愛しい彼女②

愛しい彼女 その2<愛しい彼女からの続き>

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)

KCG2

山陰の地方都市出身のO君が,京都コンピュータ学院への入学をきめたのは,彼のお父さんがKCG出身で,現役の先生の友達だったからである。お父さんも,音楽好きで,その先生も学生時代からバンドをしておられたそうだ。お父さんとその先生は,今でも仲良くて,ついこの間も,二人で神戸のコンサートに行ってきたと言っていた。山陰の彼の故郷からお父さんはJRで神戸に行き,先生と待ち合わせて,甲斐バンドのコンサートに行ってきたという。歳甲斐も無く,総立ちで全曲を熱唱してきたと,お父さんは威張っていた。O君は,竹内まりやだったら自分も行きたいな,と思ったのだけれど,後日,先生が授業中に歌ってくれた甲斐バンドの一曲は,彼の頭の中のRAM(Random Access Memory=書き換え可能な記憶装置)にストア(記憶)された。

春が来て,五月の連休が過ぎて,梅雨の暑い日のことだった。O君の好きなEさんは,その日,不知火舞のような,Tシャツだか着物だかわからないようなブラウスのようなシャツを着てきていた。その頃,Eさんは4人目の彼氏とつき合っていたのだが,そいつは同じバンドのベースだった。彼女の素敵さに磨きがかかっていることについては,バンドの誰もが同意していた。その日,Eさんは,キーボードの新しいテクニックを披露してくれた。両手を高く掲げてキーを叩くその演奏方法は,まるで大輪風車落としのようだった。このストーリーは,本編にはあまり関係がないのだが,複数の異性に磨かれて,女性がよりセクシーになっていった,ということだ。

その日の夕方,軽音楽部の大先輩が部室に来た。フリーでプログラマーをしているその先輩は,大きな顔で笑いながら,O君を夕食に誘ってくれて,「最近は不景気なんだが」と言いながらも,天下一品の大盛りをおごってくれた。
先輩によると,KCGの先輩後輩のネットワークは大きくて,特に軽音楽部のネットワークは,KCGのクラブの中でも最大級なんだとのことであった。そして,昔のKCGには「少林寺拳法部」というクラブがあって,そこが強かったけれど,その先輩が在学していた2000年前後は,少林寺拳法部が消滅していたので,自分は剣道にしたのだ,と訳の変わらないことを言っていた。ラーメンをすするのに忙しかったから,O君は先輩の話の半分も聞いていなかった。剣道と小林とお寺と何がどのようにアルゴリズムが構成されて軽音楽部の先輩になるのか,イマイチ意味不明だったが,天下一品の大盛りにんにく入りのパワーはUFOを完全に凌いで絶大であった。
だから,O君は,その優しくて面倒見の良い先輩サーバーのルーターになろうと決めたのだった。(先輩の下で,多くの後輩の友人関係を取り持っていこうと思った。)先輩はヤマハのミニトレという小さなバイクに乗って帰っていった。

そうすると,①お父さん,②先生,③先輩,④自分,⑤愛しの彼女,は,「軽音」というラインでネットワークなのだということに気がついた。このネットワーキングを,どのように維持し,拡張していくのかのヒントについては,ネットワーク概論の先生に聞きに行くことにした。
それから,どの曲の,どのフレーズで,彼女を見つめるのか,という戦略を立案するには,大学院の授業を聴講したほうがよいのかな,とも考えたのだった。
授業で習う専門用語や専門知識は,現実の学生生活にあてはめると,結構面白かった。

次の日,放課後の教室であれこれ考えながら,昨日からハマっているネットワーク概論の教科書を読んでいたら,O君のRAMにストアされていた一曲は,授業で熱唱してくれた先生の甲斐も無く,上書き保存で消えてしまっていた。
あの曲はどんなのだったかなと思いながら,窓の外を見ると,教室の窓からは,黄色い新幹線が走り去るのが見えた。
O君は一瞬,自分の目を疑った。そして,南に面した教室の窓枠の,どこをクリックすれば,色の置換(Photoshop)の画像処理がされるのか探そうとしたが,それは本当に黄色かったのだった。

ランランリランショウビダバ♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
                             ( -_-)♪~♪♪ … (愛しい彼女③へ続く)

愛しい彼女
愛しい彼女②
愛しい彼女③
愛しい彼女 終章

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