秋も深まると,信州の小川に自生していたクレソンを想い出す。
昔,信州の山中をマウンテンバイクで走っていたら,紅葉の下の清流で,クレソンが束になって水面に揺れているのを見つけた。
野生のクレソンには,苺のような,昇り立つ高貴な揮発性の匂いがある。クレソンだけを山盛り食べたのだが,こんなに清くて美しい味覚の野菜があったのかと驚いたのを覚えている。脳天を突き抜けていく,透明で気高い香りだった。
都会のスーパーやレストランの皿の上のとは格段に違う野生のクレソン。軽井沢の山奥や上高地の清流で,ぜひ見つけてもらいたい。京都の北山にもあるかもしれない。