経済学における「リスク」は、いろんな定義の仕方がありますが、
わかり易くするため、ここでは強引に、
「ある不確実な出来事によって、収益や損失が生じてしまう現象」、
っと無理やり定義してしまいます。
(*経済学者様、あんまり深く突っ込まないでください)
一般的に「リスクが高い」ことは、
望ましくないと思われがちですが、
「ハイリスク・ハイリターン」という言葉も存在しているように、
「リスク」そのものは絶対悪…というわけではなく、
単純に「状態が不安定…」ということですね。
そして一般的に、人々は「リスクの高い」状態と、
「リスクの低い」状態を選択することができます。
もちろん、選択できない時もあります。
人が「リスク」に直面した時、さまざまな態度を取ります。
経済学では、それらの態度を、以下の三種類に分けています。
1.リスク愛好者
2.リスク回避者
3.リスク中立者
です。
リスク愛好者は、「ハイリスク・ハイリターン」の信仰者で、
リスク回避者は、「安定志向」であり、
リスク中立者は、「安定も不安定もかまわない…」ということですね。
たとえば、ここで一つちょっとしたゲームがあるだとしましょう。
ゲームのルールは以下のようになっています:
1.一人ずつ100円を出して、プールします
2.参加した全員は、「じゃんけん」をし、勝敗を決めます
3.最後まで勝ち残った一人は、賞金の全額をゲットします。
このようなゲームが提示された時、
「参加する」人は、基本的にリスク愛好者で、
「参加しない」人は、基本的にリスク回避者で、
「参加しても、参加しなくでも同じ」人は、基本的にリスク中立者です。
ここで、「リスクを犯すかどうか」の決め手は、
各自の「効用関数」の形です。
ここでそこらを詳しく説明しても仕方ないので、
さらに詳しいこと知りたい場合、
KCGの教員や学生は、
私が京都コンピュータ学院で担当している「経済学1」を、
(2007年度の場合は11回目の「不確実性と不完全情報」)
WebCTでEラーニングコンテンツを聴講するといいじゃないかと思います。
KCGに所属していない方は、慶応大学のEラーニングコンテンツ、
ストック経済論2006 #5 資産選択とリスクを参照してください。
ここらへんの話は、経済学の金融理論とかで展開されていまして、
株取引のリスクや、経営環境の変化に対するリスクなど、
さまざまな話が展開されています。
さて、導入部がすっかり長くなってしまいましたが、
話を戻します。
ETロボコンの本選の結果についてからの引用ですが、
予選では,「挑戦的な走り」をしていなかったのが
本選では「挑戦的な走り」に変更して見事に失敗した。単純に走行し速く走るのもよいですが,
やはりやるならば難所の突破を目指そうとか,
色々挑戦しようとしたために,組み合わせていったときに,
不具合やバグなどが出てきてしまったみたいです。
これを見て、「まさにリスク下の選択の話だな!」っと思いました。
以上の説明によれば、このコンテストに対し、
KCG.EDUチームは「リスク愛好者」であると判断できます。
仮に、コンテストに参加した際、
その利得は「順位」によって計算されると仮定します。
そして、「順位」と「効用」の関係は、
各参加者の効用関数によって異なりますが、
仮に、KCG.EDUチームは「リスク愛好者」であり、
効用関数は、以下のようになっています:
一位:500
二位:300
三位:100
四位~六位:30
七位以下で完走:10
完走しない:0
モデルの仮定では、KCG.EDUチームは、
以下の二つの選択が出来るだとしましょう。
1.安全策(予選と同じ走り方)
リスクが低く、とりあえず完走し、30位くらいはゲットできそう。
この場合の期待効用は、「10*100%」=「10」
2.チャレンジ(アグレッシブでゴー!)
リスクが高い。
20%の確率で3位くらいで入賞できる。
80%の確率で完走できない。
この場合の期待効用は、「100*20%+0*80%」=「20」
仮にKCG.EDUチームは、このような効用関数を持っているのであれば、
チャレンジの期待利得20>安全策の期待利得10
なので、チャレンジしてしまうのさ!!
そして、見事に玉砕してしまったわけだが…、
選択としては超正しいのです!!!
誇りを持っていいよ!さとーし氏!
ちなみに、この場合、
「リスク回避者」の効用関数はどんな感じかというと…、
一位:500
二位:300
三位:100
四位~六位:30
七位以下で完走:10
完走しない:ー20
この場合
1.安全策(予選と同じ走り方)
リスクが低く、とりあえず完走し、30位くらいはゲットできそう。
この場合の期待効用は、「10*100%」=「10」
2.チャレンジ(アグレッシブでゴー!)
リスクが高い。
20%の確率で3位くらいで入賞できる。
80%の確率で完走できない。
この場合の期待効用は、「100*20%-20*80%」=「4」
仮にKCG.EDUチームは「リスク回避者」であり、
このような効用関数を持っているのであれば、
安全策の期待利得10>チャレンジの期待利得4
だから、「リスク回避者」はチャレンジしない…、
ということになりますね!
*この記事で上げた数値はあくまで一例です。
本来の経済学では、もっと抽象的な関数を利用するのが普通ですね。
ここでは、経済学を良くわからない人に、
わかり易く解説するため、便宜でさまざまな実数値を利用しています。