漢字の伝来は応神時代と言われていますが、実はもっと古いはずです。わが国最古の漢字は、志賀島(博多湾)から出土の金印に書いてある「漢委奴國王」で、1世紀半ばのことです。この王サマまさか意味も知らずに、もらって喜んだとは思えない。後漢の光武帝からみとめられたことはわかったはずです。しかし漢字を覚えるのは現在でも難しい、普及するまでには長い長い年月が必要だった。普及に貢献したのはきっと「紙」の伝来でしょう。この安価な記憶媒体こそ、わが国の文化向上の立役者です。聖徳太子は紙にお経の注釈、すなわち漢字で自分の考えを陳述した、を書いているというのだから、伝来はそれより百年は前でしょう。
ちなみに「かみ」という語は訓読みではなく、「簡」の「カン」という字音が転じたものというのが定説であるそうな。「紙」が中国から渡来したものであるからには、漢語が入る以前に和語が存在しないというのは当然ですね。