Z1プロトタイプ。試作車である。タンクがロングピッチであることに注目。リアショックが,発売された改良車とは異なり,立っている。すなわち,スイングアームが短い。テールカウルの三本ラインも,すこし異なる。
1972年,昭和47年,カワサキは,Z1を開発し,同72年5月に20台,7月に29台,合計49台が生産されて,世界中のマスコミ・プレスやディーラーに配布された。カワサキは,それら先行試作車のデータを集めて,さらに改良し販売を開始した。
その後,正規発売になったときに配布されたカタログは,大判の分厚いものであるが,そこにシルエットのように掲載されているZ1火の玉ファイアボールは,まぎれもなく,ロングピッチエンブレムのタンクである。
これが,Z1プロトタイプから最初期型に至る推移における「謎」のひとつで,プロトタイプのロングピッチタンクとは,3種類ある内プレスタンクのどれなのかが,解らないのだ。試作車であるから,最初期のショートピッチタンクと同じものに,ロングピッチのエンブレムを「装着してみた」だけなのだとは思うのだが,このときのロングピッチの意匠案が,Z1-Aで復活したのだろうか。
これら試作車は,フレーム番号がZ1F-900**となっており,5桁表示の9万番台である。エンジンも,もちろん,同じくゼロから始まるのではない90000番台だ。一般販売車両の9万番台は,先頭にゼロがつき,6桁の9万番台である。
その後,プロトタイプで蓄積された意見やノウハウを基に,試作車ではない,「1972年最初期型」が発売されたのである。世界中で絶賛され,多くのレースで連戦連勝を重ねた,日本の川崎重工が生んだ名車,Z1である。
写真はプロトタイプの10番台である。