各種鮨種について-鮑(アワビ)

鮑(アワビ)
 貝はあまり移動しないからか,産地が変わるとかなり味が異なる。三陸のアワビが世界一で,干アワビを戻して煮る広東料理のために,香港からも大量に買い付けに来るそうである。二番目は伊勢である。6月あたりから夏にかけて,美味くなってくる。雄貝,雌貝と区別されているが,実際は同種の雄雌ではなく,別物なのだそうだ。一般に雄貝といわれるのが,一番美味い黒アワビである。
 アワビは,様々に可能性の広がる,とても奥深い食べ物である。活きの良いのをそのまま握っても刺身にしても,磯の香り高く,噛むほどに旨みが湧き出てくる。締めてから後は,時とともに自己分解の酵素によってイノシン酸が増加し,さらなる滋味が溢れ出す。煮たり,蒸したりしても大変美味い。大根と煮ると柔らかくなる。締めた後どれくらいの時間で熱処理するかが腕の見せ所なのだろう。
 アワビの肝は,キモと言うよりワタと言うほうが正しい。産地による差異に加えて個体差も著しい。そのまま生で,山葵と醤油で食べても,さっと湯にくぐらせてポン酢で食べても良い。また,焼いても美味い。生の肝を軍艦巻きにすることもあるが,水分が多いので海苔がすぐに湿ってしまい,あまり感心しない。気持ち悪がって肝を食べない人がいるが,そういう人と一緒に鮨屋に行ったら,美味いところは独り占めしよう。

comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*