こうやって古い金属製工業製品をいじくりまわしていると、いったいこれらそれぞれの金属部品を製作するのに、どれくらいのエネルギー消費が必要だったのだろうかという疑念が沸いてくる。
アルミ鋳物のシリンダーをひとつ造るにしても、大量生産にすればひとつあたりのコストは低いだろうが、それを数年でモデルチェンジをして、新しい鋳型を製作し、その工場設備を造っていくと、総和としてどれくらいのエネルギー消費が行われるのか。正確に計算するにしても膨大なデータ量が必要なので、面倒だからしたくはないが、なんとなく想像はできる。
何が疑問なのかというと、30年前のオートバイを修理して一生乗り続けるライダー一人当たりのCO2排出量と、3年から5年でバイクを買い換えて、古いものは廃棄処分にして、排ガス規制の厳しい、環境にやさしい新車に乗り続けたときの化石燃料消費量やCO2排出量の、地球全体での総和の比較である。確かに、ライダーひとりあたりが輩出するCO2量は減るだろうが、工場設備の更新や金属加工によって消費されるエネルギーすなわち排出されるCO2量は馬鹿にならないように思う。これはもちろん四輪自動車にも言える。
環境保護の美名の下で、ハイブリッドカーや電気自動車が生産されても、それが企業の利益効率のために5年で買い換えられるように品質管理が徹底されて、工場設備が更新されていくならば、環境対策の最適値は別の計算になるはずだ。一台あたりの排出量と、交通システム全体における総和としての排出量とを、正確に比較しなくては真の回答は出てこない。
考えているのは、空冷Zに可能な限りの環境対策を施して、一生乗り続けて、心を掻き立てるあの和音、エギゾーストノートを楽しみながら、結果として環境保護に貢献できる可能性があるのではないかということである。空冷エンジンは、その設計によってマージンを多く取る必要があるので、隙間から漏れて浪費されるエネルギーが多いけれども、適切なインジェクション化を行い、それなりの触媒を搭載すると、新車に乗るよりは、環境に貢献できるかもしれない。木を見て森を見ぬ論理に陥らないようにしたいものである。「空冷ZのIT化」は、それが最終目標のひとつである。
空冷 カワサキ Z1,Z2,Z1000R,のカスタム@京都コンピュータ学院自動車制御学科