鰆(サワラ)
大きめのものは脂が均一に身と混じり合っていて,握り鮨でも,刺身でも,塩焼きにしても,西京漬けにしても最高である。春の魚ということになっているが,実は夏から秋にかけて脂が乗ってきて美味い。1mくらいのが握りには最高で,脂がほんのり甘く,軽く舞うように喉の彼方に消えていって,後には何も残らない。近年かなり減ってきているので,鮨屋で瀬戸内播磨灘の最上のものに出会うと,他のものには目もくれず,鰆だけに集中する。刺身と握りを堪能したら,頭とカマと腹のあたりを塩焼きにしてもらう。そして,残りの尻尾側半分は塩にして家に持ち帰り,伏見の酒でのばした京都の白味噌(砂糖や味醂は入れないほうが良い)に漬け込み,2~3日後に焼いて食べる。タイと並んで,それだけで全てが満ち足りていて完結する魚である。関東ではあまり食べられないようであるが,筆者は子供の頃から一番の好物だった。魚のプリンスである。