ネギといっても日本全国何十種類もあるので,十派一からげに葱と言っていいものかどうか,かなり疑問を感じる。
群馬では下仁田葱が有名だが,こちらはぶっとくて甘くて,九条葱やわけぎに比べると,葱の根っこの熟したお化けみたいなものである。しかし,これはローストしても,味噌焼きにしても,煮ても,汁に入れても,それぞれに美味い野菜である。それだけで,一夜のおかずのすべてにすることができる。
一方,俗に東京葱などと言われる白葱も,地方によって,土によって,様々に味が異なり,それぞれに美味いと言われる。地元の子供の頃から食べている葱が一番ということなのかもしれない。自分の郷土の土の味,というものがあるのだろう。
京都では九条葱というトラッドな葱があって,そのDNAを保存して今に引き継いでいる農家がわずかながらある。葱の甘さ,辛さ,香り,歯ごたえ,みずみずしさ,それらの至高の融合が本物の九条葱だ。この九条葱を好きな人は多く,筆者などは,豆腐と生姜を付け合せにする葱のサラダが冷奴だと信じているくらいである。
九条葱はローカルな京野菜なので別格だが,全国に普及しているにもかかわらず,京都と地方での認識が異なるものに,春菊がある。春菊は,日本人の心である菊の香りの野菜である。しかし,京都を中心とする関西と,それ以外の地方とではどうも理解が違う。京都で鍋物をするとき,春菊は,九条葱とともに欠かせないものだが,地方に行くと,皿ものの彩りの一種にしか思われていないのではないかと思うほど出番が少ない。
京都の,地元の農家がそれなりに作った九条葱と春菊とがあれば,野菜など他になにもいらないという気になるほど,京都の春菊は,九条葱とともに,それぞれしっかりとした味を持っている。しかし,その味わいは,決して嫌味のあるものではなく,奥深く果てしなく広く,大地の味わいをスィートに知ることができるものだ。
京野菜の粋のひとつとして,京都市内の畑の春菊と九条葱を味わってもらいたいと思う。九条葱は,京都である。春菊も,京都である。京都の鍋には,九条葱と春菊。
そういえば,先日書いた「すき焼き」に関して,書き忘れていたが,春菊は,すき焼きに入れても大変に美味い野菜である。
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