鱧(ハモ)
おそらくこれが,江戸前アナゴの関西進出を阻んでいる最右翼かと思われるのだが,鱧は関東では全く見られない。細かい骨があるので,ハモの骨切りという独特の技術を要する。骨切りは,皮を残して身を細かい骨ごと,約1mmの幅に薄く切っていく。身が全て皮に付いたままで湯に落とすと,皮が縮んで身が一斉に開いて華やぐ。氷で冷やしたところを梅肉か酢味噌で食べるのだが,その料理法を「鱧落とし」という。これをそのまま握り鮨にしても良い。昔は大阪湾で揚がったものを京都に運ぶ道中で,骨切りをしていたらしい。夏の京料理として有名ではあるが,実は,ハモは淡路島で新鮮なのを食べるのが最高である。厚い皮の弾力と,真っ白くて瑞々しい身が見事な対比を示す。冷酒とともに,梅肉をちょっとつけてモグモグ食べていると,淡く繊細な味わいの中に大海原の百花斉放を感じて,一匹分くらい軽くいけてしまう。真夏の夜のハモ。