日本の味が危ない。鮨が危ない。
まず米。
日本産の芸術品であるコシヒカリは,今やアメリカでも中国でも台湾でも作られている。日本がWTOに加盟してから,消費量の10%を輸入しなくてはならないようになった。その結果,外国産のコシヒカリがわが国でも流通している。しかもそれら外米は廉いため,外食産業や会社・工場・学生食堂にどんどん導入されている。
一方,高価な国産米は売れなくて困っている。日本政府は,米など食料を海外から輸入し,海外へは工業製品を輸出して,合理的に日本社会を経営していけば良いと考えているらしい。 しかし,輸出して外貨を稼いでいる主要企業は国内30社に満たないのである。この工業製品輸出力が,いつまで継続発展できるのか,実は誰もわからない。わが国の若年層を見ると,わが国の工業力・技術力の将来は,決して楽観はできるものではない。若者の理系離れ,小学生の数学能力の低下,わが国の技術立国としての未来は明るくはない。そんな日本で,食料自給率をこれ以上下げることが正しいのかどうか。
日本は,先進国の中で食料自給率が最低で,39%である。アメリカやフランスでは100%を遥かに超えており,ドイツで90%,イギリスでも70%程度である。39%の食料自給率というのはあまりにも低い。
そして,米離れも進み,わが国の国民一人当たりの米の消費量は60年代に比べると半減した。将来,主食である米の輸入自由化が成された場合,日本の食糧自給率はさらに減り,日本の本来の米の味が消えていくことになるだろう。そして,鮨の味も変わることになるだろう。否,鮨の味が雲散霧消する。
すでに,外米に,スモークサーモン&クリームチーズや,海老天麩羅を乗せて機械で握ったSushiが,ベルトコンベアの上で廻りながら,今や世界を席巻している。日本の鮨は絶滅危惧種なのだ。