各種鮨種について-玉子焼き

玉子焼き
 鮨屋に入っていちばん最初に玉子焼きを注文し,その店の腕を知るなんてことがよく言われたが,最近は卸市場でも結構美味い出来合いの玉子焼きを売っていて,自分の店で玉子を焼いている鮨屋がまず少ない。そして,もしその店の自家製であったとしても,その店主の好みでやたら甘辛く濃くしたり,あるいはすりつぶして混ぜる魚や小海老を多くして,なかば蒲鉾のように仕上げたりしているのもあり,何が良いかは百家争鳴。
 玉子の味付けや焼き方と,他のネタの鮨のセンスはあまり関係がないように思う。もちろん,美味い店は玉子焼きも大抵美味いが,玉子焼きが美味くても鮨飯が駄目な店もある。筆者は醤油と砂糖と出汁だけを中心としたものが好きである。甘くて美味い玉子を焼く店では,いつも最後のお茶といっしょにデザートとして食べている。玉子焼きは,その店の主人がブレンドした,それだけで100%の一品である。醤油など付けて味を変えずに,そのまま味わう。

 さて,最期に残った生姜を一片食べながら,ちょっと苦くて渋い熱々のお茶を一杯。ああご馳走さまでしたっと。その瞬間,支払いに,「おあいそ」と言うのは,お茶で一丁「上がり」になった客に最後の「愛想」を振りまけ,という職人の符牒なので,客が自ら使うのはとても変な話である。しかし,これもインチキ粉山葵を醤油に溶くのと同様に,無知で無粋な人たちが普及させてしまった悪しき習慣である。粋に行くならガリのようにビシッと辛口に,毅然として渋く一言,「勘定!」と言おう。

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