京都ラーメンLegend–幻の熊野寮ラーメン

 その昔,学生運動で有名な京都大学熊野寮の東側に,屋台が出ていた。百万遍の京都情報大学院大学から歩いて15分くらいのところ。
 京都式で独特の美味いラーメンだった。豚骨と鶏がらを絶妙な具合にブレンドしていて,紅しょうがを乗せる。日によってチャーシューの出来具合が異なり,若い主人が,「今日はチャーシューの出来が最高」と言う日は,とろけるような三枚肉が,麺とからんで踊りながら溶け合っていく。長時間じっくりと煮た三枚肉は脂身がトロトロで,赤身は繊維を少々感じさせながら,粉々に砕けてスープと麺と,三位一体に交じり合って,ほんわり柔らかく喉の奥に消えるのだ。京都ならではの「はんなり」と,京都の「裏こってり」の,見事な融合であった。
 80年代初頭に火事になって,消えてしまった。

京都のラーメン考

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