蛤(ハマグリ)
三河や桑名のハマグリが有名だったが激減した。評価の高かった江戸前は完全に絶滅状態だそうである。今は,房総半島や鹿島のものが美味い。アサリもそうだが,海が異なると味がかなり違う。国産で,太平洋側のものが美味い。昔はバチと呼ばれたチョウセンハマグリは殻が碁石の白になるもので,名前と違って太平洋側にも分布している。現在国内で流通しているのはほとんどがシナハマグリである。
ハマグリは鮨種にするには煮蛤にする。ツメが美味いかどうかも大きな影響を及ぼす。従って,煮蛤は素材の質の上に,さらに店の調理の腕前にかかっている。
他は,鮨の合間やその日の締めに,潮汁にするのが一般的だが,これもシンプルが一番である。塩と薄めの昆布出汁だけで,三つ葉などは入れず,白く濁った汁に貝が一つ入っているだけで良い。青菜の匂いは,本当に新鮮で美味いハマグリを殺してしまう。煮すぎては駄目で,熱が通ってパカッと開いたその瞬間に供する,瞬間技が求められる。