鮨の五大基本要素-(2)山葵(ワサビ)

(2)山葵(ワサビ)
 山葵の本来の効用は,酢や塩と同様に消毒である。しかし,その香り立つ味わいは,もはや鮨にも刺身にも欠かせない。職人の符牒ではサビという。
 伊豆の天城山の清流で育ったものが最上である。緑が鮮やかで大ぶりなものが良い。鮫の皮でおろすと,山葵はほんのり甘く,上質の香りが立ち昇る。山葵は金属と電荷反応して甘みが消え,辛みが刺々しくなるので,金属のおろし金は禁物である。ただし,合わせるものによっては,切り立つ鋭さをかもし出す,金属でおろす山葵のほうが良い場合もあるので一概には言えないところが難しい。握る毎におろしたてを使わなくてはいけないのは言うまでもない。
 刺身を食べるときは,切り身の上に山葵を適量乗せて,身の下のほうを醤油に浸して食べる。そうすると,山葵の持つ甘さと香りが失われずに,刺身と醤油との調和に華やかな彩りが添えられるのだ。刺身醤油に山葵を溶くと,せっかくの香りが消えてしまうので,これは無知で無粋で下品な食べ方である。
 最近増えているビニール袋から搾り出すワサビは偽物が含有されていて不味いので避けたい。外国のホースラディッシュと化学薬品でできているような,水で練る乾燥粉末ワサビは論外である。

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