京都の鯖寿司(さばずし)
鯖寿司といえば京都。京都の寿司といえば鯖寿司。これは,江戸前の握り鮨とは全くの異文化である。大阪のバッテラとも違う。脂の乗ったたっぷりとした厚みの小浜の鯖を,ひと塩にして一夜置き,表面を酢でしっかり締めて中身はレア,はんなり甘いめの寿司飯とともに棒寿司にして,竹の皮で包む。京都の家庭ごと,店ごとに色々流儀があって,それぞれに味わいが異なる。一流の京都の鯖寿司は,ただそれだけで,江戸前握り鮨のすべてに対抗する至福の極みに至る。単純にして濃厚な一本(鯖一匹の片身分)の半分も食べるとおなか一杯で大満足になる。京の都の秋祭りの日,昼下がりにただひたすら鯖寿司だけに立ち向かい,鯖の脂肪と絶妙にバランスする甘酢に,まったりと浸る。鯖寿司と宇治茶,ちょっと甘酢生姜,それだけ。他には何もいらない。窓から紅葉が一枚ひらり舞い込んで,遠くに祭囃子が聞こえる。おおきにぃ。