大西洋・地中海産クロマグロ禁輸案を否決②

大西洋・地中海産クロマグロ禁輸案を否決②

「値上がりを回避できる」などというと,あたかも庶民の味方のような感を持つが,値上がり云々を論じる前に,そして,資源管理を言うならば,「消費と浪費の管理」を徹底するべきである。

下記を読むと,回転ずしや大手スーパーが確保するマグロの量が想像できると思う。ダイエーは全国チェーンだが,なんと来年度分の冷凍マグロを確保しているという。背後にはすさまじい大量の乱獲があるのだ。

こういったところで大量消費されるような,冷凍戻しのマグロ(形骸・抜けがら)を食すことを,まずは止めたらよい。冷凍マグロが美味いなどという馬鹿な妄信は即刻捨てるべきだ。

最近の回転ずしでは,軍艦巻きの上に,トンカツやコーンのマヨネーズ合え,牛の焼き肉やサラダなどが乗っていたりするのだが,これが結構いける。握りも,そういう変わり種のほうが,冷凍戻しの魚よりはよほど美味い。海老フライと称してオキアミのフライをのっけたものもあったが,美味かった。

回転ずしで回っている寿司の中で一番不味いのは,マグロや鯛,カンパチなどの「中・大型魚類の冷凍戻し」であるから,回転ずしに行けば,もっぱらこういう変わり種を食べるようにしている。

すしの概念を広義で捉えると,どんなバリエーションもありなのだから,いっそ「冷凍魚を使わない」とでも宣言して,資源保護に寄与すればどうか。
「脱冷凍天然魚」を謳って本気で寿司の新ネタを追求すれば,もっと美味い大衆食堂になり,それこそ庶民の味方になるだろう。

クロマグロ禁止否決、築地の業者「ホッ」
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100319-OYT1T00684.htm?from=nwla

 カタールでのワシントン条約締約国会議で、クロマグロの禁輸提案が否決されてから一夜明けた19日朝、東京・築地の市場などでは、「ひとまずホッとした」「これで値上がりを回避できる」などと胸をなで下ろす業者の姿がみられた。

 だが、乱獲で漁獲量が減少する中、“禁輸論議”はいつ再燃してもおかしくない状態。国内マグロ漁業者からは「今回のマグロ騒動を教訓に、徹底した資源管理に取り組むべきだ」という声もあがっている。

 ◆築地◆

 鮮魚店が並ぶ築地の場外市場。ガラスケースの上にアイルランド産クロマグロの大トロ(1キロ1万5000~1万6000円)を置く店では、男性店員が「マグロ見てってよ」と威勢の良い声をかけていた。「ひとまず安心。(禁輸措置で)値が上がるようなことにならなくてよかった」と、店員は安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 買い付けに来ていた東京都葛飾区の飲食店経営の男性(49)も、なじみの鮮魚店の店員らと「よかったね」「ホッとしたよ」と言葉を交わした。「可決されると思ってたから拍子抜けした。お客さんにも『マグロはなくならないよ、大丈夫』と話したよ」

 一方で、大量消費や乱獲のあり方を反省する関係者も。市場内で海鮮丼を販売する「菅野商店」取締役の飯島浩之さん(45)は、「禁輸になるのは困るが、日本の食文化を守るためにも、消費に関する一定のルールが必要」と話した。

 ◆小売り◆

 クロマグロが売り上げ全体の1割を占める回転ずし店「すし銚子丸」を運営する「銚子丸」(千葉市)の広報担当者は、「否決されて一安心だが、また今後も同様の議論は起こりうる」と語る。19日から、奄美大島直送のクロマグロを格安提供するキャンペーンを全69店舗で始め、「どのような事態になっても対処できるよう、様々な仕入れルートの開拓に取り組んでいきたい」という。

 販売するマグロ全体の約2割をクロマグロが占めるスーパー「ダイエー」(本社・東京都江東区)のIR広報部は、「(委員会では否決されたが)本会議がまだ残っており、安心できない」と慎重な姿勢を崩さない。「来年度分のクロマグロは冷凍物を確保済みだが、万一、禁輸になれば再来年度以降どうなるかわからない」と話す。

 ◆漁業者◆

 全国有数の遠洋マグロ漁船基地の宮城県気仙沼市。

 遠洋マグロ漁船の漁労長、小野寺剛さん(62)は否決の吉報にも、「国は気を引き締めてほしい」と厳しい表情を崩さない。

 マグロを一網打尽に乱獲する海外の大型巻き網船が出現したのは10年ほど前だ。乱獲への批判から漁業制限も厳しくなり、20年前には1隻あたり1日約3トンあった漁獲量は、今では1トン以下に減った。かつて一般のサラリーマンの2倍あったという漁船員の給料も、今は半分になったという。「我々は漁獲枠を厳格に守ってきた」と話す小野寺さんは、「今回の議論を招いたのは、(違法操業の海外の船から大量のマグロを購入する)輸入管理の甘さ。同じ提案を出されないように、国はしっかり管理してほしい」と注文をつけた。

(2010年3月19日14時43分 読売新聞)

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