和歌山紀伊半島の南端,那智勝浦に「丸正酢醸造元」という,酢の生産販売の合名会社がある。ここでは,昔ながらの酢を樽で造っていて,その酢が滅法美味い。いつだったか,「不眠耐久紀伊半島一周ドライブ」に行ったときに見つけて,小箱一杯買ってきた。以来,時々送ってもらっている。
街のスーパーに流通している酢は,化学合成の酢が一般的で,そういった工業製品としての酢は,匂いを嗅いだとき鼻腔に刺激が突き刺さり,咳が出る。しかし,古来の手法でしかるべく造った酢は,そうではない。酸っぱいけれど,柔らかく,やさしいのである。
「丸正酢醸造元」では様々な酢が製造発売されていて,筆者のイチオシは,「那智黒米酢」。これはそのまま水で薄めて,蜂蜜を好きなだけ混ぜて,ドリンクにしても,まろやかに美味い。同醸造元には,日本酒から造った酢もあり,これはこれで,ほのかに甘くて丸く,日本酒の香りがかすかに残る。酢は,刺激物ではないのである。本物の酢は,人に優しく,健康に良いものだ。