ポルックスは兄の亡骸をかき抱いて非常に悲しみ,いっそ一緒に死のうと剣や矢で自分の胸を刺しますが,どうしても死ねません。カストルは人間である母レダの血を,ポルックスは父ゼウスの血を引いているからです。ポルックスは苦しみに耐えかねて,父神に自分の命を奪ってくれるよう訴えます。ここでゼウスはカストルを蘇らせるべきなのに,なんとポルックスの願いをそのまま聞き届けてしまうのです。嗚呼なんちゅう父親でしょうね!
さてもう一方の卵からは双子の姉妹ヘレネとクリュタイメストラが生まれましたが,絶世の美女となったヘレネの争奪で全ギリシアとトロイが10年間も空しく戦い続けるトロイ戦争(これは史実)という大事件が起っています。 このお騒がせの大神である白鳥は夏の夜空ではくちょう座になっています。
「星々」カテゴリーアーカイブ
ふたご座2
ある日ゼウス(またもや)は水浴びしているスパルタの王妃レダに魅せられて白鳥の姿になって,この美女に近づき誘惑しました。月満ちてレダは,大きな卵を2つ産みます。その1つから双子の兄弟カストルとポルックスが生まれました。もうひとつの卵からは双子の姉妹が生まれるのですがその話は別項で。二人は仲のいい兄弟で,長じてカストルは剣のポルックスはボクシングの名手になりました。一緒にさまざまな冒険をした中にはイアソンのコルキス遠征の参加も含まれます。カストルはケンタウロスのケイロン(いて座)から乗馬も習っています。
ところがある日,獲物の取り合いでいとこ達と争い,カストルは命を落してしまいます。 以下次項
ふたご座1
おうし座4
おうし座には死に逝く星もあります。かに星雲と言われる1054年7月4日に大爆発を起こした天体(超新星=Supernova)で,その記録は世界中に2件のみ,中国と日本しかなく,藤原定家の「明月記」に載っています。当時の京童は塔のてっぺんに登って,その星を取ろうとしたことでしょう。20日間くらい昼間でも見えたそうで,今なお時速1500kmの猛スピードで噴出・膨張しています。
かに星雲は星の最期・爆発機構から原子核・素粒子の研究まで現代物理学に非常に大きな貢献をした文字とおりスーパースターです。
「世の中にかに星雲のなかりせば 冬の夜空はあぢきなからむ」のみならず,私たちの物理学の知識はもっと貧弱なままだったでしょう。
おうし座3
おうし座の中で有名な天体といえばまずすばる(プレアデス)でしょう。双眼鏡で見るのにふさわしい天体で,まさかこんな風に見えるわけはないですよね。青くて若くて(といっても1億歳くらい)活発な星の集団です。1000年前の平安の才女も枕草子のなかで「ほしはすばる・・・」といとをかしがっていますね。「すばる」は上古からのやまと言葉です。
また浦島太郎が亀に連れられて行ったのはこのすばるです。龍宮城は海の底でも離れ小島でもなく400光年かなたの星々だったのです。これはれっきとした丹後風土記の記載であり,世界最初のSFでしょう。決してcastorのホラではありません。でも脚色はしました。→浦島物語
おうし座2
地中海を西へ進み,やがてクレタ島にたどり着き,そこで牛は正体を現しました。それは神々の主神でオリンポス山の神殿に住んでいるはずのゼウスでした。実はゼウスは好色なことでも神々の中で随一で,正妻ヘラの目を盗んで,美女であれば娘であれ人妻であれ,逃さず自分のものにしてしまいます。エウロパはクレタ島でゼウスの何番目かの妻として暮らし,彼女の名Europaはヨーロッパの語源となり,すべてのヨーロッパ人の母となったということです。
ヨーロッパ文明の始まりはギリシアですが,ギリシア文明の源はクレタ島を中心とするエーゲ海文明です。フェニキア→クレタ→ギリシア,この物語はそのことをサジェストしているみたいですね。
なお,おうし座は上半身しか描かれていないのは,下半身は地中海の水面下にあるからです。それにしてもギリシアの神々はよく略奪事件を起こすもんで。。。
おうし座1
12星座も残り2個となりますたが,どちらも長いお話です。おうし座は今夜東南の空に見える秋から冬の星座です。そこには赤い巨星アルデバラン,ヒアデス星団,プレアデス(=すばる)星団、かに星雲など有名な天体がたくさんあります。
さて,フェニキアの王女エウロパは父王アゲノルの自慢の美しい娘で世界中の若者の憧れの的でした。ある日侍女達と一緒に海辺で遊んでいたところ,どこからか真白の牛が現れてきて,彼女の側に座り込みました。その牛の背中に腰を下ろすといきなり牛は立ち上がり,エウロパを乗せて走り出しました。侍女たちが追いかけるのを振り切って,海に飛び込み沖に向かって泳いでいます。エウロパは恐怖のあまり必死で牛の角をつかんでいました。 以下事項
いて座 補
実は天にはもう一人(一頭?)ケンタウロスがいます。それはフェロスと言う名で,ケンタウロス座になっています。さそり座を挟んで,いて座(サギタリウス)と向き合っていますが,南天にあるため日本からは(ギリシアからも)見えません。
この半人半馬の怪物は恐怖と軽蔑の目で書かれています。ギリシアで馬は利用されなかったようで,ヘラクレスやオリオンなどの英雄も馬に乗っていません。馬が出てくる物語は「トロイの木馬」くらいかな?ペルシアとのマラソンの戦いで勝った事を知らせる伝令の兵士も馬に乗らずに42.195kmを走ったくらいで,馬の乗ればもっと早くできるのに,ごくろうさん。
いて座
そのむかし,ギリシアの北の山々の洞窟にはケンタウロス族といわれる上半身は人間で,下半身は馬という化け物が住んでいました。ケンタウロス族は野蛮でしばしばギリシアを襲い,人々は恐れていました。その中でケイロンだけは文武両道に秀でたケンタウロスで,学者としても有名でした。彼はヘルクレス,アスクレピウス,カストル,イアソンなどの若者を育てました。ケイロンは弓が得意で名射手といわれていましたが,ヘルクレスと他のケンタウロスとの争いに巻き込まれ,毒矢に当たって命を落してしまいました。
馬を知らなかった頃のギリシア人は,北方騎馬民族を怖がってこんな化け物を想像したのでしょう。
いて座は銀河の中にあるため,きれいな夜空ではかえって見にくい、昔の田舎はそうでした。星団星雲がたくさんあり,夏の観望会にはネタに事欠きません。
さそり座
海の神ポセイドン(ゼウスの弟)の息子オリオンは無類の勇者で,ヘルクレスと並ぶ英雄です。腕力は強くて,狙った獲物は決して逃さず必ず仕留めてしまう名狩人でした。獲物を追ってギリシアからエーゲ海の島々の野を駆け巡りました。おまけにとびきり美男でしたから愛人もたくさんいました。しかし,自分の腕を自慢しすぎたため,ゼウスの正妻ヘラの怒りを買い,彼女の差し向けたさそりに踵を刺されてあっけなく命を落してしまうのです。そのためオリオンはいまだにさそりが怖くて,さそりが沈んでから昇って来るし,またさそりが昇って来るとあわてて西に沈むといわれています。今風に言えば密猟乱獲者オリオンは自然保護者ヘラの派遣した警備隊さそりに射殺された話ともとれますね。
夏の夜に南の空をご覧ください。さそりの後半分は天の川の中で,そこには星雲星団がたくさん見えます。主星アンタレスは不気味赤い光を放っていますが,実は太陽の数百倍も膨れ上がった肥満児で近い将来大爆発を起こして消えてしまうかもしれません。もちろん宇宙スケールでの近い将来ですが。
