出のあのコ=高度専門士が無かった頃の話。大卒かKCG卒かが問題だったときのこと
洛北エンジニアリング =KCG伝統の洛北校,別名萩原学校。KCGの最高峰でメカトロニクスに夢中の学生さん
ああ女神様っ!=ベルダンディ-みたいな美人の先生に恋した純情な少年の話
禁断の師弟愛? =先生?と女子学生の恋愛と結婚
K君のRPG=母子家庭の長男が,RPGを作成し,大手ゲームメーカーに転職するまで
妹の遺骨=在学中に妹を亡くした情報処理科の寮生。広島の大手ソフト会社No.1,のSEの過去。

愛しい彼女4部作
 一年から卒業するまで同じ軽音楽部だった彼女をずっと愛し続け,卒業の前にやっとゲットして,卒業後,結婚に至った話。
愛しい彼女
愛しい彼女②
愛しい彼女③
愛しい彼女 終章
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お嬢様短大卒のSさん

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)<目次&リンク>は最下段に掲載しています。
【KCGの過去の学生さんたちの様々な逸話を綴っています。氏名は匿名・伏字にしてあります。】
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お嬢様短大卒のSさん

筆者がまだ20代の頃で,ずいぶん昔の話で恐縮だが,その当時,関西圏で誰もが知っている,某お嬢様短大を卒業して,京都コンピュータ学院に入学してきた女子学生がいた。

立てば芍薬,座れば牡丹,歩く姿は百合の花,そのまんま。

お父様は,四国の某県で有名な開業医(大病院のオーナー院長先生)だという。ハイ。

ある授業で夏休みの合宿があり,Sさんも参加したのだが,むさくるしい男どもに混じって,ともかく,皆でワイワイと勉強していた。

問題は,食事のときで,,,,飢えた男どもが,丼飯をむさぼり喰らうのに混じって,どうなることかと案じていたら,楚々として,清楚に上品に,お箸でちょっとご飯をつまみ,おちょぼ口にお運びなさる。そのお姿には,こちらも,飯を喰らうのを忘れて,見惚れていたもんだ。

大問題は風呂の時間で,,,,汗臭い男どもが風呂で子供のように,はしゃぎまわるのを尻目に,あの壁の向こうで,どのようになされていたのか・・・・は,もちろん,見るわけにはいかなかった。

さらに大問題は,就寝時にどうなるのかということであって,これは大変心配した。もし,悪ガキどもと何かあったりしたら,学校の責任だ,自分の責任だ,大変だ。。。

しかし,女子学生が合宿に参加すると,女子教員も必ず同行するから,女子の部屋というのが別に用意されており,女性の先生が同室で,安全にお休みになられたのだった。スマンが,その先生が,誰だったかは,全く覚えていない。

ともかく,お育ちの良いお嬢様をお預かりして,万一のことがあってはならないと,まだ若かった筆者は,かなり緊張していたのだろう。

OAブームの頃は,女子学生が多かったけれど,そういったお嬢様短大の卒業生も少ないながらいたようだ。

最近のKCGでも,毎年,それなりにイマドキのお嬢様な女子学生がいるけれど,80年代にまだ少数ながら生息していた,古き良き日本の「深窓の令嬢」のような女子学生なんて,KCGに限らず,京都中,どこに行っても,見ることができない。おそらく,完全に絶滅したのだろう。

そもそも,お嬢様短大というもの自体が,僅かの名門を除いて,なくなってしまった。
かつて野暮な男子学生の憧れだった女子大も女子短大も,多くが共学になってしまい,少年のはかないほのかな夢は,消えてしまったのである。

つまらん時代になったもんだ。

ランランリランショウビダバ♪,ラリ~リラ~ラリ~♪
ランランリランショウビダバ♪,ルンルンララーラ~♪
 
                                 ( -o-)y-~~~

ちなみに,そのお嬢様学生は,今,IT関連企業の社長(もちろん卒業生)の奥様である。

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★一般論
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大卒・大学中退の入学者=昔から,KCGは大卒・中退の入学者が多いという話
ゲームプログラマー =ゲームプログラマーと業界の話をすこし
卒業生同士の結婚 =卒業生同士で結婚に至る場合

★個別事例
大学中退で編入学=山梨から大学中退で編入してきた学生さん
万緑草中紅一点 =和歌山出身で,誰からも好かれた実直な女子学生
お嬢様短大卒のSさん =四国の開業医のお嬢様短大卒のお嬢様。
デジタルネイティブ=今では普通になった,ネットで生きるフリーのプログラマーのはしり
学費と生活費を挿絵で稼ぐ学生  雑誌の挿絵を画いて学費と生活費を賄い,IT分野で生きていくことを願っていた学生のこと
20才で大人になった不良上がり=暴走族やヤンキーが当たり前だった80年代初頭の話
想い出のあのコ=高度専門士が無かった頃の話。大卒かKCG卒かが問題だったときのこと
洛北エンジニアリング =KCG伝統の洛北校,別名萩原学校。KCGの最高峰でメカトロニクスに夢中の学生さん
ああ女神様っ!=ベルダンディ-みたいな美人の先生に恋した純情な少年の話
禁断の師弟愛? =先生?と女子学生の恋愛と結婚
K君のRPG=母子家庭の長男が,RPGを作成し,大手ゲームメーカーに転職するまで
妹の遺骨=在学中に妹を亡くした情報処理科の寮生。広島の大手ソフト会社No.1,のSEの過去。

愛しい彼女4部作
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大学中退で編入学

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KCG フラッグ

山梨県から来た編入学生の話。

「高校時代は,とりたてて興味のあることもなく,たいしたこともせず,首都圏にある私立文系の大学に進学した」というU君。

そして,東京近郊に移り住んだのだが,1学期が始まって授業に出て,周りの人たちと話していたら,その私立文系大学は,就職がかなり難しいということがわかってきた。私立文系大学では,卒業生の就職率が20%程度というところも珍しくないらしい。

その当時,日本は不況だった。U君のお父さんも,大手メーカーをリストラされて,小さな会社の事務職に転職していた。不況で生活が不安定になるという現実は,よく理解していた。

U君は,これではいけないと思って,夏休みに実家でご両親に相談して,大学を中退して,違う道を模索した。U君によると,「底辺大学を出て,そのラベルを貼られると一生終わりだ」と思ったのだそうだ。

日本は学歴社会ではあるが,「ある大学を出ると,そういうレベルだということが,社会的に決まってしまう」,ということを言いたかったのだと思う。

ある学校を卒業したら,その最終学歴になるのは当然で,あるラベルが貼られて「一生終わり」とも思えないが,U君は,ともかく,その大学にいたときは,そう感じたのだそうだ。

U君のお父さんがリストラされたのは,技術が時代についていけなかったことが大きな理由であるらしい。ITの知識のあった同僚は,まだ前の大手企業に残っているという。お父さんは,ITはこれからの時代に絶対必要なスキルだと言っていた。

それで,U君は,ITを勉強してその道で生きていくことについて,出身高校の先生に相談にいった。高校の先生は,「コンピュータなら,京都の老舗の京都コンピュータ学院だ」と教えてくれたという。

それでU君は,秋からKCGに編入することにした。すでに別の大学に行っていたから,編入で入れるのである。毎年,なんらかの理由で,一学期である大学を中退し,後期入学で秋からKCGに編入する学生さんが結構いる。

一度外を知ると,シビアに将来を考えるようになるのだろう,そういった学生さんたちは,人一倍,真面目に勉強する。

U君は,その後,在学中に国家試験に合格し,大手のソフト会社に就職していった。ソフト業界で,「京都コンピュータ学院卒」というのは,かなり上位のレベルの「ラベル」であることは事実である。

彼は,そんなコンピュータ業界で,出身校が話題になると,自分のブランドとしての,校章を思い出すのだそうだ。

ランランリランショウビダバ♪,ラリ~リラ~ラリ~♪
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★一般論
KCGに入学してきた人々,卒業していった人々。=KCGの学生さんの様々なパターン
大卒・大学中退の入学者=昔から,KCGは大卒・中退の入学者が多いという話
ゲームプログラマー =ゲームプログラマーと業界の話をすこし
卒業生同士の結婚 =卒業生同士で結婚に至る場合

★個別事例
大学中退で編入学=山梨から大学中退で編入してきた学生さん
万緑草中紅一点 =和歌山出身で,誰からも好かれた実直な女子学生
お嬢様短大卒のSさん =四国の開業医のお嬢様短大卒のお嬢様。
デジタルネイティブ=今では普通になった,ネットで生きるフリーのプログラマーのはしり
学費と生活費を挿絵で稼ぐ学生  雑誌の挿絵を画いて学費と生活費を賄い,IT分野で生きていくことを願っていた学生のこと
20才で大人になった不良上がり=暴走族やヤンキーが当たり前だった80年代初頭の話
想い出のあのコ=高度専門士が無かった頃の話。大卒かKCG卒かが問題だったときのこと
洛北エンジニアリング =KCG伝統の洛北校,別名萩原学校。KCGの最高峰でメカトロニクスに夢中の学生さん
ああ女神様っ!=ベルダンディ-みたいな美人の先生に恋した純情な少年の話
禁断の師弟愛? =先生?と女子学生の恋愛と結婚
K君のRPG=母子家庭の長男が,RPGを作成し,大手ゲームメーカーに転職するまで
妹の遺骨=在学中に妹を亡くした情報処理科の寮生。広島の大手ソフト会社No.1,のSEの過去。

愛しい彼女4部作
 一年から卒業するまで同じ軽音楽部だった彼女をずっと愛し続け,卒業の前にやっとゲットして,卒業後,結婚に至った話。
愛しい彼女
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大卒・大学中退の入学者

人生色々,卒業生たち

大卒・大学中退の入学者

京都コンピュータ学院は昔から大学卒・大学中退で入学してくる人が多い。大卒入学者と大学中退入学者の傾向を書いてみる。

大卒で入学=
①大学は出たけれど,「就職がないから」,「希望の職種に就けなかったから」というのが筆頭で多い。
②大学を出て,好きなことをしたいから,KCGへというのが次位。

大学中退で入学=
①大学に行ったけれど,面白くなくて辞めてしまった,あるいは引きこもってしまった,というのが最も多い。
②その大学を卒業したところで,将来が見えている,だからさっさと辞めた,というのが次に多い。
・・・中退してからの年数はマチマチで,1年未満から10年以上まで,色々である。

どちらの場合も,KCGに入学すると,まるで水を得た魚の如く,元気になる人が大半である。
もちろん,KCGへ入学しても,やっぱり続かない人もいるが,かなり少数派である。
新しい学生生活というのは,スタートで失敗すると後を引くことが多いから,「二度目は失敗しないでおこう」という意思が強く働くのだろう。ほとんどの場合は成功しているようである。
そういった入学者は,それなりに大人だから,無駄をせずに勉強している。

KCGは,「老若男女が皆,仲良くする」という雰囲気があって,ここは他の大学・学校などと大きく違うところだと思う。

年齢の差異が大きくても,上下関係というものがあまり無い。

もちろん,年長者に対しては皆,それなりに敬意を払っているが,さして遠慮しているわけでもないし,年長だからといって,威張っている例もあまり見ない。

皆,IT・コンピュータの最先端を学ぶという立場では,全くの平等なのである。

以下,思いつくまま,大卒・大学中退の入学者の例について,書き連ねてみる。

・近畿圏の私立文系の卒業生・中退生は,あまりにも前例が多く,毎年一定の割合で存在するのだが,皆,一様に,将来に対しては敏感である。私立文系卒の将来と,IT・コンピュータを勉強した上での将来を天秤にかけると,答えは明らかだと考えているパターンが多い。

・そこそこ文章読解力があると,アキュームなどの京都コンピュータ学院に関する各種文献をよく読んで,他の専門学校と比較した上で,KCGを選んでいる。当然だろう。

・中堅クラスの京都府下の私立大学のことだが,情報工学科であっても,コンピュータに触れる授業が週に2回しかないという。
それで,あまり技術力は向上しないと思って,中退してKCGに入学したという。これも京都府下に限らず,良くある例である。一般の私立大学では,コンピュータの設備は,対学生数比では少ない。

親や進路部の先生に言われたので,「とりあえず大学へ」,それも,「自分の成績で入れるところ」や,「家から通えるところ」に入った,というパターンは,途中で辞めることが多いのかもしれない。
「とりあえず大学」というのは,どう考えても,あまりよろしくないのだろう。
そういう感覚で大学に行き,中退した場合,そのために,かえって「IT・コンピュータでやっていこう」という決意が強く生じるからか,成功している例が多いように思う。

・逆に,しっかりと考えて大学進学や,それに限らず別の道に行ったのだが,きちんと就職した上で,やっぱりITだと思いなおす例もよくあるパターンである。

・元看護婦(看護士),某看護大学を卒業後,2年間,医療現場で働いて,KCGに入学。
医療現場で,CTスキャンなどの医療機器を見ていると,「これからはコンピュータだ」と思いなおしたのだそうだ。
結婚して子供が手を離れた後に,また仕事に復帰することを考えると,IT関係のほうがベターだと考えたとのこと。大人の女性の場合は,やはり将来を良く考えている。

・自動車制御学科ができてから,同学科に入学してくる大卒や大学中退の入学者は,年齢が20代前半から後半が多い。卒業後,自動車関係の世界で,ITのエキスパートとして生きる決意があるからか,皆,かなり大人な意識を持っているし,シビアに将来設計をしている。

・大学中退で,聞いてみると高校も中退で,という,どこに行っても長続きしないタイプもいるが,そういうタイプに対しては,先生たちがかなりケアするので,なんとか卒業にまで至るのが大半である。失敗例は少ないと思う。

概して,KCGは,大卒・大学中退の多い学校であり,そのことで肩身が狭いということは無いところである。最近は特に感じるのだが,ワイワイ騒いでいても,真面目に将来を設計している若者が多いと思う。

高卒のフレッシュマンも,そういったちょっと大人の学生と一緒になって,良い影響を受けていると思う。

さて,ダンドゥビダバシュビダバ~♪であるが,大卒・大学中退者のうち,誰のことを書こうか迷ってしまったので,今日はこのへんで歌にしよう。

ランランリランショウビダバ♪,ラリ~リラ~ラリ~♪
ランランリランショウビダバ♪,ルンルンララーラ~♪
 
                                 ( -o-)y-~~~

京都コンピュータ学院
京都情報大学院大学
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卒業生同士の結婚 =卒業生同士で結婚に至る場合

★個別事例
大学中退で編入学=山梨から大学中退で編入してきた学生さん
万緑草中紅一点 =和歌山出身で,誰からも好かれた実直な女子学生
お嬢様短大卒のSさん =四国の開業医のお嬢様短大卒のお嬢様。
デジタルネイティブ=今では普通になった,ネットで生きるフリーのプログラマーのはしり
20才で大人になった不良上がり=暴走族やヤンキーが当たり前だった80年代初頭の話
想い出のあのコ=高度専門士が無かった頃の話。大卒かKCG卒かが問題だったときのこと
洛北エンジニアリング =KCG伝統の洛北校,別名萩原学校。KCGの最高峰でメカトロニクスに夢中の学生さん
ああ女神様っ!=ベルダンディ-みたいな美人の先生に恋した純情な少年の話
禁断の師弟愛? =先生?と女子学生の恋愛と結婚
K君のRPG=母子家庭の長男が,RPGを作成し,大手ゲームメーカーに転職するまで
妹の遺骨=在学中に妹を亡くした情報処理科の寮生。広島の大手ソフト会社No.1,のSEの過去。

愛しい彼女4部作
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万緑草中紅一点

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rose

万緑草中紅一点

数年前に,洛北情報工学科を卒業した女子学生。

和歌山の海辺の漁師町で次女として生まれたM子さんは,どこといってとりえもなく,誰がみても地味な,普通の子だった。

外観は,程よくぽっちゃりで,身長は真ん中くらい。

学校では目立たなくて,普通に真面目。

クラスメートとは,学校では普通に話すけれど,とりたてて深く付き合うわけでもない。

とにかく,何をとっても突出した特長がなくて,イヤミも一切ない。

高望みもしないし,好き嫌いもせず,自分が選択できる中でベストを選ぶ,とにかく実直な子だった。

小学校から高校まで,先生にも信頼され,友人にも信頼され,親戚にも信頼されていたそうだ。

そんなM子さんが,京都コンピュータ学院洛北校,情報工学科4年課程を進学先に選んだ理由は,ハードウェアもソフトウェアも,総合的に勉強できて,就職が良いから,ということだった。

その年度の情報工学科は,女子学生はM子さんたった一人。紅一点だった。

落ち着いていて,決して悪い意味ではなく女っぽくもなかったから,話しやすいという定評で,男子学生の中に自然に溶け込んでいた。

誰もが,彼女を信頼し,誰もが,クラスメートとして仲良くし,普通に友人づきあいをしていた。

彼女を見ていると,普通であることが,実は非常に難しいことであり,また,努力を要することであることがわかる。

誰とでも,同じ距離で付き合ったり,どの科目でも,そこそこの成績を取るなどということは,そうそうできるものではないだろう。

つまり,「なにもかもが普通である」ことは,実は,「かなり,普通ではない」のである。その意味で,彼女は,一種の天才だったのだと思う。

彼女が京都コンピュータ学院に在学した4年間で,たった一度だけ,「普通でない」普通なできごとがあった。

彼女のことだから,就職の心配などないだろうと,先生も友達も,皆がそう考えていた。事実,何も問題はなかった。そして,世界的に知られている京都のある企業のコンピュータ部門から,彼女に内定が届いたのである。

彼女くらいの成績だったら,その企業に内定してもおかしくはない。したがって,教職員としては,彼女くらいの成績で,人物だと,その企業に入るのは「普通」のことだった。

ところが,いつも落ち着いている彼女の反応は,いつもの彼女ではなかった。
「先生!内定もらった,もらった!」と,あちこちで大騒ぎしていて,そのはしゃぎっぷりも,内定を取れたことも,彼女としては,「普通」ではなかったのである。

とにかく,彼女は,知っている先生のほとんど全員に内定を伝えては,手を取り合って,抱き合って,飛び跳ねて,踊って,他の「普通」の女子学生の「普通」な反応のように,大喜びだった。

・・・なんであれ,「普通の女子学生」が,紅一点でも溶け込めるというのは,彼女の人徳もあるだろうけれど,他の男子学生たちの懐の深さもあるのだろうと思う。
工学系の学科としては良い雰囲気である方なのだろう。

洛北エンジニアリング,別名萩原学校,情報工学科の話である。
もっと多くの女子学生に,入学してもらいたいものだ。
最近はちょっと男臭すぎる。

ランランリランショウビダバ♪,ラリ~リラ~ラリ~♪
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大卒・大学中退の入学者=昔から,KCGは大卒・中退の入学者が多いという話
ゲームプログラマー =ゲームプログラマーと業界の話をすこし
卒業生同士の結婚 =卒業生同士で結婚に至る場合

★個別事例
大学中退で編入学=山梨から大学中退で編入してきた学生さん
万緑草中紅一点 =和歌山出身で,誰からも好かれた実直な女子学生
お嬢様短大卒のSさん =四国の開業医のお嬢様短大卒のお嬢様。
デジタルネイティブ=今では普通になった,ネットで生きるフリーのプログラマーのはしり
20才で大人になった不良上がり=暴走族やヤンキーが当たり前だった80年代初頭の話
想い出のあのコ=高度専門士が無かった頃の話。大卒かKCG卒かが問題だったときのこと
洛北エンジニアリング =KCG伝統の洛北校,別名萩原学校。KCGの最高峰でメカトロニクスに夢中の学生さん
ああ女神様っ!=ベルダンディ-みたいな美人の先生に恋した純情な少年の話
禁断の師弟愛? =先生?と女子学生の恋愛と結婚
K君のRPG=母子家庭の長男が,RPGを作成し,大手ゲームメーカーに転職するまで
妹の遺骨=在学中に妹を亡くした情報処理科の寮生。広島の大手ソフト会社No.1,のSEの過去。

愛しい彼女4部作
 一年から卒業するまで同じ軽音楽部だった彼女をずっと愛し続け,卒業の前にやっとゲットして,卒業後,結婚に至った話。
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妹の遺骨

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)
【KCGの過去の学生さんたちの様々な逸話を綴っています。氏名は匿名・伏字にしてあります。】

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大卒・大学中退の入学者=昔から,KCGは大卒・中退の入学者が多いという話
ゲームプログラマー =ゲームプログラマーと業界の話をすこし
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大学中退で編入学=山梨から大学中退で編入してきた学生さん
万緑草中紅一点 =和歌山出身で,誰からも好かれた実直な女子学生
お嬢様短大卒のSさん =四国の開業医のお嬢様短大卒のお嬢様。
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20才で大人になった不良上がり=暴走族やヤンキーが当たり前だった80年代初頭の話
想い出のあのコ=高度専門士が無かった頃の話。大卒かKCG卒かが問題だったときのこと
洛北エンジニアリング =KCG伝統の洛北校,別名萩原学校。KCGの最高峰でメカトロニクスに夢中の学生さん
ああ女神様っ!=ベルダンディ-みたいな美人の先生に恋した純情な少年の話
禁断の師弟愛? =先生?と女子学生の恋愛と結婚
K君のRPG=母子家庭の長男が,RPGを作成し,大手ゲームメーカーに転職するまで
妹の遺骨=在学中に妹を亡くした情報処理科の寮生。広島の大手ソフト会社No.1,のSEの過去。

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野菊

           妹の遺骨

四国のある県で,I君が中学一年生だったときに,一家の大黒柱だった父が病気で亡くなった。ほどなく父の残した事業は行き詰まり,人手に渡ってしまった。

母が農協の事務の仕事を得たので,母とI君と妹の家族3人は,県庁所在地の街から,県境のアパートに引っ越した。
幼稚園だった妹は,訳もわからず,引っ越しではしゃいでいたけれど,いきついた先が小さなアパートで,狭いことには不満だったようだ。しかし,アパートの裏を流れる小川や近辺の野原の中で,それなりに楽しそうに,新しい生活になじんでいった。

高校を卒業するときになって,I君は母と卒業後の進路を相談した。そのまま就職しても良かったけれど,地方の高校卒業で就ける職などしれている。

妹を学校にやるためにも,稼ぎの良い仕事につきたかった。それで,I君は,努力すれば結果が返ってくるというコンピュータプログラマーの仕事を選んだのだ。

コンピュータ関係に進むのなら, 伝統のある京都コンピュータ学院だと,高校の進路部の先生が教えてくれた。

問題は学費だった。母は,大丈夫だと言ってくれたけれど,I君は,家計が大変であることくらいよくわかっている。二年間だけでいいから,京都コンピュータ学院に行かせてくれと母にお願いした。高校の進路部の先生が言うことには、「KCGには,昔から有名な寮のシステムがある。寮に入れば夜間の補習もあって,集団生活でコミュニケーション力も養われるから,就職も良い」とのことだった。

寮費と学費を合わせると結構な額になるのだけれど,京都コンピュータ学院の奨学金試験にも合格した。I君は,絶対に2年間でプログラマーとして就職し,母と妹の生活を援助しようと決意した。I君が出願したのは,京都コンピュータ学院情報処理科である。KCGの保守本流,プログラマー育成の看板学科で,二年間でプログラミングをみっちり勉強できるという。

京都の学校に進学することを告げたら,妹は,「お兄ちゃん,がんばってね」と,自分の右手を握りしめて小さな拳固を作って示し,微笑んだ。

高校を卒業して,I君は上京した。京都の北区にある学生寮に着いたら,進入生の半分くらいがすでに入寮していた。残り半分は4月になれば入ってくるということだった。

夕食時には,互いに自己紹介をして,夜遅くまで食堂で話しあった。全国あちこちからやってきた人たちの話を聞くと,ほとんどが,親の世代がなんらかの形で,KCGを知っている人たちだった。親が卒業生だという人が3人もいたのは驚いた。

九州のある県でソフト会社を経営する父親のところに,KCGの卒業生が何人もいるという人。

同じ四国の隣の県で,親がKCGの卒業生で,県庁の情報部門を担当している公務員だという人。

とにかく,親や親戚が卒業生だという人,両親のいずれかがKCGの卒業生と仕事の関係があるという人ばかりだった。

I君は,父の職種がコンピュータとはあまり関係がなかったからか,彼の親戚関係にKCGを知っている人はいなかった。

コンピュータの学校で,しかも寮に入ると,色々なことがあって,楽しい。コンピュータに詳しい人は当然多いし,アニメやコミックに詳しい人もいる。青年男子が数十名一緒に暮らすと,実はたいへんに面白い状況になる。

I君は,まずは,教科書代や昼食代を稼ぐためのアルバイトを決めなくてはならなかった。寮監の先輩教職員はプログラミングのバイトを紹介してくれたけれど,まだ技術も未熟だし,スポーツもしたかったから,体力勝負で短時間で稼ぎの良い仕事を探した。徒歩10分ほどのところにタイル工事の会社があり,そこの建築現場のタイル運びのバイトは,昔からKCGの寮生の縄張りなのだという。翌日はその会社に行ってみることにした。

工事の日に,朝早くに会社に来たら,現場まで連れて行ってくれる。毎週土曜日だけバイトしたら,一日8000円ほどになる。
毎月の昼食代と教科書代には十分とはいえないけれど,まあ納得できる労力と報酬だった。
夏休みにまとめて働いたら,教科書代くらいは稼げるだろうと考えた。

入学式が終わり,授業が始まった。最初はよくわかったのだが,数日復習をサボると,すぐにわからなくなった。
わからなくなると,寮の仲間に夕食時に教えてもらった。
一年の秋には初級の国家試験に合格して,就職までには,より高度な国家試験に合格することを目標にした。

夏休みは,実家には帰らず,タイル運びは土曜日だけにして,他の日は会社から紹介してもらった倉庫管理のバイトをすることにした。倉庫管理は夜間の見張り程度の仕事だから,眠いこと以外は楽だった。
守衛室で教科書を読んで,練習問題を解いていたら,夜が明ける。
そうして夏休みが終わって,授業が始まった次の週に,実家の母から電話があった。

妹が入院したという。
まだよくわからないが,どうも不治の病である可能性が高いという。遺伝的な原因が考えられるとのことだった。
I君は,上京するときに手を振っていた妹の姿を思い出しながら,愕然とした。
すぐに荷物をまとめて,夜行電車で実家へと向かった。

県立病院の一室で,妹はベッドの上に寝て点滴を受けていたが,I君の姿を見ると,うれしそうに微笑んだ。
しばらく話すと,割と元気そうではあったけれど,顔はどこか不安そうだった。
なんでも食べてよいとのことだったから,I君は京都から買っていった八橋を渡した。
妹はうれしそうに,ひとつの半分だけを食べた。

その週のうちに主治医から説明を聞いて,それがほとんど治らない病気であることと,入院がかなり長引くことを知った。
そして,妹の荷物や身の回りのものを病院に運んだりして,その週末までは実家に滞在した。

母に促されて,京都に戻ることになったのだが,I君は妹がかわいそうで仕方がなかった。
京都に勉強しに戻るのだと,ベッドの上の妹に告げたら,妹は「お兄ちゃん,がんばってね」とかすれた声で言いながら,また小さな手を握り締めて,微笑むのだった。
その小さな妹の手を自分の両手で包んで,I君は「行ってくるね」と答えた。
帰りの電車の中で,I君は涙を流した。

京都に帰って寮にもどると,仲間は相変わらず馬鹿騒ぎをしていた。
いっしょに騒ぐ気にもならず,自室に入り,休んでいた分を取り戻すために教科書を開いたけれど,病室の光景と妹の顔が頭から離れなかった。

しかし,寮にいて,友人とともに暮らし学校に通っていると,日常に流されて,それなりに気が紛れていく。寮の友人たちも,ずいぶん気を遣ってくれた。
母によると,妹の病気は小康状態が続いているとのことだった。
国家試験が終わって,休みに入ったら一週間ほど例のバイトをして年越しの小遣いを稼ぎ,そして年末に帰郷した。

妹は,薬の副作用で,髪の毛がほとんど無くなっていた。
「どんどん抜けてしまうの」,と悲しそうに微笑みながら,ベッドの上で,薄手の帽子をかぶっていた。
しかし,薬が効いて,調子は良いとのことだった。

母は疲れが溜まっているようだったから,しばらく付き添いを代わって母を休ませることにした。
妹は,もともとおしゃべりだったから,ベッドに寝ていても,よく話をしたし,I君の話を聞きたがった。

I君は,京都での生活や,寮の楽しい仲間の話をした。
話し出すと,それぞれの寮生の話は尽きなかった。
高校時代には見たこともなかったような,コンピュータのエキスパートや,アニメのオタクだけれど気さくな人とか,寮の仲間のことについて,ひとりひとり順番に,小学生の妹にわかるように説明したのだった。
妹は楽しそうに聞いていた。
そして大晦日は妹と二人で,病院で過ごした。

冬休みが終わる頃には,妹はかなり元気になっていた。

秋の国家試験には合格していたから,I君は京都に戻り,次のレベルの試験を目指して勉強した。
寮の仲間は良きライバルだった。お互いに教えあいながら,楽しく勉強を続けた。

3学期が終わって,帰郷して妹と母の世話に明け暮れていると,すぐに4月になった。

時間が過ぎていくのがとても速いように感じた。

第2学年が始まるので,I君はまた京都に戻ることになり,病室の妹に別れを告げた。

妹はまた,「お兄ちゃん,がんばってね」と小さく右手を握って示し,微笑んでいた。

この頃になると,妹がいつかは完治するような気がしてきていた。

少なくとも,今の状態が永遠に続くような気がして,I君はすこし落ち着いていた。

春から梅雨になる頃,I君は就職活動の終盤だった。
広島の大手のソフト会社から内定をもらった日,妹の病気が突然悪化したと母から電話があった。
I君はまた夜行で郷里へと急いだ。

妹はベッドの上で,やせ細り,小さいのにもっと小さくなっていた。

I君が来たことを告げると,すこし微笑んで「お兄ちゃん」とかすかに声を出した。

I君と母が,妹の声を聞いたのは,それが最期だった。

小さな妹は,4日後,ベッドの上で息を引き取った。

泣き叫ぶ母の横で,I君も泣いた。

涙がほろほろと流れた。
涙は尽きないばかりか,さらに溢れるばかりだった。

兄は慟哭しながら,幼いときからずっと可愛がってきた妹を抱きしめ
母は慟哭しながら,娘の腕をつかんで離さなかった

京都から帰ってきたのに

京都で勉強して,広島の会社に内定をもらったのは,妹を学校にやるためなのに

妹が良い学校に進学して,豊かな人生を送れるようにと,努力を続けていたのに

父をほとんど知らずに育った幼い妹を,父の代わりに,世界一幸せにしてやろうと,ずっとずっと思い続けてきたのに

そのために,プログラマーになろうとしていたのに

あれもこれも,予定が狂ったような気がした。
妹が病に伏して,父を追ってしまうなんて。

なにもかもが,終わってしまったような気がした。
母もただ泣き続けるだけだった。

母と兄に抱きしめられて,妹は冷たくなっていった。

親戚が集まって,野辺送りが終わり,初七日が済んで,小さなアパートの部屋にしつらえた小さな仏壇に,妹の写真が立ててある。

I君は,どうしたらよいのかわからずにいた。

母も,呆然としたまま,親子はあまり話さずに,数日が過ぎていった。

四十九日が過ぎて,埋葬が済んだ後,母は,I君に学校へ戻るように促した。学校を卒業しなかったら,妹が悲しむから,と言われて,I君はそうしようかと思ったのだった。

I君は,妹の遺骨のかけらを小さなロケットに入れて,それを首にかけて京都に戻った。

砂の河に流されるような気分でI君は残りの学業を終えて,卒業して広島の会社の社宅に引っ越した。

優秀で真面目なI君は,会社でも認められて,誰からも頼りにされるようになっていった。

母は故郷でひとり年老いていったから,盆暮れの休みには帰郷して母と過ごし,いつもは広島で働いた。

20歳で就職し,その後,10年以上の間,I君は広島で一人で暮らした。

自分自身が生きていく目的に確信が持てないまま,ただ年齢を重ねていくだけだった。

長い間のひとり暮らしを終えて,結婚するとき,I君はやっと,新しい時代へと歩き始める決意をしたのだった。

その決意のために,I君は妹の墓参りをした。

I君は,首にかけていた古いロケットを,墓石の中の妹の骨壷の上に置いた。

それから長い年月が経ったけれど,右手を小さく握りしめて「がんばってね」という妹の姿は,I君の心から一時も消えたことがない。

         —————
I君は,結婚してから老いた母を呼び寄せ,子供が2人できて,広島で暮らしている。
その広島の大手ソフト会社で,ナンバーワンのシステムエンジニアである。80人ほどいる部下のうち,約3分の1はKCGの後輩なのだそうだ。

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K君のRPG

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)
【KCGの過去の学生さんたちの様々な逸話を綴っています。氏名は匿名か伏字にしてあります。】

<目次&リンク>
KCGに入学してきた人々,卒業していった人々。=KCGの様々な学生さんのパターン分類
デジタルネイティブ=今では普通になった,ネットで生きるフリーのプログラマーのはしり
20才で大人になった不良上がり=暴走族やヤンキーが当たり前だった80年代初頭の話
ゲームプログラマー =ゲームプログラマーの一般的なパターン
想い出のあのコ=高度専門士が無かった頃の話。大卒かKCG卒かが問題だったときのこと
卒業生同士の結婚 =卒業生同士で結婚に至る場合
洛北エンジニアリング =KCG伝統の洛北校,別名萩原学校。KCGの最高峰でメカトロニクス
ああ女神様っ!=ベルダンディみたいな美人の先生に恋した話
禁断の師弟愛? =先生?と女子学生の恋愛と結婚
K君のRPG=母子家庭の長男が,RPGを作成し,大手ゲームメーカーに転職するまで

妹の遺骨=在学中に妹を亡くした情報処理科の寮生。広島の大手ソフト会社No.1,のSE

愛しい彼女4部作  
一年から卒業するまで同じ軽音楽部だった彼女をずっと愛し続け,卒業の前にやっとゲットして,卒業後,結婚に至った話
愛しい彼女
愛しい彼女②
愛しい彼女③
愛しい彼女 終章
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実習室 KCG

      K君のRPG

高校卒業後,KCGのゲーム関係の学科に進学したK君は,大阪の郊外のある町で生まれ育った。両親は子供の頃離婚し,父がどこで何をしているのか,知らない。
子供の頃の父の記憶は残っているけれど,二つ違いの弟は,全く覚えていないという。

今どき,両親が離婚したなんて話は珍しくもないし,父がいないことは気にしてないが,弟に対しては,兄として男の生き方みたいなところは示すべきだと考えている。

母は,隣の街の機械部品工場で働いていて,貧しいながらも息子二人を育ててきた。
K君は,家族3人で暮らすアパートから電車で通学している。
結構時間がかかるのだけど,下宿するのは経済的に無理だ。土曜日と,たまには日曜日もだが,すこしキツイ肉体労働のバイトをしている。
一日行くと8000円になるバイトで,一ヶ月に6~7回は行くようにしている。
KCGの授業料は奨学金だけど,参考書やソフトを買うときには,そのバイトの稼ぎを充てている。
二歳下の弟も高校の学費は奨学金で,新聞配達のバイトをしている。

K君は小学生の頃からゲームが好きで,帰宅が遅い母を待つ間,毎日,弟と一緒にゲームをしていた。
残業で遅くなる母にかわって,米を炊いて味噌汁くらいは作っておくのが,小学生の頃からの兄弟の日課だった。
いくらゲームに夢中になっていても,夕食の準備は必ず,兄弟で交替でするようにしていた。

K君は,京都コンピュータ学院に入ってからプログラミングを学びはじめたのだが,一年生の終わりには,自分でゲームを作れるようになっていた。
六角形が複数くっついた図形を空いているスペースにあてはめていくというゲームプログラムを作成したら,クラスでも好評だった。
友達に方法を教えてもらって,ネット上で販売したら,値段が安いという理由もあって,良く売れるようになった。

最初の2ヶ月は2~3万円の売り上げだったが,その後は毎月,少なくとも15万円くらいは入って来るようになった。
K君はお母さんにブランド物の服を,弟にはノートパソコンを買ってあげた。
その後は,毎月5万円を自分の小遣いに当てて,残りは貯金するようにした。

預金通帳の残高を弟に見せながら,K君は,家族三人がこれから生活していくためには,いくら預金があれば安心なのか,弟に自分の考えを話した。学生であろうと,家族の経済基盤を作っていくことが可能であることを,弟に示したのだった。

KCGでは,昔からどの学年にも,ゲームを作成したりゲーム会社の下請けのバイトをして,人並以上に稼ぎ出している学生がいる。
「ゲームを作って3ヶ月で500万円稼いだ」,とか,「下請けのバイトで毎月50万円もらっている」,といった話は,珍しいことではない。
K君もそういった先輩に教えてもらって,「売れるゲーム」の作り方を考えたのだった。

KCGの先輩ネットワークがあるからこそ,そのようなことが可能なのだ。伝統と実績を誇る,日本最初のコンピュータの学校ならではのメリットである。

2回生になるとK君は,学費を自分で支払えるようになっていた。高校を卒業した弟も,KCGのアート系の学科に入学し,アニメやグラフィックを勉強している。

子供の頃から絵が上手かった弟の色彩センスは,K君の開発したゲームをバージョンアップするのに役立った。
K君のゲームは,アニメーションが綺麗になって,また売れ行きが伸びていたのだ。

その後,K君は,RPG(ロールプレイングゲーム)を作成しはじめた。

高校時代の世界史と日本史の教科書を読み返して,モチーフを探した。
絵はすべて弟が担当し,音楽は弟のクラスメートに作曲してもらうことになった。
時代のモチーフは,日本の戦国時代を選んだ。群雄割拠する昔の話である。KCGで知った歴代の先輩の逸話は,まさに群雄であった。
しかし,RPGの製作はさすがに難しいし,かなりな労力がいる。前のゲームのように,数ヶ月で仕上げるというわけにはいかなかった。

3回生になって,就職活動が始まった。K君は,ゲーム関係の仕事に就きたかった。

学内企業説明会にも,もちろんほとんど出席した。そして他にも,任天堂やカプコン系列のゲームソフト会社を探したのだった。実はこれは,かなり数が多い。

任天堂のコンピュータゲーム事業を始めたのは,KCGの先輩たちである。
その関係で,KCGの先輩が経営に関わるような,任天堂系列の下請け会社が京阪神にはたくさんある。
元カプコンでゲーム会社を立ち上げたという先輩も多いから,そういった下請け会社が関西圏には結構あるのだ。
そして,そういった会社には,わずか3~5人程度というような小規模のところもたくさんある。

多くのゲームプログラマーは,下請け会社から仕事をはじめ,腕を磨きながら,より上位の会社へとステップアップしていく。

K君は,そのルートを選ぶことにして,学校の就職データベースで会社選びの情報収集を始めた。これには弟を手伝わせて,弟の就職活動の予行演習もさせたのだった。兄は,いつも弟思いだった。

プライベートでRPGを製作し始めたK君だったが,就職活動は,まさにRPGだった。

業界で力を持っている小規模ソフトハウスを探すのだが,これと目星をつけたところに,まずは電話で面接を申し込むのが第一関門である。その関門は,「KCGの学生だ」というと簡単に入れたが,言わないと電話を切られたりした。まるで城壁の門を開けるための呪文のようだと,K君は思った。

専属の事務の人さえいないような,小規模の会社では,電話応対をしたり,面接を担当するのは,プログラマーであり,いずれも業界の猛者たちである。群雄割拠する,ゲームソフト業界であった。面接までこぎつけたら,自分で作成した六角形のゲームを実演するのが第二関門である。

学校の課題やテストは,それなりに厳しかったけれど,授業に出席しているとほとんどは理解できていた。そして,クラスに数名いるエキスパートたちと教えあったりしながら,自分のRPGの作成は進んでいた。

しかし,シナリオを就職の面接試験で見せたら,担当の人に「甘い」「つまらん」と一蹴されるだけだった。
シナリオは,友人に意見を聞いて,何度も書き換えながら,それでも,決まらなかった。

就職しなくても食べていけるような家の子は,最初から大手の本社採用を狙って,受からないことを他人のせいにして文句を言っていたが,K君は自分の能力をわきまえて,下積みから始めていくことに決めていた。

だから,学校の就職データベースで,できるだけ多くの企業の情報収集をするように努めた。弟も横で手伝ってくれた。
カプコンや任天堂,セガなど,大手で働く先輩を辿って,関係の深い下請け会社を紹介してもらったりもした。
もちろん,大手本社も受けようと思ったけれど,ゲームプログラミングの世界には,そういった下請けの零細企業に,その会社にしかない高度な技術というものがある。

そういった特殊な技術にも興味があったから,大手は将来にとっておいて,あまり知られていなくても,その筋では有名であるような,小規模で技術力のある会社を選びたかったのだ。そういった業界の裏事情は,KCGの先生に聞いた。一般の大学や他の専門学校とは圧倒的に違うKCGには,すごい先生が揃っているから,たいていの情報はゲットできる。

夏休みになってしまった。弟は,学校が休みになって,友達と自転車で北海道旅行に行ってしまった。一ヶ月以上は北海道を走り回るのだという。K君は,すこしうらやましかったけれど,就職先を決めることで頭が一杯だった。
夕食で対面する母の顔を見ていると,年齢を重ねて苦労してきたことがわかる。K君は,早く母に恩返しをしたかった。K君は,奨学金に加えて,母が叔父に借金をしていることも知っていた。

次の日,任天堂の初期の立ち上げに関わったKCGの先輩が友人と始めた会社から,内定の電話が入った。技術力には定評がある会社で,本命だったから,最高に嬉しかった。

RPGで最初のステージが高得点で終わったような気分だった。

夜,帰宅した母に内定したことを伝えたら,母はとても喜んでくれて,近くのコンビニで小さなケーキを買ってきてくれた。
北海道を自転車で走り回っている弟にも電話して,内定したことを伝えたら,弟は旅の資金が尽きて,帯広の漁協でバイトしているとのことだった。

自分で製作しているRPGは,シナリオがある程度決まってきて,完成に近づいていった。弟の担当するグラフィックもほぼ完成していた。秋になって,卒業作品発表会の説明会があった。K君は,それにエントリーするために,自分のRPGの作成に夢中になっていった。

1月になって提出期限が来たとき,彼のRPGは,かなり出来の良いものになっていた。

1月,卒業研究発表会があり,彼の作品は表彰候補にノミネートされた。候補作品は,KCG AWARDSで発表することとなる。企業からのゲストを含む,選考委員の先生たちに評価されて,順位が決まるのだった。

卒業試験も終わり,KCG AWARDSの日が来た。母は仕事を休んで見に来てくれた。弟も母の横に座っている。自分のプレゼンが終わってから,自分も母の横に座った。

K君の作品は,最優秀賞ではなかったけれど,次位の優秀賞だった。母も弟もとても喜んでくれた。弟はグラフィックで参加したから,弟といっしょに壇上に上がり,校長先生から賞状を手渡された。兄弟が力を合わせて作ったことを,校長先生は褒めてくれた。

兄弟で力を合わせて,RPGのセカンドステージを高得点で終わったような気分だった。

KCGの3年間を,ゲームソフトの作成に費やして,他の友達に比べると遊びの経験には乏しいけれど,プログラミングの技術は,かなり高度になったと思う。

卒業式が済んで,就職先企業の仕事が始まった。

小規模会社なので,入社式といっても,社長と社員全員で16名が揃って,近くの居酒屋で宴会をするという程度だった。
研修と言っても,先輩社員の横で,プログラミングの手法を見せてもらう程度だった。
友達が就職した大手ソフト会社の話とはずいぶん違ったけれど,K君は,すべてがワクワクドキドキの連続だった。

それから6年,K君は修行させてくれた最初の会社に何度もお礼を言って退職し,東京の,ある大手ゲーム会社に転職した。
母は定年を間近に控えて,退職後の人生の計画を練っている。
弟は,大阪のコンテンツ系の会社で働いているが,まもなく結婚するらしい。
結婚という人生のひとつのステージは,弟に先を越されそうだけれど,それはそれでいい。
弟が幸せになってくれることは,K君にとっても,とても嬉しいことだ。

六本木にある大きな高層ビルにある会社の中で,K君の座るデスクが決まった。

周囲の先輩社員に一通り挨拶をしたら,KCGの先輩が同じ部署に3人もいるということがわかった。

自分のデスクについて,横にある窓から外を見ると,眼下に広がる東京は,自分にとっての戦場の風景に思えた。

K君の人生というRPGの,次のステージが始まっていた。

K君の心の中にはKCGの校旗がはためいていた。

KCG フラッグ

ランランリランショウビダバ♪,ラリ~リラ~ラリ~♪
ランランリランショウビダバ♪,ルンルンララーラ~♪
                                ( -_-)~♪ ~♪

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愛しい彼女 終章

愛しい彼女 その4(終章)<愛しい彼女 その3からの続き>

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)

KCG

軽音楽部では,秋からは卒業コンサートの練習が始まる。正月が明けてから最初の練習で,ボーカルのO君はいつものように,時々Eさんを見つめながら歌っていた。最近,6人目の彼氏と別れたEさんは,ひとりがせいせいしていいやと思いながら,なにか軽やかな気分でキーボードを弾いていた。バンドの仲間は,練習のときしか集まらないけれど,それでも仲の良い友人たちだった。お互い,あまり深くまでは詮索しないけれど,いつも互いに思いやるというような,ちょっと大人の,あたたかい関係になっていた。

後期試験の最終日,放課後の卒業コンサートに向けた練習が終わってから,卒業試験の打ち上げで,バンド全員で駅前のカラオケに行った。あれだけ演奏しておいて,まだ歌いに行くところが,元気な軽音部だ。

O君も数曲を歌ったが,カラオケのマイクを握って歌うときも,愛しているとか, I love youといったフレーズのときだけは,Eさんを見つめながら歌った。それは,O君の最後のテーゼ((These,Thesis) 命題)だった。

そのとき,Eさんは,O君の視線に気がついた。そして,いつもキーボードを弾きながら,楽譜の向こうに見えるO君の立ち姿が,今,目前にいるO君と重なった。Eさんはその瞬間,すべてがわかったような気がした。しかし,Eさんは,即座に頭に浮かんだ想像を否定した。それは,4年間に渡って連綿として続く,ある仮定に対するアンチ・テーゼ(反命題)だった。

また違う曲で,O君の番となり,彼がまたマイクを握った。その曲名は,イメージが固着してしまうから,ここには書かないでおこう。ともかく,その曲はアップテンポで「愛してる」と繰り返す,あの,誰もが知っている歌だった。そのフレーズ毎に,O君は,Eさんをやさしく見つめるのだった。

Eさんは,O君に見つめられるたびに,なんだかドキドキしてきた。そして,よくわからないのだけど,なにか,身近でとても大切なことに,長い間気づかずにいたような,そんな気がしたのだった。

バンドの練習で,時々目が合ったのは,そのまなざしにメッセージが込められていたこと。O君がブログに書いていた,綾波レイが好きだというのは,実は自分を好きだという意味だったこと。記憶の断片のひとつひとつが,今,Eさんの頭の中でリンクしていった。

Eさんは,急いで曲目リストを懸命に探した。そして,その一曲を選んで,そのコード番号を入力したのだった。

Eさんが選んだ歌の名前も,ここには書かない。あの,誰もが知っている古い歌謡曲で,「長い間愛してくれてありがとう」という意味の歌である。それは,二人にとってのジンテーゼ(総合命題,あるいは解答)だった。テーゼ,アンチ・テーゼ,ジンテーゼは,二人が一緒に選択履修した論理学の授業で習った哲学用語である。

その夜O君は,最初のほうに歌ったエヴァの主題歌のテーゼから始まって,大学院の聴講授業で学んだとおり,戦略的に曲を選んでいたのだった。

その日の夜から,やっと二人の時間が始まった。

KCGに入学してから,7人目の彼氏になるのだけれど,一番最初に知り合ったO君が,実は一番大切な人だったのだ。

KCGに入学してから,最初から,ずっと好きだったEさん,長い間,同じバンドだけど遠いところから見ていただけだったEさんが,やっと自分を向いてくれたのだった。

クラブの卒業コンサートは,はじめての二人が主役のコンサートだった。ボーカルとピアノの掛け合いは,誰もが引き込まれるような,息のあった演奏だった。バンドの演奏は,例の先輩からも褒められた。二人の歌は,コンサート会場の皆の心に,少しは残ったのだと思う。

卒業式の日,二人は服やネクタイやアクセサリーの配色を合わせて参列した。卒業式に来ていた父兄の中に,O君のお父さんがいた。O君のお父さんが,あの先生の学生時代の友人であったことに,Eさんは驚いた。あの先輩(ドラムス)と,O君のお父さん(ベース)と,先生(リード)と,O君(ボーカル)とEさん(キーボード)とで,バンドが揃うこともわかったのだった。またひとつのKCGネットワークがあるのだった。通信はお手のものの卒業生たちであるから,彼らのネットワーキングがすぐに動き始めたのは,当然のことである。

そのあとの卒業パーティでは,二人は大勢の卒業生たちの騒ぎの中心にいた。KCGでの青春4年間に別れを告げる日の夜遅くに,二人は将来を誓い合った。

翌日,二日酔いの頭をかかえて,O君は新幹線に乗って東京に発った。内定先の企業に,辞退届けを出しに行ったのだ。採用担当のKCGの15年ほど上の大先輩に理由を全部話して,ただひたすら頭を下げ続けた。そして数日後,O君は,別の先輩の紹介で,大阪市内でKCGの30年ほど歳上の社長が経営する,ネットワーク関連の有名企業に内定した。

二人は,卒業して一年も経たないうちに,一緒に暮らし始め,二年目に結婚した。結婚式には,KCG時代の友人たちが多く集った。披露宴は,学生時代のバンド仲間が次々に演奏するライブパーティだった。新郎新婦と新郎のお父さんと恩師と先輩との5人の二世代バンドも,懐かしいあの一曲を演奏したのだった。

45年の歴史と伝統のある,京都コンピュータ学院に,数多ある恋物語のひとつである。

ランランリランショウビダバ♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
                              ( -_-)♪~♪♪ …

愛しい彼女
愛しい彼女②
愛しい彼女③
愛しい彼女 終章

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愛しい彼女③

愛しい彼女 その3<愛しい彼女 その2からの続き>

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)

KCG4

夏が終わり,秋が来て,2回生の一年が終わろうとしていた。Eさんは,5人目の彼氏といっしょだった。Eさんにとって,京都コンピュータ学院は,とても楽しい場所だ。多くの友人といっしょに,楽しく毎日が終わる。退屈な授業もあったけれど,それもそれなりに楽しいのは,どのクラスにも,仲良しの友達がいたからかもしれない。KCGには面白くて楽しい先生も多い。KCGきってのダンサーの先生に,HIPHOPの踊り方を習ったりして,最近はさらに,学校に来るのが楽しいと感じている。KCGは,先生の面倒見が良いことでも有名だ。
KCGでは伝統的に,年上の人も,同い年も,いっしょにワイワイしている集団がいくつもある。もちろん,ひとりで浮いている人もいるから,Eさんはそういった人にも声をかけて,できるだけ積極的に友達を増やそうとしていた。

今日のC言語の授業は,DAIGOにちょっと似ている同じバンドのO君の隣席になった。実はC言語は苦手だったけれど,わからないところはO君に聞いて,今日の最初の実習プログラムも,なんとかなった。
Eさんは大阪の北部の出身で,自宅からバスとJRで通っている。通学時間の40分を有効活用するために,最近,携帯をi phoneに変えたのだった。O君もi Phoneだった。そして,授業中にそのことがわかり,二人でメールをやりとりしながら,二人とも,自分のブログのURLを交換してブックマークしていて,気がついたらその日の授業が終わっていた。

放課後,Eさんは,5人目の彼氏がカワサキZ2で迎えに来てくれるので,正門の前で待っていた。爆音を轟かして,かなり年上の彼が,オレンジ色のバイクでやってきた。京都コンピュータ学院自動車制御学科でも教材になっている有名なオートバイなのだそうだが,Eさんは,バイクの種類なんて,どうでもよかった。彼の後ろに乗せてもらって,風に吹かれるのが好きだった。でも,さすがに冬のバイクは寒い。その日は特別に寒かったこともあって,機嫌が悪くなったEさんは,些細なことで彼と口論になり,5人目の彼氏を振ってしまった。このストーリーはあまり本論とは関係が無いのだが,京都コンピュータ学院自動車制御学科のリンクも入れておきたい筆者の気持ちもわかって欲しい。

また秋になって,O君とEさんは,3回生の後半を迎えていた。その頃,二人は,クラブ活動のバンドの練習で顔を合わせる以外には,接点が無くなっていた。時々,ブックマークに入っている相手のブログを見たけれど,Eさんにとっては,エヴァの綾波レイが好きだとか書かれているO君のブログには,あまり興味がわかなかったのだ。

Eさんは,体格の大きな先輩から時々送信されてくる,飲み会のお誘いにも,本当は行きたかったけれど,大阪の北部まで帰宅しなくてはならないEさんにとって,途中で切り上げなくてはいけない飲み会の会費は,ちょっとキツかった。

Eさんは,ゲーム学科の先生に先輩たちの話を聞くのが好きだった。授業が終わると,先生から音楽の話やゲームの話,そしてそれにかかわったKCGの先輩たちの話を聞いていた。先生の学生時代の友人で,竹内まりやの追っかけ(20年ほど前の若者用語)をしていた人がいるらしい。ギターの天才で,いまでもときどき演奏しているのだとか。フリープログラマーの例の先輩は,ギターもベースもピアノもこなす多彩な人だとか,先輩たちの話を聞くのは楽しい。

そして,バンドの仲間はみんな4回生になった。KCGでも,春休みのあたりから,就職活動たけなわとなる。そして,夏までには,バンドの皆の進路が決まっていた。

Eさんは,自宅から通える大阪のゲームソフト会社を選んだ。O君は,東京のネットゲー(ネットワークゲーム)専門の会社に決まった。ボーカルのO君は,ネットワークの技術もかなり向上し,国家試験にも合格していた。ベースのモト彼は,地元名古屋の自動車関係の会社に決まっていた。ドラムは福岡で一番大きなソフト会社だった。リードは,京都情報大学院大学へ進学することになっていた。バンドの仲間たちは,それぞれの進路に分散していくことになっていった。

彼らは,よく遊んでいたけれど,それなりにコンピュータの知識は身についていた。伝統あるKCGでは,クラスの仲間の中に,必ず,スーパープログラマーみたいな優秀な人がいる。また,真面目にすべてをマスターしてしまう,すこし年上の元社会人のネットワークスペシャリストもいる。そういった仲間に囲まれて学生時代を送ると,日常の雑談の中で技術関係の話が飛び交うから,結構自然に勉強してしまうのだ。KCGのクラスではビリでも,社会に出たらエキスパートという話は,昔からよくあることだそうだ。

KCGには,すごい量の求人が来るから,選ぶというより,くじを引くくらいの感覚で,数ページの候補の求人票を見て,会社概要,勤務地や待遇を比べる。先輩がいる会社を選ぶことも多い。ともあれ,皆,進路が決まり,あとは卒業を残すだけだった。

少年たちは,青年になり,大人になっていく道のりにあった。

ランランリランショウビダバ♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
                              ( -_-)♪~♪♪ … (愛しい彼女 終章へ続く)

愛しい彼女
愛しい彼女②
愛しい彼女③
愛しい彼女 終章

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愛しい彼女②

愛しい彼女 その2<愛しい彼女からの続き>

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)

KCG2

山陰の地方都市出身のO君が,京都コンピュータ学院への入学をきめたのは,彼のお父さんがKCG出身で,現役の先生の友達だったからである。お父さんも,音楽好きで,その先生も学生時代からバンドをしておられたそうだ。お父さんとその先生は,今でも仲良くて,ついこの間も,二人で神戸のコンサートに行ってきたと言っていた。山陰の彼の故郷からお父さんはJRで神戸に行き,先生と待ち合わせて,甲斐バンドのコンサートに行ってきたという。歳甲斐も無く,総立ちで全曲を熱唱してきたと,お父さんは威張っていた。O君は,竹内まりやだったら自分も行きたいな,と思ったのだけれど,後日,先生が授業中に歌ってくれた甲斐バンドの一曲は,彼の頭の中のRAM(Random Access Memory=書き換え可能な記憶装置)にストア(記憶)された。

春が来て,五月の連休が過ぎて,梅雨の暑い日のことだった。O君の好きなEさんは,その日,不知火舞のような,Tシャツだか着物だかわからないようなブラウスのようなシャツを着てきていた。その頃,Eさんは4人目の彼氏とつき合っていたのだが,そいつは同じバンドのベースだった。彼女の素敵さに磨きがかかっていることについては,バンドの誰もが同意していた。その日,Eさんは,キーボードの新しいテクニックを披露してくれた。両手を高く掲げてキーを叩くその演奏方法は,まるで大輪風車落としのようだった。このストーリーは,本編にはあまり関係がないのだが,複数の異性に磨かれて,女性がよりセクシーになっていった,ということだ。

その日の夕方,軽音楽部の大先輩が部室に来た。フリーでプログラマーをしているその先輩は,大きな顔で笑いながら,O君を夕食に誘ってくれて,「最近は不景気なんだが」と言いながらも,天下一品の大盛りをおごってくれた。
先輩によると,KCGの先輩後輩のネットワークは大きくて,特に軽音楽部のネットワークは,KCGのクラブの中でも最大級なんだとのことであった。そして,昔のKCGには「少林寺拳法部」というクラブがあって,そこが強かったけれど,その先輩が在学していた2000年前後は,少林寺拳法部が消滅していたので,自分は剣道にしたのだ,と訳の変わらないことを言っていた。ラーメンをすするのに忙しかったから,O君は先輩の話の半分も聞いていなかった。剣道と小林とお寺と何がどのようにアルゴリズムが構成されて軽音楽部の先輩になるのか,イマイチ意味不明だったが,天下一品の大盛りにんにく入りのパワーはUFOを完全に凌いで絶大であった。
だから,O君は,その優しくて面倒見の良い先輩サーバーのルーターになろうと決めたのだった。(先輩の下で,多くの後輩の友人関係を取り持っていこうと思った。)先輩はヤマハのミニトレという小さなバイクに乗って帰っていった。

そうすると,①お父さん,②先生,③先輩,④自分,⑤愛しの彼女,は,「軽音」というラインでネットワークなのだということに気がついた。このネットワーキングを,どのように維持し,拡張していくのかのヒントについては,ネットワーク概論の先生に聞きに行くことにした。
それから,どの曲の,どのフレーズで,彼女を見つめるのか,という戦略を立案するには,大学院の授業を聴講したほうがよいのかな,とも考えたのだった。
授業で習う専門用語や専門知識は,現実の学生生活にあてはめると,結構面白かった。

次の日,放課後の教室であれこれ考えながら,昨日からハマっているネットワーク概論の教科書を読んでいたら,O君のRAMにストアされていた一曲は,授業で熱唱してくれた先生の甲斐も無く,上書き保存で消えてしまっていた。
あの曲はどんなのだったかなと思いながら,窓の外を見ると,教室の窓からは,黄色い新幹線が走り去るのが見えた。
O君は一瞬,自分の目を疑った。そして,南に面した教室の窓枠の,どこをクリックすれば,色の置換(Photoshop)の画像処理がされるのか探そうとしたが,それは本当に黄色かったのだった。

ランランリランショウビダバ♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
                             ( -_-)♪~♪♪ … (愛しい彼女③へ続く)

愛しい彼女
愛しい彼女②
愛しい彼女③
愛しい彼女 終章

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