屋台から店舗への移行–京都ラーメン

 屋台で成功したラーメン屋さんが,店を構えて開業することがある。多くは,それでより洗練された味になるのだが,「屋台のときのほうが味が良かった」,とか,「店を構えて味が落ちた」などと言う人も多い。
 屋台と店舗のラーメン調理の違いを観察していると,水の使い方が大きく異なることがわかる。道路には水道がないので,水はどこかから持ってくるしかない。その水を節約するために,屋台では麺の湯で汁でスープを薄めたり,バケツに張った水でどんぶりを洗ったりなどして,水を徹底して節約している。
 麺を茹でる鍋の湯が,すなわち,かん水や打ち粉のたっぷり溶けた湯が,客の数に比例して消費されていく鶏がらや豚骨を茹でてスープを取る鍋に,ふんだんに追加される。
 加えて,どんぶりを洗うバケツと食器洗剤をすすぐバケツの間で,どの程度すすがれているかで,下味も変わってくるかもしれない。
 一方,店を構えると,麺を茹でる鍋とスープの鍋は,湯が交じり合うことがほとんど無くなる。どんぶりを洗うのも,洗剤が全く残らない程度にすすがれて,綺麗に洗われるのだろう。
 もうひとつは,冷蔵庫の有無である。営業時間中,素材を保存するのに,屋台で冷蔵庫を持って来ている店は稀である。多くはクーラーボックスか,せいぜい発泡スチロールの箱で,店舗に普通にある電気冷蔵庫・冷凍庫があるわけではない。
 これはすなわち,素材の足の速さの違いになる。かぼちゃは腐りかけが一番美味い,と,誰かが言ってたらしいが,屋台ラーメンの麺もチャーシューも,寸前が一番美味いのかもしれない。
 店舗になったところで,レシピや,塩加減が変わるとは思えない。屋台から店舗へ移行したラーメンの味の変化は,どうやらこのあたりにあるのではないだろうか。

京都のラーメン考

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