京風ラーメンと,京都ラーメン

 80年前後だったと思うが,四条河原町の阪急百貨店に,「あかさたな」という京風ラーメンの店ができた。細く硬い麺と,醤油と魚介系プラス鶏がらの薄い和風だしのスープで,ラーメンの概念で対峙すると,うどんか蕎麦の温麺に思える。しかし,うどんや蕎麦を基本概念に置いて取り組むと,あくまでもラーメン,という不思議な汁麺であった。その後,いっときは,「京風ラーメン」と同じようなものをあちこちで見かけるようになったのだが,その後は衰退した。たしかに,和風のだしで細麺の,あっさりした醤油ラーメンは,日本の真髄,京都のはんなりを象徴していたものである。いわゆる東京式醤油ラーメンよりも,はるかに和風で軽やかであった。

 その当時は,「京風」あるいは「京都風」というと,そういった和風の鰹・鯖の出汁の効いた鶏がらあっさりラーメンというものであって,今,「京都ラーメン」と言われているような,鶏がらプラス豚骨のこってりしたものは,「京都」,「都」,「雅」,の味の概念範疇にはなかったのである。どちらかというと,邪道の下町食文化の扱いで,誰も「京都の味」だなどとは思っていなかった。

 あれから20年余,京都の下町食文化であるラーメンは,「京都ラーメン」として市民権を得て全国デビューし,かつての京風ラーメンと言う命名と概念を忘却の彼方に押しやってしまった。バラエティもスポーツも,関西下町文化が強い時代になった。食文化も然りである。

京都のラーメン考

comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*