KCGブログ小説・「おとといの春」 4

晴子も普通に国立大学に行こうと思っていた。

周りもみんなそうだったし,特にこれといってやりたいこともなかった。

人に流されるのは好きではないたちだったが,

こればかりはしかたがないことと思ったし,

高校生ではっきり将来像を決めている人だって,

口ではいろいろ言っていても将来どうなるかは

わからないじゃないかと思っていた。

周りも進路について考え始めて,クラス全体がそわそわし始めた頃だった。

1冊の白い分厚い冊子を偶然見つけた。

それが晴子の心をひきつけ,大きな決断をさせることになるなんて

夢にも思わなかった。

(つづく)

「セイサク君開発物語」

「NAIS特別講演会」

「クルマ・バイク好き集まれ!」

京都コンピュータ学院 & 京都情報大学院大学

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KCGブログ小説・「おとといの春」 3

晴子は高校3年生,この4月からは京都にある

コンピュータの専門学校に通う予定だ。

高校は,地元で一番の進学校に通っていた。

成績はいつもトップクラスだったので,例に漏れず

晴子も国立大学を目指すものと誰もが思っていた。

陸上部に入っていて,県大会ではいつも1位か2位だったし,

近畿大会でも必ず決勝には残っていた。

頭がよくてスポーツ万能,そのうえかわいかったから

男子にはよくもてた。

ラブレターもたくさんもらった。

けれど,サバサバした性格がわざわいしたのか,

それともそんな風に装っていたのか,

興味の対象はもっぱら陸上で,仲の良い男子の友達はいたが,

ボーイフレンドはいなかった。

勉強は,そんなに頑張らなくてもそこそこ良い成績が取れた。

こんなかんじだったから,「専門学校に行く」と言ったときは

みんなが驚き,反対した。

(つづく)

「セイサク君開発物語」

「NAIS特別講演会」

「クルマ・バイク好き集まれ!」

京都コンピュータ学院 & 京都情報大学院大学

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KCGブログ小説・「おとといの春」 2

少し残念に思いながら,私は少し古くなった目覚まし時計を止めた。

使い始めて,もう6年になる。

中学校に上がったときに,大好きなおばあちゃんに買ってもらった

思い出の時計。

買ってもらったばかりの頃は,意味もなくアラームをかけては

ベルを鳴らしてお母さんによく怒られた。

おばあちゃんには電話でベルの音を聞いてもらった。

おばあちゃんはうれしそうに笑ってくれた。

「晴子ーっ,起きてるの~?」

いつもと同じおかあさんの声がする。

「はい,はい,今行きますよー」

つい最近までまともな返事などする気も起きなかったが,

ようやく今までと同じように家族としゃべれるようになったところだ。

(つづく)

「セイサク君開発物語」

「NAIS特別講演会」

「クルマ・バイク好き集まれ!」

京都コンピュータ学院 & 京都情報大学院大学

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KCGブログ小説・「おとといの春」 1

ある日の朝,目が覚めると外は一面の雪だった。

山から吹き込む風が,寝起きの顔を打ち,

一瞬にして夢から現実へと戻してくれた。

隣の家の犬も,寒そうに犬小屋にこもっている。

いつもと変わらない朝を迎えたようだが,

いつもと違う朝だった。

朝の空気を胸いっぱい吸い込み,

これからの夢に思いをはせて,

思いっきり伸びをしていると,

その思いを元に戻すかのように

目覚まし時計がけたたましく鳴った。

「ジリリリリリリー」

今日は寒かったせいで,いつもより早く目が覚めたのだった。

(つづく)

「セイサク君開発物語」

「NAIS特別講演会」

「クルマ・バイク好き集まれ!」

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