ここはラーメンも美味いのだが,鶏の手羽元のから揚げで超有名になった店である。ここのから揚げを食べずして,京都のから揚げは語れない。学生時代は,このから揚げを一人で6本(二皿)食べていた。
ラーメン目当てで行く友人も多かったが,自分はから揚げであった。ビールとから揚げで機嫌よくなって,締めにラーメン,というコースである。鶏がらと豚骨のブレンドが絶妙で,こってりとあっさりを足して二で割ってあっさりを足したような?絶妙な味わいで,つるつると入っていく。チャーシューも美味い。チャーシュー麺を食べて,から揚げをお持ち帰りという手もある。
新福菜館–京都ラーメンLegend
終戦直後から延々繁盛し続けている老舗である。黒っぽい色のスープで,関東式の醤油ラーメンなのだが,食べてみるとさほど塩辛くはない。時々東京が懐かしくなったとき,やたら食べたくなる。見た目はバリバリ醤油ラーメンなのだが,関東の醤油系とは明らかに違う。醤油が押し出してこないのだ。あくまでも,京都式に奥ゆかしく,奥深い。関東を思い出すための京都ラーメンとでも言うべきか。
焼き飯も名物で,ラーメンと一緒に頼むと,腹いっぱいの晩飯になる。これもフランチャイズなのかなにか知らないが,支店がいくつかある。もちろん,本店の味が一番である。
第一旭–京都ラーメンLegend
京都駅の東側(京都コンピュータ学院は駅の西側)に,後述の新福菜館と隣りあわせで,それぞれ異なる味で勝負している。京都人の中では,どちらが好きかという話題になることが多い。いわゆる京都ラーメンぽいという意味では,第一旭だろうか。しっかりとした出汁なのだが,あまり脂っぽくはないので,朝でも食べられる。実際,朝からオープンしている。学生時代は,夜更かしした朝に食べに行って,満腹になって,帰宅して寝るということが何度かあった。
麺は細めで葱は京都の九条葱である。フランチャイズかどうか知らないが,支店があったように思うが,やはり本店が一番。筆者は新福菜館と二軒両隣のどちらかと言われると,こちらを押す。
東京ラーメン–京都ラーメンLegend
京大医学部の西の鞠小路通りにある。店の名は,開店前に東京でラーメンの修行をしてきたからこその命名なのだという伝説がある。東京式ラーメンだと言われるが,あくまでも京都のはんなり滋味ある奥深さを有しており,東京で同様の味に出会ったことはない。
鶏がら以外に,昆布など和風だしの原料も多量に入れているようで,結構複雑な味でありながら,決してしつこくない。突出したところもなく,すべてが綺麗にまとまっていて,しかも軽妙,そして円熟の極み。昼ごはんには丁度良いラーメンである。夜はあまり遅くまでやっていないのも,この味であるからこそか。もやしラーメンとか玉子ラーメンなど,色々バリエーションがあるのだが,正当派は並。それも昼飯時に。
男前でダンディな親父が演歌を鼻歌しながら造るところが渋い。滋賀県に嫁に行った娘も美人で素敵な人ある。
天々有(天天有)–京都ラーメンLegend
ますたに,天下一品,そして天々有(天天有,てんてんゆう)が,京都で30年以上君臨し,顧客を三分している老舗の御三家である。京都コンピュータ学院洛北校から,北東に歩いたら20分くらいだろうか。高野の交差点を北上すること10分くらいのところにある。
鶏がらベースに豚骨を効かせたラーメンで,ますたにが「表はんなり」,天下一品が「裏こってり」だとすると,見事にその境界領域を押さえている。まったりした味ではなく,こってり過ぎず,シャープで上品である。昔から,各三軒それぞれのファンは,一番美味いのはここだと三軒のうちのひとつを挙げ,決して譲らない。
「硬い目,鹹い目,葱は多い目」が美味いのだと福岡出身の友人に教えてもらった。それ以来,いつも,その学生時代の友人が言ったように,麺をすこし硬い目に茹で上げてもらって,スープは少し塩辛い目,葱はたっぷりと入れてもらうようにリクエストする。麺を硬い目にしてもらっても,麺はスープと分離することなく,綺麗に絡み合うところが,鶏がらのゼラチン質である。豚骨系のこってりさが強いとと,麺が独立してしまうのだ。
夜中までやっているので,夜中に行くことが多いが,夜遅いほうがスープが煮詰まってくるのか美味いように思う。
最近,レトルトのパックが高速道路のSAなどで売り出されているが,店の子に訪ねたら,その商品の存在すら知らなかった。もちろん店にも売っていない。謎である。
天下一品–京都ラーメンLegend
今や京都ラーメンの大御所と言うべきか。賛否両論両極端で,熱烈なファンと,一度食べて敬遠する人と二通りに別れる。今から20年以上前に東京にも支店を出した。京都市内にも近県にも,多くの支店・チェーン店があるが,それぞれ微妙に味が違う。やはり北白川の本店がダントツで美味いと思う。最近はあっさりスープなど,様々な選択枝が用意されているが,伝統のこってりスープを置いて他にない。
鶏がらと野菜ベースのスープだと喧伝しているが,豚骨,豚皮などが入っているようで,ちょっと豚の匂いがきつい。スープはビックリするほどドロドロで,濃いぃ。ラーメンに慣れていない関西人が食べたら,三日間胸焼けが治らなかったとか,色々な逸話がある。
ニンニクは絶対入れてもらうこと。葱も多い目が良い。スープと薄いチャーシューと柔らか目の麺が,強烈なニンニクで混然一体となって,口中は怒涛が渦巻く。食べているうちに,混沌の中に一筋の光明が見えて,とても満足する結果になる。「なんだかわからんが美味いもんを腹一杯喰って満腹だぁ!」と叫びたくなるような,とてつもない満足感が残るところが凄い。一点,昔から気に入らないのは,店の前のちょうちんに,「焼豚鉢一面」と書いてあるくせに,並にはペラ一枚しか入っていないことなのだが,怒涛と混沌の過程を経ているうちに,そんなことはどうでも良くなってしまう。
この店が出現して以来,多くのラーメン屋がドロドロこってり系のスープを真似しだしたが,天一(テンイチ=天下一品の略称・愛称)は,どこにも真似できない究極に達しており,他の追随を許さない。無頼派革新系完成形京都ラーメンとでも言うべきか。
京の都の夜遅く,東山三十六峰にかかる霧を遠目に,唯ひたすらこってりスープに包まれて腹いっぱい,さて,帰って寝るか,と思いつつ。これも京の都,裏こってり。
ますたにラーメン–京都ラーメンLegend
44年の伝統と実績を誇る京都コンピュータ学院の白河校(もとの浄土寺校舎)を北上すること5分。銀閣寺道の交差点の西北に,50年以上の伝統と実績を誇る「ますたに」がある。店の前には桜の木があって,春は美しい。
この「ますたに」を食べずして,京都のラーメンは語れない。麺を盛った後に,どんぶりに豚の背脂でを金網で散らすという技法はここが発祥と思われる。親父の麺の取り方も一流で,一回でぴったり一人前を網に掬ってどんぶりに盛る。どんぶりに盛ってから箸で麺の量を調節するなんてことはしない。プロなのである。昔から,店舗の規模の割に従業員が多く,皆がのんびりと接客しているように見える。そのせいか,ベテランのおばちゃんは愛想が良く,接客が上手い。
チャーシューとメンマ,そして多い目の葱が盛られて,背脂が散りばめられている。見た感じは脂っぽいのだが,食べると存外あっさりしている。どこにも尖がった個性がないのだが,すべてが上手く調和している。あまりにも丸く収まりすぎていて,一回食べたくらいでは,その完成度は理解できないと思う。なんとなく美味いなあ~と思っているうちにスープまでも無くなってしまっていて,「あれ,もう無くなったのか」,と思う。そして,美味いもので満腹になって,とても幸せになったんだけれども,なにか物足りないような,なにか後ろ髪を引かれるような想いで,帰ることになる。そこが凄いところで,何杯食べても飽きないような,胃さえ満杯で無ければもう一杯食べたいと思うような,絶妙な加減に出来上がっているのだ。
何が突出して他の店に勝るのかというと,指摘しにくい。麺もチャーシューもスープも,もっとインパクトのある店は他にいくらでもある。しかし,まったりと,それでも適度にシツコク,適度に濃いィ味で,柔らかく歯に残らない麺が,舌を撫でて喉の彼方に消える。改良の余地など微塵もない,すべてが綺麗にまとまって完結している,正当派保守本流完成形京都ラーメンである。
京の都の昼下がり,紅葉の季節のやわらかな陽射しに包まれて,おおきにぃ~,の声を聞きながら帰途に着く。嗚呼,京の都,表はんなり。
屋台から店舗への移行–京都ラーメン
屋台で成功したラーメン屋さんが,店を構えて開業することがある。多くは,それでより洗練された味になるのだが,「屋台のときのほうが味が良かった」,とか,「店を構えて味が落ちた」などと言う人も多い。
屋台と店舗のラーメン調理の違いを観察していると,水の使い方が大きく異なることがわかる。道路には水道がないので,水はどこかから持ってくるしかない。その水を節約するために,屋台では麺の湯で汁でスープを薄めたり,バケツに張った水でどんぶりを洗ったりなどして,水を徹底して節約している。
麺を茹でる鍋の湯が,すなわち,かん水や打ち粉のたっぷり溶けた湯が,客の数に比例して消費されていく鶏がらや豚骨を茹でてスープを取る鍋に,ふんだんに追加される。
加えて,どんぶりを洗うバケツと食器洗剤をすすぐバケツの間で,どの程度すすがれているかで,下味も変わってくるかもしれない。
一方,店を構えると,麺を茹でる鍋とスープの鍋は,湯が交じり合うことがほとんど無くなる。どんぶりを洗うのも,洗剤が全く残らない程度にすすがれて,綺麗に洗われるのだろう。
もうひとつは,冷蔵庫の有無である。営業時間中,素材を保存するのに,屋台で冷蔵庫を持って来ている店は稀である。多くはクーラーボックスか,せいぜい発泡スチロールの箱で,店舗に普通にある電気冷蔵庫・冷凍庫があるわけではない。
これはすなわち,素材の足の速さの違いになる。かぼちゃは腐りかけが一番美味い,と,誰かが言ってたらしいが,屋台ラーメンの麺もチャーシューも,寸前が一番美味いのかもしれない。
店舗になったところで,レシピや,塩加減が変わるとは思えない。屋台から店舗へ移行したラーメンの味の変化は,どうやらこのあたりにあるのではないだろうか。
高木町ラーメン–半分幻の京都ラーメンLegend
今は千本通りの北大路以北に店舗を構えているが,高木町の交差点の角にラーメンの屋台が出ていた。京都コンピュータ学院洛北校から5分ほど東に行った所である。
ムーミンに比べるとニンニクが強く,麺のゆで汁とスープを取る水を混ぜすぎるから,スープに小麦粉の匂いが強く残っていたけれど,それでも,夜中に食べるには美味いラーメンのひとつであった。ムーミンと高木町ラーメンは,当時の京都式屋台ラーメンの代表であった。
半分幻の,と言う意味は,現在,店舗を構えて営業しているからである。こちらはずっと洗練されていて普通に美味い。しかし,あのなつかしの屋台時代の味は,今も舌の記憶に残る。あれを食べると,元気になった。
幻?のきんりん–京都ラーメンLegend
京都コンピュータ学院白河校(昔の浄土時校舎)の南,錦林車庫の前の路地を入ったところにあった,きんりん。先代は,有名な「ますたに」で修行したらしく,たしかに背脂ますたに系であったが,ややワイルド。夜中遅くまでやっているのと,メニューが豊富なので,よく行ったものだった。
近所の普通の京都ラーメン,馴染み深い,親しみ深い味わいだった。
最近,店をたたんでしまった。移転したとの説もあるが,どこなのかわからない。ご存知の方,教えてください。