京都情報大学院大学のある百万遍から東へ10分,京大農学部の門の前,吉田山の登山口に,夜は屋台が出る。
昔から同じ経営で,味も変わらない。うどんとおでんと焼き鳥の店だ。この焼き鳥が,関西一ではないかというくらい,イケてる。せせりという,首の周りの肉を串に巻きつけて,甘い目のタレで薄味に焼き上げるのだが,安い材料でたいしたことはしていないくせに,凡百の焼き鳥を蹴っ飛ばすほど完成されているのである。うどんも京都式の汁もろとも飲み込む,あの淡さである。おでんは時間によって出来具合が大きく異なるので,鍋の中をよく観察して,頃合の良いものだけを選ぶようにする。
暖かい季節には,とりあえずビール,せせりが焼けるまでにおでん少々,せせりを食べたら締めに昆布かきつねうどん。冬になると,テントの中でストーブが三台焚かれて,おでんが暖かくて熱燗が美味い。しみじみと京都の夜のもうひとつの側面を感じることができる。
日中,少しでも雨が降ると,その夜は店を出さない。昼間雨の降った日には,行っても振られることになる。