ますたにラーメン–京都ラーメンLegend

ますたにのラーメン,並。

 44年の伝統と実績を誇る京都コンピュータ学院の白河校(もとの浄土寺校舎)を北上すること5分。銀閣寺道の交差点の西北に,50年以上の伝統と実績を誇る「ますたに」がある。店の前には桜の木があって,春は美しい。
 この「ますたに」を食べずして,京都のラーメンは語れない。麺を盛った後に,どんぶりに豚の背脂でを金網で散らすという技法はここが発祥と思われる。親父の麺の取り方も一流で,一回でぴったり一人前を網に掬ってどんぶりに盛る。どんぶりに盛ってから箸で麺の量を調節するなんてことはしない。プロなのである。昔から,店舗の規模の割に従業員が多く,皆がのんびりと接客しているように見える。そのせいか,ベテランのおばちゃんは愛想が良く,接客が上手い。
 チャーシューとメンマ,そして多い目の葱が盛られて,背脂が散りばめられている。見た感じは脂っぽいのだが,食べると存外あっさりしている。どこにも尖がった個性がないのだが,すべてが上手く調和している。あまりにも丸く収まりすぎていて,一回食べたくらいでは,その完成度は理解できないと思う。なんとなく美味いなあ~と思っているうちにスープまでも無くなってしまっていて,「あれ,もう無くなったのか」,と思う。そして,美味いもので満腹になって,とても幸せになったんだけれども,なにか物足りないような,なにか後ろ髪を引かれるような想いで,帰ることになる。そこが凄いところで,何杯食べても飽きないような,胃さえ満杯で無ければもう一杯食べたいと思うような,絶妙な加減に出来上がっているのだ。
 何が突出して他の店に勝るのかというと,指摘しにくい。麺もチャーシューもスープも,もっとインパクトのある店は他にいくらでもある。しかし,まったりと,それでも適度にシツコク,適度に濃いィ味で,柔らかく歯に残らない麺が,舌を撫でて喉の彼方に消える。改良の余地など微塵もない,すべてが綺麗にまとまって完結している,正当派保守本流完成形京都ラーメンである。
 京の都の昼下がり,紅葉の季節のやわらかな陽射しに包まれて,おおきにぃ~,の声を聞きながら帰途に着く。嗚呼,京の都,表はんなり。

京都のラーメン考

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