木曜日,珍しく夕方から頭痛がして,いつもより早めに帰った。
私を待っていたのは,1本の訃報だった。
22年前,彼は障がいを持って生まれた。
難産で,産科医が彼の頭を無理に引っ張ったため,脳にダメージを受けたのである。
子供の頃から,何度も入院したり,体調が悪くなったりしながらも,彼は両親やまわりの人の愛情をたっぷり受けて育った。
お通夜の前,彼の父に亡くなった時の状況を聞いた。
最近,胃が痛かったのか,体が急にかたまり,その後,嘔吐していたという。
片言しか話せないので,どう痛いのかわからないまま,点滴で回復していた。
その発作の周期がどんどん近くなり,その日も発作は起きた。
救急車で病院に搬送される途中,彼の心臓は突然止まった。
電気ショックを与えながら,病院に着いたものの,医師が言った言葉は「延命処置をしますか?」だった。
両親は,自然に任せることを選択した。
これ以上,彼を苦しませたくなかったからだ。
「もう少し早く救急車を呼んでいたら,助かったかもしれない。それが悔やまれて…」と言って,彼の父は泣き崩れた。
「彼よりも早く死ぬわけにいかない。私たち(両親)が彼よりも早く逝ってしまったときのために,少しでも自立できるようにと教えてきたけど,こんなのことになるならもっと自由にさせておけばよかった…」と父の後悔は止まらなかった。
私も,子供同然にかわいがっていた猫が突然具合が悪くなった時,仕事で病院に連れて行けなかったことを,長い間,後悔し自分を責め続けていた。
だから,両親の後悔する気持ちは痛いほどよくわかった。
一時も目が放せないくらい手がかかった子だったからこそ,両親の悲しみは深かった。
普段,とても明るい方たちが泣き崩れる姿を見るのは,本当に辛かった。
両親の悲しみが伝わってきて,10年分くらいは泣いた。
彼は,この両親の子に生まれてきて,幸せだったと思う。
そして今彼は,不自由だった体から解放されて,自由に飛び回っているのだろう。
安らかにお眠りください。
合掌
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