☆歴史の中の天文こぼれ話

宇宙からのメッセージ―歴史の中の天文こぼれ話


 非常にマニアックな本です。著者は国立天文台名誉教授でもともと太陽の専門家ですが、定年退職後に「古天文学」という新ジャンルを開拓したというパイオニアです。一度お会いしたかったけど、数年前に亡くなられました。
 ヒミコ日食あれこれ、信長と朝廷の天文官との争いなどなど面白い話があります。また古代中国では火星は不吉な星とされ、その運行は注目されていたそうです。そのなかで重要なのは、漢の高祖・劉邦の没年BC195年の天象でしょう。この年火星は年初から7月まで,てんびん座でうろうろして,8月初にアンタレス最接近します。病に伏した劉邦は「四月甲辰に崩じた」と記されていますが,この日は干支をもとにして求めると6月1日に当たります。漢の歴史官・天文官にとって初代皇帝の死には天からの予告があってしかるべきと考えたのでしょう。
 ところがその15年前(BC210年)にも火星は似たような運動をして、なんともっと大物が亡くなっているのです。その名は、始皇帝、ただし『史記』には没年の前年 始皇三十六年(=BC211年)の天象と書かれています。これは単なる記載ミスなのでしょうか?それとも現王朝の創立者と前王朝の暴君とが同じ天象のもとに亡くなったとは書きにくかったので司馬遷は故意に1年ずらしたのでしょうか?・・・この部分は著者ではなくcastorの推測。

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