世界天文年6

 数値計算には必ずケプラーの方程式の解法という例があります。x=e*sin(x)+M ここで eとMは定数でxを求めるというものですが、いわゆる解析的解(数学的厳密解)はなくて、数値的にしか解けない代表例です。これはケプラーが惑星運動を記述するため導いたものです。彼の時代からコンピュータがない20世紀中葉までは、何ページにもわたって手計算法が書いてありましたが、今日ではwhile文のいい演習問題で約10行のコードで計算できます。初期値を与えて繰り返し演算を行うのですが、うまくいけば数回、不運だと数十回の単純な計算を繰り返すことになります。それを各惑星について、かつ各日時について行うのですから、ケプラーはすごい計算力の持ち主だったのでしょうね。
 ケプラーの方程式

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世界天文年5

 1609年が世界天文年に指定されたのにはもうひとつわけがあることを昨日知りました。ケプラー(1571-1630)が惑星運動の法則を発表した年でもあるということです。それは著書『新天文学』に収められていて、今日、ケプラーの法則といわれるものです。その内容は高校の物理の教科書にも載っていますが、これを理解できる高校生はいるのかな?というようなものです。興味のある方はここをどうぞ。
 ケプラーはガリレイより7歳年下のドイツ(もっとも当時ドイツという国はないが)の数学者、天文学者ですが、生前は占星術師として有名でした。自からの観測よりはそれまでの膨大なデータを集計して、法則を導いたのです。その法則の真の意味は数十年後ニュートンによって数学的に解明されますが、非常に普遍的な法則です。データ集計→法則導出、ガリレイとは違った方法で、科学を確立したわけです。もっとも彼には中世人としての性格が残っていて、およそ科学者と言えない面もありますが、それは次項にて。

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世界天文年4

 ガリレイの晩年は不遇です。1616年(52歳)のとき、地動説について一旦は無罪だったのに、1633年(69歳)のとき再びローマ法王庁で宗教裁判にかけられ有罪判決を受けるのです。その2年前に発行された『天文対話』という本が問題になって、高齢だから減刑ということで終身軟禁という刑でした。役職はすべて剥奪、著書は発禁、異端者だから葬儀も禁止。さらに数年後には彼に不幸が襲ってきます。それは失明、もはや望遠鏡をのぞくこともできません。それでも口述筆記によって『新科学対話』という本を著すという不屈の精神力、やっぱ並みの人ではないですね。この2冊とも岩波文庫にあるはず、昔読んだようだけどすっかり忘れた。
 ガリレイの偉業は科学の世界では、生前から評価されていましたが、法王庁がやっと裁判見直しを始めたのは20世紀末になってからです。1992年、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は、ガリレオ裁判が誤りであったことを認め、ガリレイに謝罪しました。ガリレイは実に死してなお350年間も抵抗勢力と戦い続けたのです。

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世界天文年3

Pisa

 ガリレオといえばこれです。ピサの斜塔(KCGIのある先生提供)の上から軽い球と重い球を落として地上に同時につくことを公開実験した(もっともこれは後世の作り話らしい)。それまでの思い込みを実験で打ち破ったのです。落体の実験はなんども行い「慣性の法則」を発見します。天体観測に限らず、実験して客観的なデータをとるという手法は彼が初めてです。なんでもかんでも過去の権威や神様に頼るのではなく、自らやってみること。これこそパイオニアスピリットですね。2003年KCG40周年のときパイオニアスピリットの持ち主としてコロンブス,アインシュタイン,ライト兄弟をあげました。いずれも新領域を切り拓いた偉人ですが,ガリレオこそそれにふさわしく,われわれの範とすべき師です。      以下事項

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世界天文年2

 ガレリオさんのプロフィール。1564年- 1642年で,シェークスピアと同い年,加藤清正よりひとつ年下で、結構長生きしています。彼の業績は何といっても地動説のプロパガンタですが、その根拠には多数の天体現象の発見があります。月面のクレータ,金星の満ち欠け,太陽黒点,天の川は無数の星の集まり,そして最大の発見は木星の4衛星です。これらは自作の望遠鏡による観測結果で1610年に発表しますが望遠鏡を自作し観測を始めたのは前年の1609年・・・世界天文年はこの年から400年と決められました。彼がローマ法王庁から迫害を受けたのはずっと後で、この頃は問題にならなかったようです。当時は ピサ大学教授(数学・天文学担当)兼トスカーナ大公付哲学者(要するに大貴族のお抱え学者)という肩書です。
 彼はもともと医者になろうとしてピサ大学に入学したけど,方向転換して、ユークリッドやアルキメデスを学んだそうです。
            以下次項

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世界天文年1

 再来年はガリレオ・ガリレイが自作の天体望遠鏡で初めて天体観測をおこなった1609年からちょうど400年にあたります。人類が宇宙へ大きく近づいた記念すべき年として「世界天文年2009」とすることを、国際天文学連合が提案し、ユネスコも賛同しました。世界中で色々なイベントが企画されていますが、プレイベントはすでに始まっていて、来年からは盛りだくさんになります。本日、天文教育研究会世界天文年2009WGに加入しました。京都でできることはないか、これとKCG45周年を引っ掛けて来年は何かやろうと考え中・・・
 ガリレオさんはPioneerSpritの元祖みたいな人です。今ではアタリマエですが、実験・推論・法則という方法論を始めて、科学というジャンルを切り開いたのですから、しかも抵抗勢力と戦いながら。現在われわれがIT文明を享受できているのもカリレオさんのおかげです。

世界天文年2009

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