さて、昨日クリアしましたので、
今日はネタバレしない程度に、戦ヴァル2のストーリー・キャラクターについて、
軽く感想を述べたいと思います。
但し、メイン・ストーリーは一通り見ましたが、
クラスメイト関連のイベントをすべて見たわけではありませんし、
クリア後にもなんかオマケなモノがあるかもしれませんので、
それらを見終わったら、感想が若干変わってくるかもしれません。
戦ヴァル2のストーリーですが、全体のテーマはヴァルキュリア…ではなく、
「人造ヴァルキュリア」に主軸を置いています。
ある意味、「戦場のヴァルキュリア」ではなく、
「戦場の人造ヴァルキュリア」にしたほうが相応しかったかもしれません。
前作では、前半はヴァルキュリア人とあんまり関係なかったが、
後半では、敵陣のヴァルキュリアであるセルベリア・ブレス大佐と、
味方のヴァルキュリアのアリシア・メルキオット軍曹の二人の、
最強の存在であるヴァルキュリア人としての対照的な生き様、
そしてその周りの人々の思想や態度などを通じて、戦争・戦場を描いていました。
今作では、最初から軽いノリの学園モノのストーリーでしたが、
割りと早い段階で人造ヴァルキュリアとヴァルキュリア人が出てきました。
しかし、前作の二人のヴァルキュリア人は何れも存在感が大きかったのですが、
今作の人造ヴァルキュリアは感情・思想がなく、
まさに無機質なあやつり人形…のような扱いになっていまして、
人造ヴァルキュリアの中にキャラクターの個性というものがないのですね。
ラストに近いところで、死ぬ直前に正気に戻った某人造ヴァルキュリア人が居ましたが、
それまでにそのキャラクターに関する掘り下げもあんまり無く、
やっぱり印象が薄かったのです。
戦場の人造ヴァルキュリアも、前作のように、
プレイヤーを阿鼻叫喚の地獄に落とすような圧倒的な力を見せつけることなく、
「ちょっと強い兵士」しかないので、戦場の中の人造ヴァルキュリアも存在感が薄い。
それよりも、改造されていない敵の将軍のほうが強かったりしますし…。
その一方、一人だけ生粋のヴァルキュリア人が登場しますが、
精神年齢が幼いので、思い・理念・葛藤などはあんまりなく、
そういう意味では、前作のセルベリアちゃんとアリシアと比べたら、
やや薄味なキャラクターになっています。
このヴァルキュリア人も何回か戦闘に参加するのですが、
何れも戦場の中…ではなく。アニメシーンで見せているだけなので、
戦う相手を吹き飛ばしても、
「これはス◯パ◯サ◯ヤ人だね」くらいの感想しか抱きませんでした。
そういう意味では、今作のヴァルキュリア人にしても、人造ヴァルキュリアにしても、
戦場の中でも、戦場の外でも、前作ほどの存在感・インパクトがありません。
これはハードウェアを変えたから…ではなく、描き方の差…のような気がします。
前作のヴァルキュリア人は悲しみ・哀れみ…のような感じでしたが、
今回のヴァルキュリアも人造ヴァルキュリアも、そういう感情が出てきません。
本来なら、人造ヴァルキュリアはヴァルキュリア人よりも可哀想けどね。
ちょっと話変わります。
前作では、イサラやセルベリアちゃんなどの人気キャラが戦死するのですが、
今回もやっぱり主要人物の中の人気キャラが死んでしまいます。
前回同様、突然死でした。
前触れがなく、後でその死を悲しむシーンも薄かった。
ストーリー上、死ななければならない理由も無かったし、
正直なぜ死なせたのは良く分かりません。
この部分はもうちょっとプレイヤーに媚びても良いと思います。
理想の形として、良く言われていますが、ストーリーを分岐させるべきと思います。
「ボクが考えた正しいシナリオ」をプレイヤーに強制するではなく、
複数のシナリオを用意して、プレイヤーの腕や選択によって、
未来が変わる…ようにすることですね。
これはゲームのようなインタラクティなコンテンツの優位性ですし、
小説や漫画、テレビドラマのような一方通行のコンテンツと違うところですね。
なんというか、「コレは変えられない運命」と決めつけられるのは、
やっぱりあんまりいい気がしません。
なんというか、理不尽だよね。
とは言え、別にテーブルトークRPGや欧米RPGのように、
無限の未来と可能性までは要りませんが、
「一本だけ」だと、やっぱり不満が出やすいですね。
次に、ヴァルキュリア人・人造ヴァルキュリア人以外のメインストーリーについて。
ストーリーミッションのラインナップを見る限り、
もう一つの話の主軸は「落ちこぼれのG組をまとめて行く」のですが、
残念ながら、この部分もうまく描かれているとは言い難いのですね。
展開としては、委員長のアバンがクラスをまとめていく…ハズなんですが、
なんかの衝突や対立を解消していくとか、修羅場を乗り切ったとか、
そういうストーリーがあるわけではなく、学内の模擬戦を勝ち抜いたら、
いつの間にG組は落ちこぼれじゃなかった…のような展開です。
前作では、第七小隊の中に衝突があり、
ウェルキンは知恵でそれを解決しに行ったけどね。
次は、キャラクターについて。
まず主人公のアバンとヒロインのコゼット、そして相棒のゼリの三人です。
主人公のアバンですが、前作のウェルキンは世間の常識で見ると変人…でしたが、
それと比べたら、今回のアバンは制作陣の言うとおり、「バカ」ですね。
ただの「バカ」ではなく、いわゆる「熱血バカ」に分類されると思います。
頭は良くないが、それ以外の部分はほぼテンプレート通りのいいヤツです。
まあ、なんというか、ハートフルなやつですね。
アバン自身のストーリーは、基本的に「兄」と関連しています。
その兄は学校の中で消えた理由を探して行っている…のが本筋の一つですが、
この本筋を多方面から描いているわけではなく、
結構スイスイと、何回かの短いイベントであっさり判明の感覚が強い。
そういう意味では、ちょっとタメが足りないのような気がします。
今作は作品の性質上、
主人公のアバンは色々なキャラクターのパイプ役…のようになっています。
基本的に各イベントでは、他のキャラクターが主役で、
主人公のアバンは傍観者…までいかなくでも、協力者の立場に成っています。
「(プレイヤーの分身である)アバンが居るからこんなことが出来た!」
感があんまりないのは、ちょっと残念なところです。
そういう意味では、居ても無くてもあんまり変わらない、存在感が薄いのですね。
ヒロインのコゼットについてですが、
コゼット自身はちょっと天然ボケでドジっ子なところ以外では、
ほぼテンプレート通りの普通の良い子です。
逆に言うと他のクラスメイトと比べたら、
残念ながら尖っている部分はあんまりないのですね。
それゆえ、あんまり目立たないし、人気も出にくいようです。
前作のアリシアはパン屋になるのが夢で、ストーリーの中にも、
パンを焼いたりするような描写があります。
今回のコゼットは医者になるのが夢ですが、
流石に、休憩中に敵兵の人体解剖を始めるとか…は流石に出来ませんので、
この設定はちょっと生かしにくい…ような気がします。
う〜む、負傷しているアバンなどの主役級を懸命に看病したり、
誰か「コゼット命」の男子生徒がコゼットに診てもらうためにワザと怪我したり、
「男子生徒の中では人気が高い」のような、
ヒロインとしての貴重さを高めるような演出があったほうが、
プレイヤーからもより人気を集めれるような気がします。
アバンと同様、他のキャラクターを繋ぐパイプ役も若干ありますが、
前半の学院コメディーの部分ではボケ役を主に務めています。
後半では、戦場の中で両親を失ったトラウマと、それを解消していく話になります。
トラウマを背負った背景やその症状も、戦場の無常さを表していますので、
結構センスがいいと思いましたが、どうも演出の部分に押しが足りないのですね。
う〜む、なんというか、設定そのものは優れているのですが、
それを見て、思わず「ぐ〜っ」と来るものが足りません。
いわゆる泣きゲー的なノリまでに行かなくでも、
もっとヒロインの独白を使ったり、ヒロインの夢の中の回想を使ったり、
「ぁぁ、なんて可哀想な子でしょう…」とうっすら涙目にさせて欲しいのですね。
前作もそうだったのですが、どうも戦ヴァルシリーズはあっさりし過ぎて、
そういう情を訴えるところがちょっと足りないような気がします。
あとさ、メインヒロインなんだから、主人公とイチャイチャさせてください。
他のクラスメイトよりも主人公との触れ合い(ラブ的な意味で)が少ないのは何事じゃ〜
次に、主人公の相棒のゼリ(ダルクス人)について。
差別されている、英雄志望の美青年です。
頭が良くて、ちょっと性格が悪いところがありますが、根はイイやつ。
但し、合理さを求めるばかりに、周りから見たら、
ウェルキンほどではありませんが、「変人」と思われているかもしれません。
夏のプールイベントで着た「泳ぐスピードに最適化した水着」はスゴすぎです。
英雄になるために、冷酷なところもありますが、
それもバカなアバンに感化されてしまって、
最終的に才能もメンタルもいいヤツになりました。
個人的に、主役の三人の中で、もっとキャラクター作りが成功したと思います。
アバンやコゼットよりも「人としての成長」の部分が分かりやすいし、
「なるほど!」っと納得できるものがあります。
個人的に、今回のストーリーは青春ドラマ…のような感じなので、
ゼリはもうちょっと青春をやっても良かったと思います。
具体的に言うと、某キャラと仲良く成そうならば、良い思い出を作ってください…。
ありがちな展開ですが、その某キャラが悩んでいる時とか、
相談を持ちかけられるベントがあっても良かったと思います。
主役の三人以外に主要キャラクターと言えば、
士官学校側の学長、先生、ユリアナ様、エイリアス、科学者、
反乱軍の4人(父+子3人)、そしてクラスメイトらですね。
クラスメイト以外は、基本的にメインのストーリーが進めば、
ストーリーの中に出てきて、なんかしゃべったりする…のような感じですね。
キャラクターの掘り下げについては、何れもそんなに深い描写がありません。
その中で、比較的にキャラクターが強調されたのはユリアナ様とエイリアスですね。
何れもメインストーリーに関わりますので、
あんまり深く感想を述べませんが、
1キャラ一言コメントさせて頂きます。
- 学長
- 勘違いされるかもしれませんが、(ある意味で)あなたは漢です。
- 先生
- なぜ最低なのか、説明してください
- ユリアナ様
- もっともっと!(いろいろな意味で)
- エイリアス
- 精神年齢あと3歳くらい上がったら、いろいろ変わるだろうな。
- 科学者
- 戦ヴァル3もヨロシク!
- 総帥
- あっさりでしたね。空気読もうぜ。
- バルドレン
- 強かった。どんどん豪華になっていくハマーン様ぽい目の周りのその金色の飾り(?)は変と思います!
- オドレイ
- 弱かったね!スクワット出来ないからだよ。
- ディルク
- もっとなんかしゃべて下さい。
クラスメイトに関しては、恐らく今作もっとも評価されている部分です。
なんとなくですが、このようにボリュームを分散させて、
「広く浅く」したのは、同じくセガの「龍が如くシリーズ」の影響のような気がします。
私はヤクザモノが苦手なので、龍が如くは「見参」しかやっていませんが、
スクリプトエンジンを作ってしまえば、このような「広く浅く」ストーリーは、
分業に最適…のような気がします。
縦長い一本の太いストーリー作るよりも、横で複数の細いストーリーを併存させれば、
Aさんがクラスメイト3人担当、
Bさんがクラスメイト5人担当…のような作り方が可能に成っています。
担当者の間に、ストーリーに矛盾が生じさせないための細かい調整をしなくでもいいし、
シナリオの数・量の調整は簡単ですし、
経験が浅いシナリオライターも、割りと簡単に仕事を参加出来ます。
そうですね、イメージで言えば、
一つの大長編ではなく、短編集の集まり…のような感じになります。
これは「龍が如く・見参」の時で感じていましたが、
このような作り方は、少ないコストでゲームのボリュームを増やせれますので、
製作者側にとっても、ユーザにとって、コストパフォーマンスが良いのですね。
最近のゲームと言えば、ドラクエ9も同じく、
大量のサイドストーリーを用意する形でユーザに満足させています。
これは最近のゲームの流れの一つだと思います。
長編のストーリーだと、好き嫌いがハッキリしてしまうのですが、
個性が異なる短編集なら、数十本用意したら、
その中から高確率で満足出来るモノと出会えるのですね。
それによってプレイヤーの満足度も高まることが出来ます。
ちなみに、私はクラスメイトのストーリーを半分ほどしか進んでいませんが、
その中で特に気に入ったのはマガリの話ですね。
ネタバレに成ますので、中身については触れませんが、
職業柄、「教育」に意識することが多いので、
マガリの話は(特にIT時代の)子供の教育にも良い…のように感じています。
しかし、まあ、最近の世代では活字離れ…っと言われていますので、
むしろ逆の心配をすることが多いけどね。
しかし、クラスメイトのイベントについて、
これでも大幅に増量したと思いますが、ちょっとモノ足りません。
考え方によっては、前回と同じくらいのシナリオの分量を数十人に分けていますので、
一人一人がとても薄いのですね。
戦ヴァル2のアカデミーパート(アドベンチャー部)のシステムについて苦情を少々。
制約の中で頑張っていると思うのですが、
ドラクエのようにRPGの土俵に立ち、特にキャラクターのグラフィックを用意せずに、
ほとんどのストーリーをテキストで語っているなら良いのですが、
アドベンチャーの部分でADVゲームの土俵に上がっている以上、
最低限のラインを守るべきだと思います。
具体的に言うと、キャラクターの音声の絶対的な不足ですね。
ストーリーの進行中の他愛のない話ならまだいいのですが、
どう考えても重要なシーンなのに、全く音声がなく、
あるいはわざわざ一枚絵を用意したシーンでも無音だったり…。
なんかちょっとヘンです…はい。
日常シーンの中のでも、書かれていない無い「あ!」「お!」「やってやるぜ!」とか
頻繁に出てきたりするのも興ざめ要素ですね。
台本を確認したわけではないのですが、ゲームを一巡遊んだ感じでは、
ストーリーの中のテキストそのものは決して多くはない…っと思います。
それなら、やっぱりフルボイスして欲しかったのですね。
ちょっと話に戻ります。
基本的にストーリーの展開は、
ほとんどすべてキャラクターのセリフによって語られていましたが、
あんまりキャラクター達の内面的なところが見えてきません。
それゆえ、全体的に精神年齢が幼く感じちゃうところもあります。
もうちょっと何らかの形で、何を考えているかを明らかにしても良かったと思います。
アニメの部分ですが、前作のようなCGではなく、
アニメを外注で作ってもらっているようですが、
この部分に関して、何らかのマネジメントのミスがあるように思えます。
序盤のどうでもいいシーンの品質が良かったりするのに、
ラストに近づく(10月以降)と、どんどん絵が崩れて行き、
そしてラストシーンの前後が大きく崩れたり、
クライマックスのシーンが汚かったりするのは、
やっぱりなんだかな…っと思っちゃうのですね。
後、綱引きはヘンです!
さて、まとめに入ります。
実は前作も同じような感想を抱きましたが、
戦ヴァルシリーズの本質的な楽しさは戦場にあり、
戦車、歩兵、BLiTZなどはもっとも愛されるところです。
しかし、それは逆な発想もありまして、
もし傑作なストーリーがあったら、今よりもさらに広く評価され、
隠れた名作ではなく、名実通りの大作になるポテンシャルも秘めています。
個人的に、戦ヴァルのストーリーというのは、
「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」と感じています。
あくまでオマケであり、無くでもそんなに困らないのです。
なんというか、あんまり情緒を揺さぶられないのですね。
なぜそう思われている…かというと、理由は色々あると思います。
素材が良いのですが、それの下ごしらえが不十分だったり、
調理が不十分だったり、調味料が不十分だったり、
そもそも圧倒的にボリュームが足りない…かもしれません。
前作もそうだったのですが、
シナリオ台本は、多分結構薄かった…ような気がします。
例えば試しにマガリの全シナリオを起こして、カウントしてみました。
アバン:まいったなー歴史の宿題がよりによってレポートなんて。
……(ネタバレになりますので中略。全部で95行くらい)……
ウェルキン:もちろんさ。改めてよろしく、マガリ。
文字数は約2,700文字、A4用紙2〜3枚くらいですね。
ショートストーリーにしても、かなり短いほうです。
ちなみにその中で音声があるのは約三分の一。
ボリュームの少なさで、伏線を用意出来なかったり、
伏線を回収出きなかったり、色々と語りつくせないところが出たじゃないかと思います。
それゆえ、プレイヤーの脳内補完を頼らざるをえない分が多い。
素材がいいだけに、本当〜に、モッタイナイですね。
戦ヴァル2のストーリーは高評価を得られるようなものではありませんが、
やる気が失うほど酷いモノでもありませんので、
点数を付けるなら60点くらい…じゃないでしょうか?
ちなみに、個人的に前作は70点くらいで、前作よりも評価が低くなっています。
ヴァルキュリア人、ダルクス人、ラグナイト、
戦車、兵器などの世界観は非常にいい感じなのに勿体無い…ですね。
それに加えて、「物語」と「人物」の良い素材を生かすための
演出・セリフが良かったら、隙の無い、素晴らしい作品になったと思います。
戦ヴァルシリーズの中で一番物足りないのはやっぱり「語り」じゃないでしょうか?
ここらへんは、次回作に期待したいところです!