愛しい彼女 終章

愛しい彼女 その4(終章)<愛しい彼女 その3からの続き>

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)

KCG

軽音楽部では,秋からは卒業コンサートの練習が始まる。正月が明けてから最初の練習で,ボーカルのO君はいつものように,時々Eさんを見つめながら歌っていた。最近,6人目の彼氏と別れたEさんは,ひとりがせいせいしていいやと思いながら,なにか軽やかな気分でキーボードを弾いていた。バンドの仲間は,練習のときしか集まらないけれど,それでも仲の良い友人たちだった。お互い,あまり深くまでは詮索しないけれど,いつも互いに思いやるというような,ちょっと大人の,あたたかい関係になっていた。

後期試験の最終日,放課後の卒業コンサートに向けた練習が終わってから,卒業試験の打ち上げで,バンド全員で駅前のカラオケに行った。あれだけ演奏しておいて,まだ歌いに行くところが,元気な軽音部だ。

O君も数曲を歌ったが,カラオケのマイクを握って歌うときも,愛しているとか, I love youといったフレーズのときだけは,Eさんを見つめながら歌った。それは,O君の最後のテーゼ((These,Thesis) 命題)だった。

そのとき,Eさんは,O君の視線に気がついた。そして,いつもキーボードを弾きながら,楽譜の向こうに見えるO君の立ち姿が,今,目前にいるO君と重なった。Eさんはその瞬間,すべてがわかったような気がした。しかし,Eさんは,即座に頭に浮かんだ想像を否定した。それは,4年間に渡って連綿として続く,ある仮定に対するアンチ・テーゼ(反命題)だった。

また違う曲で,O君の番となり,彼がまたマイクを握った。その曲名は,イメージが固着してしまうから,ここには書かないでおこう。ともかく,その曲はアップテンポで「愛してる」と繰り返す,あの,誰もが知っている歌だった。そのフレーズ毎に,O君は,Eさんをやさしく見つめるのだった。

Eさんは,O君に見つめられるたびに,なんだかドキドキしてきた。そして,よくわからないのだけど,なにか,身近でとても大切なことに,長い間気づかずにいたような,そんな気がしたのだった。

バンドの練習で,時々目が合ったのは,そのまなざしにメッセージが込められていたこと。O君がブログに書いていた,綾波レイが好きだというのは,実は自分を好きだという意味だったこと。記憶の断片のひとつひとつが,今,Eさんの頭の中でリンクしていった。

Eさんは,急いで曲目リストを懸命に探した。そして,その一曲を選んで,そのコード番号を入力したのだった。

Eさんが選んだ歌の名前も,ここには書かない。あの,誰もが知っている古い歌謡曲で,「長い間愛してくれてありがとう」という意味の歌である。それは,二人にとってのジンテーゼ(総合命題,あるいは解答)だった。テーゼ,アンチ・テーゼ,ジンテーゼは,二人が一緒に選択履修した論理学の授業で習った哲学用語である。

その夜O君は,最初のほうに歌ったエヴァの主題歌のテーゼから始まって,大学院の聴講授業で学んだとおり,戦略的に曲を選んでいたのだった。

その日の夜から,やっと二人の時間が始まった。

KCGに入学してから,7人目の彼氏になるのだけれど,一番最初に知り合ったO君が,実は一番大切な人だったのだ。

KCGに入学してから,最初から,ずっと好きだったEさん,長い間,同じバンドだけど遠いところから見ていただけだったEさんが,やっと自分を向いてくれたのだった。

クラブの卒業コンサートは,はじめての二人が主役のコンサートだった。ボーカルとピアノの掛け合いは,誰もが引き込まれるような,息のあった演奏だった。バンドの演奏は,例の先輩からも褒められた。二人の歌は,コンサート会場の皆の心に,少しは残ったのだと思う。

卒業式の日,二人は服やネクタイやアクセサリーの配色を合わせて参列した。卒業式に来ていた父兄の中に,O君のお父さんがいた。O君のお父さんが,あの先生の学生時代の友人であったことに,Eさんは驚いた。あの先輩(ドラムス)と,O君のお父さん(ベース)と,先生(リード)と,O君(ボーカル)とEさん(キーボード)とで,バンドが揃うこともわかったのだった。またひとつのKCGネットワークがあるのだった。通信はお手のものの卒業生たちであるから,彼らのネットワーキングがすぐに動き始めたのは,当然のことである。

そのあとの卒業パーティでは,二人は大勢の卒業生たちの騒ぎの中心にいた。KCGでの青春4年間に別れを告げる日の夜遅くに,二人は将来を誓い合った。

翌日,二日酔いの頭をかかえて,O君は新幹線に乗って東京に発った。内定先の企業に,辞退届けを出しに行ったのだ。採用担当のKCGの15年ほど上の大先輩に理由を全部話して,ただひたすら頭を下げ続けた。そして数日後,O君は,別の先輩の紹介で,大阪市内でKCGの30年ほど歳上の社長が経営する,ネットワーク関連の有名企業に内定した。

二人は,卒業して一年も経たないうちに,一緒に暮らし始め,二年目に結婚した。結婚式には,KCG時代の友人たちが多く集った。披露宴は,学生時代のバンド仲間が次々に演奏するライブパーティだった。新郎新婦と新郎のお父さんと恩師と先輩との5人の二世代バンドも,懐かしいあの一曲を演奏したのだった。

45年の歴史と伝統のある,京都コンピュータ学院に,数多ある恋物語のひとつである。

ランランリランショウビダバ♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
                              ( -_-)♪~♪♪ …

愛しい彼女
愛しい彼女②
愛しい彼女③
愛しい彼女 終章

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愛しい彼女③

愛しい彼女 その3<愛しい彼女 その2からの続き>

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KCG4

夏が終わり,秋が来て,2回生の一年が終わろうとしていた。Eさんは,5人目の彼氏といっしょだった。Eさんにとって,京都コンピュータ学院は,とても楽しい場所だ。多くの友人といっしょに,楽しく毎日が終わる。退屈な授業もあったけれど,それもそれなりに楽しいのは,どのクラスにも,仲良しの友達がいたからかもしれない。KCGには面白くて楽しい先生も多い。KCGきってのダンサーの先生に,HIPHOPの踊り方を習ったりして,最近はさらに,学校に来るのが楽しいと感じている。KCGは,先生の面倒見が良いことでも有名だ。
KCGでは伝統的に,年上の人も,同い年も,いっしょにワイワイしている集団がいくつもある。もちろん,ひとりで浮いている人もいるから,Eさんはそういった人にも声をかけて,できるだけ積極的に友達を増やそうとしていた。

今日のC言語の授業は,DAIGOにちょっと似ている同じバンドのO君の隣席になった。実はC言語は苦手だったけれど,わからないところはO君に聞いて,今日の最初の実習プログラムも,なんとかなった。
Eさんは大阪の北部の出身で,自宅からバスとJRで通っている。通学時間の40分を有効活用するために,最近,携帯をi phoneに変えたのだった。O君もi Phoneだった。そして,授業中にそのことがわかり,二人でメールをやりとりしながら,二人とも,自分のブログのURLを交換してブックマークしていて,気がついたらその日の授業が終わっていた。

放課後,Eさんは,5人目の彼氏がカワサキZ2で迎えに来てくれるので,正門の前で待っていた。爆音を轟かして,かなり年上の彼が,オレンジ色のバイクでやってきた。京都コンピュータ学院自動車制御学科でも教材になっている有名なオートバイなのだそうだが,Eさんは,バイクの種類なんて,どうでもよかった。彼の後ろに乗せてもらって,風に吹かれるのが好きだった。でも,さすがに冬のバイクは寒い。その日は特別に寒かったこともあって,機嫌が悪くなったEさんは,些細なことで彼と口論になり,5人目の彼氏を振ってしまった。このストーリーはあまり本論とは関係が無いのだが,京都コンピュータ学院自動車制御学科のリンクも入れておきたい筆者の気持ちもわかって欲しい。

また秋になって,O君とEさんは,3回生の後半を迎えていた。その頃,二人は,クラブ活動のバンドの練習で顔を合わせる以外には,接点が無くなっていた。時々,ブックマークに入っている相手のブログを見たけれど,Eさんにとっては,エヴァの綾波レイが好きだとか書かれているO君のブログには,あまり興味がわかなかったのだ。

Eさんは,体格の大きな先輩から時々送信されてくる,飲み会のお誘いにも,本当は行きたかったけれど,大阪の北部まで帰宅しなくてはならないEさんにとって,途中で切り上げなくてはいけない飲み会の会費は,ちょっとキツかった。

Eさんは,ゲーム学科の先生に先輩たちの話を聞くのが好きだった。授業が終わると,先生から音楽の話やゲームの話,そしてそれにかかわったKCGの先輩たちの話を聞いていた。先生の学生時代の友人で,竹内まりやの追っかけ(20年ほど前の若者用語)をしていた人がいるらしい。ギターの天才で,いまでもときどき演奏しているのだとか。フリープログラマーの例の先輩は,ギターもベースもピアノもこなす多彩な人だとか,先輩たちの話を聞くのは楽しい。

そして,バンドの仲間はみんな4回生になった。KCGでも,春休みのあたりから,就職活動たけなわとなる。そして,夏までには,バンドの皆の進路が決まっていた。

Eさんは,自宅から通える大阪のゲームソフト会社を選んだ。O君は,東京のネットゲー(ネットワークゲーム)専門の会社に決まった。ボーカルのO君は,ネットワークの技術もかなり向上し,国家試験にも合格していた。ベースのモト彼は,地元名古屋の自動車関係の会社に決まっていた。ドラムは福岡で一番大きなソフト会社だった。リードは,京都情報大学院大学へ進学することになっていた。バンドの仲間たちは,それぞれの進路に分散していくことになっていった。

彼らは,よく遊んでいたけれど,それなりにコンピュータの知識は身についていた。伝統あるKCGでは,クラスの仲間の中に,必ず,スーパープログラマーみたいな優秀な人がいる。また,真面目にすべてをマスターしてしまう,すこし年上の元社会人のネットワークスペシャリストもいる。そういった仲間に囲まれて学生時代を送ると,日常の雑談の中で技術関係の話が飛び交うから,結構自然に勉強してしまうのだ。KCGのクラスではビリでも,社会に出たらエキスパートという話は,昔からよくあることだそうだ。

KCGには,すごい量の求人が来るから,選ぶというより,くじを引くくらいの感覚で,数ページの候補の求人票を見て,会社概要,勤務地や待遇を比べる。先輩がいる会社を選ぶことも多い。ともあれ,皆,進路が決まり,あとは卒業を残すだけだった。

少年たちは,青年になり,大人になっていく道のりにあった。

ランランリランショウビダバ♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
                              ( -_-)♪~♪♪ … (愛しい彼女 終章へ続く)

愛しい彼女
愛しい彼女②
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愛しい彼女②

愛しい彼女 その2<愛しい彼女からの続き>

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KCG2

山陰の地方都市出身のO君が,京都コンピュータ学院への入学をきめたのは,彼のお父さんがKCG出身で,現役の先生の友達だったからである。お父さんも,音楽好きで,その先生も学生時代からバンドをしておられたそうだ。お父さんとその先生は,今でも仲良くて,ついこの間も,二人で神戸のコンサートに行ってきたと言っていた。山陰の彼の故郷からお父さんはJRで神戸に行き,先生と待ち合わせて,甲斐バンドのコンサートに行ってきたという。歳甲斐も無く,総立ちで全曲を熱唱してきたと,お父さんは威張っていた。O君は,竹内まりやだったら自分も行きたいな,と思ったのだけれど,後日,先生が授業中に歌ってくれた甲斐バンドの一曲は,彼の頭の中のRAM(Random Access Memory=書き換え可能な記憶装置)にストア(記憶)された。

春が来て,五月の連休が過ぎて,梅雨の暑い日のことだった。O君の好きなEさんは,その日,不知火舞のような,Tシャツだか着物だかわからないようなブラウスのようなシャツを着てきていた。その頃,Eさんは4人目の彼氏とつき合っていたのだが,そいつは同じバンドのベースだった。彼女の素敵さに磨きがかかっていることについては,バンドの誰もが同意していた。その日,Eさんは,キーボードの新しいテクニックを披露してくれた。両手を高く掲げてキーを叩くその演奏方法は,まるで大輪風車落としのようだった。このストーリーは,本編にはあまり関係がないのだが,複数の異性に磨かれて,女性がよりセクシーになっていった,ということだ。

その日の夕方,軽音楽部の大先輩が部室に来た。フリーでプログラマーをしているその先輩は,大きな顔で笑いながら,O君を夕食に誘ってくれて,「最近は不景気なんだが」と言いながらも,天下一品の大盛りをおごってくれた。
先輩によると,KCGの先輩後輩のネットワークは大きくて,特に軽音楽部のネットワークは,KCGのクラブの中でも最大級なんだとのことであった。そして,昔のKCGには「少林寺拳法部」というクラブがあって,そこが強かったけれど,その先輩が在学していた2000年前後は,少林寺拳法部が消滅していたので,自分は剣道にしたのだ,と訳の変わらないことを言っていた。ラーメンをすするのに忙しかったから,O君は先輩の話の半分も聞いていなかった。剣道と小林とお寺と何がどのようにアルゴリズムが構成されて軽音楽部の先輩になるのか,イマイチ意味不明だったが,天下一品の大盛りにんにく入りのパワーはUFOを完全に凌いで絶大であった。
だから,O君は,その優しくて面倒見の良い先輩サーバーのルーターになろうと決めたのだった。(先輩の下で,多くの後輩の友人関係を取り持っていこうと思った。)先輩はヤマハのミニトレという小さなバイクに乗って帰っていった。

そうすると,①お父さん,②先生,③先輩,④自分,⑤愛しの彼女,は,「軽音」というラインでネットワークなのだということに気がついた。このネットワーキングを,どのように維持し,拡張していくのかのヒントについては,ネットワーク概論の先生に聞きに行くことにした。
それから,どの曲の,どのフレーズで,彼女を見つめるのか,という戦略を立案するには,大学院の授業を聴講したほうがよいのかな,とも考えたのだった。
授業で習う専門用語や専門知識は,現実の学生生活にあてはめると,結構面白かった。

次の日,放課後の教室であれこれ考えながら,昨日からハマっているネットワーク概論の教科書を読んでいたら,O君のRAMにストアされていた一曲は,授業で熱唱してくれた先生の甲斐も無く,上書き保存で消えてしまっていた。
あの曲はどんなのだったかなと思いながら,窓の外を見ると,教室の窓からは,黄色い新幹線が走り去るのが見えた。
O君は一瞬,自分の目を疑った。そして,南に面した教室の窓枠の,どこをクリックすれば,色の置換(Photoshop)の画像処理がされるのか探そうとしたが,それは本当に黄色かったのだった。

ランランリランショウビダバ♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
                             ( -_-)♪~♪♪ … (愛しい彼女③へ続く)

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愛しい彼女

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KCG3

京都コンピュータ学院は,近年は相対的に女子が少ない。80年代には,女子のコンピュータオペレーターブームがあって,半数以上が女子だった学科もあったのだが,21世紀になってからは,男子のほうが多いのが普通である。
当たり前だが,少ないほうがモテる。さらに当然だが,モテる女子はさらにモテることになる。クラスや所属クラブで人気者だった彼女を,長い間かけてゲットした,ある少年の恋物語。

山陰のある地方都市出身のO君が入学したのは,4年課程の情報学科。一回生(京都では,一年生のことを一回生ということが多い)のときに,軽音楽部に入部した。同期で,大阪から通学するEさんという可愛いコがいた。どちらも新入部員ということで,入部早々にお互い名前を覚えたが,O君は,どこから見ても,エヴァの綾波レイにそっくりな彼女に,ほとんど一目惚れだった。その笑顔は,O君の心に焼きついてしまった。まるで,頭の中に大容量のROM(Read Only Memory=書き換え不可能な記憶装置)ができたようであった。

O君は,ギターをもっと上手に弾けるようになりたかったから,リードになった。Eさんは子供のころからピアノを習っていたので,キーボードの担当になった。軽音楽部は,それぞれの音楽の方向性や,担当の楽器やボーカルをできるかどうかなどにより,数名でバンドを組む。O君は,Eさんと同じバンドになることを願った。そして,Eさんが自分の音楽的方向性を語るのを横で聞いていて,自分も迷うことなく,その方向で行くことに決めたのだった。

入部(ログイン)がほぼ同時期だということもあって,うまくO君はEさんと同じバンドになった。しかし,ライバルがとてつもなく多いということに,ほどなく気づくのであった。

朝の通学時には,駅のホームからか,それとも電車の中からなのかわからないが,すでに数名の男子がEさんといっしょになっていて,皆で登校してくる。
授業中は,Eさんの周りに数名の別の男子が座っている。
昼休みは,お弁当を持ってきているEさんの周囲に,朝コンビニでパンや弁当を買ってきている男子が取り巻いている。
放課後,部室に行くときも,別の部員がいっしょにいる。
クラブ活動が終わって,帰宅するときも,大阪の方面に帰宅する男子が二人,いっしょにいる。
学校行事に関することは,すべて,誰か数名が彼女の周りにいるのである。まるでサーバにぶら下がるクライアントマシンのように,数名の男子が取り巻いているのである。コンピュータ概論の授業で,「サーバが高性能だと,クライアントが多くても,処理速度はさほど落ちない」ということがわかったけれど,どうすれば彼女をゲットできるのかは,授業を聞いていただけでは,よくわからなかった。

市内の学生マンションに暮らすO君は,彼女といっしょに通学することもできず,結局二人だけで話す機会など,まったく無いまま,日々が過ぎていった。

彼女の取り巻きの中で,ひとり,目立っている男子がいた。5月の連休の前に,その彼とEさんが付き合っていること(ピアツーピア)を知って,落胆したO君は,しかたがないからあきらめて,音楽一筋で行こうと思ったのだった。(スタンドアロン)

夏休みが終わり,皆が学生生活に慣れてきた頃,彼女は最初の彼氏と別れたという話を聞いた。これはチャンスかもしれないと,再度,恋心に燃え上がるO君であった。しかし,やはり彼女の周りには取り巻きがたくさんいて,告白するチャンスはまったく,無かったのである。

後期入学の半年後輩が入ってきた。彼はギターが上手だったので,O君は,ボーカルに転向した。そして,バンドが採択する歌をほとんど自分が歌うことになった。そこで,O君は,できるだけキーボードの彼女の目を見つめながら歌うようにした。部室で練習しているときはもちろん,学院祭のステージのときも,できるだけ,キーボードの方を向いて,彼女の目を見つめながら歌う。

しかし,そんなことをしても,誰も,O君の視線に気づかなかった。キーボードの彼女は,間違えないようにと一所懸命,楽譜を見ているから,ボーカルの方を見ることなどめったに無い。確率・統計の授業で,O君は,視線が合う確率が極めて少ないことがわかったのである。でも,同じ授業で,極めて少ない確率でも,当たることはあるということもわかった。O君はめげずに,毎日の練習で,Eさんを見つめていた。

冬が来て,年が明けて春の兆しを感じる頃,O君のバンドは,演奏も上手になっていた。その頃,Eさんは3人目の彼氏とつきあっていた。O君は,やっぱり,ひとりだった。

実家を離れて一人暮らしをする少年にとって,夕食は面倒なことである。その日も,O君は,UFOを夕食にすることにして,カップに湯を注いでいた。M先生は,焼きそばはぺヤングだと言うけれど,O君は,UFOが好きなのだった。カップの湯を捨てて,ソースをからめているとき,O君は,ソースソース,,Source,英語の時間に覚えた単語を思い出した。そして,ひとつ思いついたのだった。Sourceである。プログラミングの授業でも,ソースという言葉がよく出てくる。

「そうスカ。」O君はつぶやいた。

音楽ソースの歌詞の中には,愛しているよ,とか,I love youといった意味のフレーズが多い。それで,歌詞が,愛してる,とか,好きだよ~,というような意味のときに,O君は,彼女を見つめながら,その部分を歌うことに決めたのだった。

窓の外には,春一番が吹いていた。

ズンズビダバヅゥビダバ~♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
                                   ( -_-)♪~♪♪ … (愛しい彼女②へ続く)

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禁断の師弟愛?

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)

F君はKCGの4年課程を卒業して,新任一年目の助手として母校で働いていた。高校時代はどちらかというと口下手だったのだけれど,KCGに学ぶうちに,人前で話す仕事をしてみようと思うようになったからだ。助手としてついた先生が担任をしていた最終学年のクラスに,一歳下のTさんがいた。

Tさんは,先生の紹介によって,京都大学の名誉教授が経営するバイオ系の研究機関で,秘書として働くことが決まっていた。KCGの先輩には,京大に秘書や助手として就職した人が多い。F君に言わせると,Tさんは,新世紀エヴァンゲリオンの葛城ミサトを,すこし妖艶にしたような美人で,大阪の短大を卒業してからKCGに入学したから,在学中はクラスの中では少し大人っぽかったという。ちなみに,Tさんのことをエヴァの葛城ミサトに似ているなんて言う人は,F君の他には誰もいない。

卒業パーティの二次会で,F君は偶然Tさんのとなりに座ることになった。ほとんどの参加者は,かなり「出来上がって」いた。F君ももちろん,かなり出来上がっていたから,思っていたことをスラスラと話せたのかもしれないし,酔ってたから,思っている以上のことも言ってたのかもしれない。そして,その日がきっかけで,二人は,つき合いはじめたのである。

誰からも好かれるTさんにとってF君とは,担任の助手で,教壇で何を言っているのかよくわからない人。でも,真面目そうで,私のことだけを見てくれそうだったから,いいなと思ったのだそうだ。Tさんにとっては,自分だけを一生愛してくれる人が一番だった。それは母から教えられた女の生き方の方法論でもあった。それに,F君の言っていることを理解できるのは,世界中で自分だけのような気がしたのだそうだ。

ついこの間まで,担当していたクラスの学生だった彼女をデートに誘うのは,F君にとっては,とても勇気がいることだった。「教師として,そんなことをしていいのか」と上司の先生に尋ねる訳にもいかず,悩みながら,それでも彼は彼女に夢中になっていった。天真爛漫な彼女は,「もう卒業したんだからいいんじゃない?」とひとこと言って,後はなにも気にしなかった。彼はひとりで長い間,「いいのかな?」と一抹の不安を持って,気を揉み続けていたらしい。

5月の連休に,某クラブのOBの集まる飲み会で,「女子高校で,先生がかつての教え子と結婚するという話はよくあるらしい」という話を聞いて,F君は「それってかなり微妙。」と思ったそうだ。

7月のビアガーデンで学科長の先生に聞いたところでは,男女共学のKCGでも,かつての教え子との恋愛は,過去にはいくつかあったようで,**先生の奥さんも,働き出してすぐの教え子だったのだそうだ。その話を聞いて,心の中で,「いいのか・・。」と,妙に納得したF君であった。でも,学科長には,Tさんのことは言えなかった。

担当クラスの同窓会をかねたクリスマスパーティに,F君とTさんは二人連れ立って参加した。
かつてのクラスの仲間たちは一瞬一様に驚いたけれど,すぐに皆で乾杯で祝福してくれた。料理が運ばれてくると,二人に関して詮索することもなくなり,杯が進むと二人の空気は話し声にかき消されて,それぞれが勝手に移動して椅子も乱れ喧騒に包まれて,二人の座る場所もあちらとこちらに離れてしまった。大勢の同窓生の間には数多くの話題がある。誰が誰とつき合っているかという話も,そのうちの,ほんのひとつに過ぎないのだった。Tさんをエスコートする自分は,この日のパーティのスターになると予測していたのに,F君はすこし当てが外れた。
そもそも,クラスの全員は,授業を持っていないF君のことを,最初から「先生」だとは思っていなかった。担任の先生の助手であった「副」担任の「先輩」の「Fさん」が,こんどはクイーンTさんのシモベになったんだなと思っていた程度だった。

それから何年か経って,F君は今,KCGでの経験を生かして,東京のあるソフト会社で自社製品のチーフインストラクターとして,働いている。
もう人前で話すことに,それなりの自信を持っている。自分が,他の人たちと少し違う世界を観ていることに気がついた。高校時代,口下手だったのはそれが原因だった。それがわかった後,F君はそこを逆手に取って,それを自分の長所だと考えるようになった。そして,例の研究機関を3年で辞めたTさんと結婚して,子供もひとりできた。

二人の住むマンションの部屋の本棚の上には,ウェディングドレスとタキシードを着た二人の写真が飾ってある。写真の中で微笑む二人をとり囲んでいる卒業生の仲間たちの,それぞれの顔は酔っぱらって興奮して大笑いしている。誰かの結婚式で同窓生が大勢集うと,主役は集まる理由か酒の肴となり,皆で騒ぐことが本当の目的になることも多い。そのときも,皆が集まった理由は,皆が来るから,ということだったのかもしれない。

でも,今でもF君は,結婚式の日に,KCGの大勢の卒業生が来てくれたことを,とても誇りに思っている。自分ひとり,世界観が違うのかもしれないけれど,それはそれで,いいことなんだ。F君は,そんな自分を受け入れてくれた,KCGの友人たち(奥さんの取り巻き)に,感謝している。

ズンズビダバヅゥビダバ~♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
                                   ( -_-)~ フゥ…

<目次&リンク>
KCGに入学してきた人々,卒業していった人々。=KCGの学生さんの様々なパターン
デジタルネイティブ=今では普通になった,ネットで生きるフリーのプログラマーのはしり
20才で大人になった不良上がり=暴走族やヤンキーが当たり前だった80年代初頭の話
ゲームプログラマー =ゲームプログラマーの話
想い出のあのコ=高度専門士が無かった頃の話。大卒かKCG卒かが問題だったときのこと
卒業生同士の結婚 =卒業生同士で結婚に至る場合
洛北エンジニアリング =KCG伝統の洛北校,別名萩原学校。KCGの最高峰でメカトロニクスに夢中の学生さん
ああ女神様っ!=ベルダンディ-みたいな美人の先生に恋した話
禁断の師弟愛? =先生?と女子学生の恋愛と結婚
K君のRPG=母子家庭の長男が,RPGを作成し,大手ゲームメーカーに転職するまで
 
妹の遺骨=在学中に妹を亡くした情報処理科の寮生。広島の大手ソフト会社No.1,のSE

愛しい彼女4部作  
 一年から卒業するまで同じ軽音楽部だった彼女をずっと愛し続け,卒業の前にやっとゲットして,卒業後,結婚に至った話
愛しい彼女
愛しい彼女②
愛しい彼女③
愛しい彼女 終章
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ああ女神様っ!

人生色々,卒業生たち(クリックで全文表示します)

一年生のコウイチ君が,最初の学期で選択したある情報系の科目の担当は,非常勤の若い女性だった。京都大学の博士で,才色兼備のやさしい素敵な先生だった。コウイチ君は,ひそかに,「ベルダンディ-先生」とあだ名をつけて,その先生の授業だけは欠かさず出席し,教室の最前列に座っていた。

中間試験が近づいた頃,コウイチ君は,あるひとつの作戦を思いついた。何か質問をしにいくという名目で,先生の研究室を訪ねようという企みである。教科書をよく読んで,引用文献を探し,その文献に書かれていることの意味を聞きに行って,一時間くらいは相手してもらえるような,質問を探した。

教科書を読めば読むほど,わからないことがわかってきて,疑問は減っていった。参考文献を読めば,ますます理解が深まった。そうこうしているうちに,中間試験の当日になってしまって,コウイチ君は,満点を取ってしまった。

次の週,ベルダンディ-先生は,そんなコウイチ君を褒めてくれた。舞い上がったコウイチ君は,ますます教科書を読むようになった。やはり,質問は見つけられず,読めば読むほど,理解してしまうのだった。

そうこうしているうちに,梅雨があけて,夏になった。コウイチ君の想いは募る一方だったけれど,おかげで勉強もはかどる一方だった。時々行われる小テストも,全部満点だった。

そして,期末試験がやってきた。

コウイチ君は,そのとき,勇気を出して,白紙答案を出した。先生に叱られてみたかったのである。試験は,試験担当の先生がつくから,ベルダンディ-先生ではない。あとから,呼び出しをくらうことを,ひそかに期待していた。

しかし,期末試験の結果は,夏休み中,夏の終わりに知らされる。期末試験の終わる頃にそれを知って,コウイチ君はすこしショックだった。

そして夏休みの間に,ベルダンディ-先生は,九州の某県立大学に移っていった。噂では助手として採用されたのだということだった。コウイチ君は,その科目を落としはしなかったけれど,中間テストと小テスト6本が満点で,期末が0点だったから,ギリギリ最低の成績だった。ほとんど完璧に理解したというのに・・・。

ズンズビダバヅゥビダバ~♪,テレ~レ~レレ~♪
チャンチャンチャラロリロリ~♪,ルンルンルル~ルン~♪
                                    ( -_-)旦~ フゥ…

<目次&リンク>
KCGに入学してきた人々,卒業していった人々。=KCGの学生さんの様々なパターン
デジタルネイティブ=今では普通になった,ネットで生きるフリーのプログラマーのはしり
20才で大人になった不良上がり=暴走族やヤンキーが当たり前だった80年代初頭の話
ゲームプログラマー =ゲームプログラマーの話
想い出のあのコ=高度専門士が無かった頃の話。大卒かKCG卒かが問題だったときのこと
卒業生同士の結婚 =卒業生同士で結婚に至る場合
洛北エンジニアリング =KCG伝統の洛北校,別名萩原学校。KCGの最高峰でメカトロニクスに夢中の学生さん
ああ女神様っ!=ベルダンディ-みたいな美人の先生に恋した話
禁断の師弟愛? =先生?と女子学生の恋愛と結婚
K君のRPG=母子家庭の長男が,RPGを作成し,大手ゲームメーカーに転職するまで
 
妹の遺骨=在学中に妹を亡くした情報処理科の寮生。広島の大手ソフト会社No.1,のSE

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 一年から卒業するまで同じ軽音楽部だった彼女をずっと愛し続け,卒業の前にやっとゲットして,卒業後,結婚に至った話
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愛しい彼女③
愛しい彼女 終章
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洛北エンジニアリング

人生色々,卒業生たち

京都コンピュータ学院の本校である洛北校。KCGの最初の4年課程である情報工学科は,京大工学部の情報工学専攻を超えることを目指して,萩原宏先生がカリキュラム設計を行ったことから,「萩原学校」という呼び方もある。
(萩原宏先生は,京都大学名誉教授,KCG情報工学研究所長,情報処理学会会長,学術会議会員を歴任された後,京都情報大学院大学の初代学長に就任された御大である。)

その情報工学科4年課程(高度専門士)を頂点にした洛北校は,KCGグループの中で最も伝統があり,数々の伝説が残る,殿堂中の殿堂である。

90年代の後半のこと。
洛北情報工学科に,S君という秀才がいた。
二足歩行のロボットを製作していて,それに夢中になっている,ものつくりの好きな学生だった。
人間関係の細かいことや,面倒くさいことは「苦手」か「嫌い」だけど,機械いじりやプログラミングは楽しくてしょうがない,そんな学生の典型である。
彼は背も高く,俳優にしてもおかしくないくらいのイケメンで,学生間では男女を問わずモテていたから,ことさら印象に残っている。
他の多くの学生が,わからないことがあれば彼に教えてもらっていた。
そういった友人に対しては,彼はいつも嬉しそうに,そして丁寧に手ほどきしていた。
彼は,自分の興味ある分野でサポートをしてくれる先生たちとは仲良かったけれど,関係のない科目の担当の先生には知らん顔をしていた。

卒業式の夜,パーティの二次会。他の卒業生が学生時代の想い出や就職していく会社のことを話している中で,彼は,二足歩行ロボットの重心移動の仕組みとそのプログラミングと,ロボットの脚腰のアルミ合金の材質について,長々と語っていた。このように書くと,うざいオタクな奴,などと想像されるかもしれないが,彼はいつもさわやかに熱心に話をする。したがって,周りの誰も彼の悪口を言わない。

彼の就職先は,京都の有名なソフト会社で,自分は倉庫管理システムを担当する予定だと言っていた。二足歩行ロボットとは違う分野だけれど,ものつくりという意味では,同じようなものだと思うから楽しみだ,とも。

理工系への進学志望が減り,若者の理系離れが叫ばれて久しい。しかし,彼のように,技術立国日本の柱となりそうな学生は,少なからず存在し,今も,洛北校に集う。そして,洛北校の卒業生には,多くの企業から「学科指定」や「本人指名」で求人が来るのである。KCGの本家本元,他の追随を許さない,洛北エンジニアリングである。

ランランリランショウビダバ♪,ラリ~リラ~ラリ~♪
ランランリランショウビダバ♪,ルンルンララーラ~♪
                                ( -_-)~♪ ~♪

京都コンピュータ学院
京都情報大学院大学

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卒業生同士の結婚

人生色々,卒業生たち

京都コンピュータ学院在学中から恋愛関係になって,卒業後結婚するカップルも多い。
18歳そこそこでKCGに入学し,クラスやクラブ,同好会などで知り合い,つき合い始めて,卒業し,職を得た後,結婚するという,理想のパターンのひとつである。こういった恋愛結婚は,話を聞くだけでも嬉しくなる。

もちろん,お互い相手が最初の異性という場合もあれば,そうでない場合もある。同じクラブに相手の元彼女や元彼がいたりすることもある。しかし,卒業式のときには二人で列席し,卒業パーティのときも,二人でいっしょにいる。そんなカップルは,結構多い。

毎年,何百人もの若者を見ていると,当然のことながら,若い男女で付き合ったり別れたりしているのを見る。そして,毎年少なくとも2~3組くらいは,結婚まで至ったカップルの話を聞いたり,ときには結婚式や二次会のパーティに招かれたりする。

色々なカップルを見ていると,「ピッタリ合う男女」というのは,なんとなくわかる。学生時代の付き合い方を見ていると,「この二人は結婚に至るだろうな」,と予測できたりするのである。男女の相性というものは,外からある程度は見えるものだ。
・・・なんて書くと,「自分たちはどうなのか」と質問が殺到しそうなので,以下に回答を書いておこう。

大切なのは意思である。若い日に知り合って,対等な付き合いをしていて,互いに相手を尊重し,互いにその相手と人生をやっていく意思が,若くとも少なからず,見えてくるような男女は,まず間違いなく,卒業後も結婚している。そして,ほとんどが,いわゆるおしどり夫婦として,結婚後もうまくやっている。

「まだ若いのだから,先のことはわからない」とか,「とりあえず今は相手が好きだけれど,まだ他にも選択肢があるだろう」,などと考えているようでは,駄目だろう。「あっちが良いか,こちらが良いか」などとあちこち目移りしているのは論外である。

お互いまだ若いのだから,いくらでも,変化するし,変化しながら成長していく。その成長の方向性を共有して,二人で互いに相手を導きながら,同じ方向を向いて歩いていくようなカップルは,結婚にまで至る,ということだ。

青少年から大人になっていく間を,その相手といっしょに学生時代を過ごして,二人で人生観や人生哲学を創っていく。二人互いに相手を創るという意味で,大人になっていく人格形成も,共同作業である。そういった付き合い方をしているカップルは,見ていて微笑ましい。

そして,卒業してから数年経って,そういったカップルの結婚の知らせを聞くと,実に嬉しいものである。勉強よりも,資格よりも,就職先よりも,もっとずっと大事なことを,KCGで見つけてくれたのだから。

ランランリランショウビダバ♪,ラリ~リラ~ラリ~♪
ランランリランショウビダバ♪,ルンルンララーラ~♪
                                ( -_-)~♪ ~♪

京都コンピュータ学院
京都情報大学院大学

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想い出のあのコ

人生色々,卒業生たち

学生時代の友人は,生涯の付き合いになる人もいるけれど,卒業して数年たち,なにかのきっかけでそれきりになってしまう人もいる。特に,女性の場合,結婚してしまうと,疎遠になってしまうことが多い。

彼女は僕よりもひとつ下で,同じクラスだった。KCGを卒業して大学に行くのだと言って,受験勉強をしていた。彼女は国家試験の一種(今のソフ開レベル)に合格したあと,合計3年在学したけれど,結局KCGは卒業せずに,大阪の公立大学に進学した。そして,20代の後半までは,僕たちは時々連絡をとりあっていた。

あるとき,久しぶりに電話したら,彼女は「私,結婚するの」と言っていた。祝福を伝え,引越し先が決まって落ち着いたら,また電話を頂戴と言って,そのときは話が終わった。その後,しばらくは新しい生活に忙しかったのだろう,電話がかかってくることもなく,まもなく僕も引越してしまったから,それきりになっている。

当時は,KCGに在学しながら,大学を再度受験する,というパターンのことを,「仮面浪人」と言っていた。専門学校の学生を仮面として,実は大学浪人,というわけだ。KCG在学中は一年目に国家試験に合格しておいて,その後は大学の受験勉強をして,卒業と同時に,中堅どころの大学に進学して大卒学歴を得る,というのがひとつの定番コースだった。そうすると,文系の大卒でも,コンピュータの技術を持っているということで,就職が良かったのだ。
大学に在学しながら,コンピュータの専門学校に通うというダブルスクールが流行ったのはその後のことだ。これも,大卒学歴とコンピュータの技術の両方を得て,社会に出るということにそれなりの意味があった。

今は,KCGの4年課程を卒業すると,高度専門士となり,大卒の学士と同等の学歴になる。大学院もできたから,修士号を得て大学院卒にもなれる。
もう,あのときの彼女のように,受験勉強に苦労して大卒学歴を目指す必要もなくなった。
時代は変わった。KCGの社会的な評価や卒業生の地位は,あの頃からずっと,上がり続けている。

ダンドゥビダバダバダバ~♪,タラ~リ~ラーララ~♪
ドゥドゥディラリララララ~♪,ルンルンララーラ~♪
                                ( -o-)y-~~~

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ゲームプログラマー

人生色々,卒業生たち

元々は花札やトランプの印刷会社であった任天堂が,コンピュータゲームの業界に進出したとき,京都コンピュータ学院の卒業生を大量に採用した。初期の頃の任天堂のコンピュータゲームプログラマー,SEは,全員が京都コンピュータ学院の卒業生だったという。今では古典となったマリオブラザーズなども,KCGの卒業生たちが製作したものだ。

70年代から80年代後半にかけて,パソコンゲームやファミコン,アーケードゲームなどが急速に台頭していった。それに伴って,在学生の中で優秀な者は,在学中からゲーム会社の下請けのバイトをしはじめていた。中には,3ヶ月のアルバイトで500万円稼いだ,とか,学生でありながら半分正社員となり月収が50万円などという猛者も多く出現した。

NEC98が国内を席巻していた80年代半ばあたりからは,小学校の頃からパソコンに夢中になっていたといういわゆる「パソコン少年」が大量に出現する。KCGにも,もちろん,そういう学生がたくさんいた。ゲーム業界に巣立っていった猛者たちの多くは,そういった人たちだった。

70年代から80年代というのは,世の中が急速に情報化されていったときで,ゲームに限らず,KCG在学中に様々なコンピュータ関係業界で正社員として採用されていった人たちが多い。いまでも学内に少なからずいるその手の猛者たちにとっては,卒業するのが常識になっているが,当時は,KCG中退がエリートの一種だった。当時は,今のように,専門士や高度専門士の制度が無かったから,ことさら卒業資格が必要ということはなかったのである。従って,過去の元学生たちの中で看過できない存在として,「優秀であるがゆえの中退生」が多数いる。これは数千名を数えると思う。

多くのソフト会社でも同様だが,特にアミューズメント系のソフト会社では,技術者の流出を防ぐために,社内のプログラマーの誰がどのような技術を持っているのかは,最高機密である。
従って,KCGの卒業生や中退生の誰が何をしているのかを掌握するのは簡単ではない。当の本人から,「内緒だけど・・」と言う前置きで話を聞かされるのが大半である。

そこで,ある「80年代初頭の(優秀な)中退生」から聞いた印象に残る話。

あるゲームプログラムのある部分には,その担当のプログラマーだけが知っている関数がある。
例えば,(あくまでも例である)主人公のキャラがトコトコと走ってきて,ピョ-ンとジャンプする。
そのとき,ゲームを操作している人間が,「どのタイミング」で,「どれだけの時間ボタンを押」せば,「どのような放物線を描くか」を決定するように関数を作らなくてはならない。
それを見ている人間が最も自然に感じるような,そして楽しく感じるような動きをさせるための関数は,当のプログラマー本人が,様々にテストして編み出すものなのだ。これは,かなり難しいもので,その放物線を描いてキャラがジャンプする,という部分のサブルーチンは,その人しか書けないという。また,それを編み出したプログラマーは,その秘儀を他人に教えないという。

80年代から90年代にかけて著名だったゲームの,ごく一部分の話であるが,同じことは現代のゲームにもあてはまる。ゲームプログラミングの世界では,そのようなスーパープログラマーが何人もいて,しかも,各企業も,そういった人たちの存在をひた隠しにしているのである。

筆者はゲームはあまり好きではないが,よく出来たコンピュータゲームがそれなりに面白いことくらいは知っているし,FFやバイオハザードなどのRPGも,数ヶ月毎晩それに没頭して,最後まで行ったこともある。

人を夢中にさせるゲームには,多くの知性が参加しているが,その中に,その人しかできない,知性の結晶のような職人仕事がある,というのは興味深い。日本の誇る,職人気質,職人文化のひとつだと思う。

ランランリランショウビダバ♪,ラリ~リラ~ラリ~♪
ランランリランショウビダバ♪,ルンルンララーラ~♪
 
                                 ( -o-)y-~~~

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