Kawasaki  Z1R

Z1R Kawasaki

Kawasaki Z1R (Z(KZ)1000D1)
カワサキ Z1R
 発売年 1978年

車台番号 KZT00D-000001~
エンジン番号 KZT00DE000001~

Z1から始る「丸Z」の最終版であるZ1000をベースに,意匠を直線基調に変更し,前輪を18インチ化したものがZ1R,すなわち「Z1000D」である。
国産初のハンドルマウントのビキニカウル,4-1(4in1, フォーインワン)のマフラー,穴あきディスクを装備して,当時流行したカフェレーサースタイルにしたものである。Z1000Aの83psからキャブのチューンで90psと向上している。

カフェレーサーとは,「仲間の集まるカフェ」に乗っていくレーサースタイルの自動車またはバイクを意味する。あくまでも公道仕様であるが,サーキットのレーサーを模した改造が世界的に流行したのである。そして,BMWのR100RS,ハーレーのXLCR,モトグッチ850ルマン,ドカティのMHR,多くのメーカーがカウルを装着したモデルを発売した。

その中で,我らがカワサキのZ1Rは,そのスレンダーなスタイルで世界に衝撃を与えたのだが,重いビキニカウル(メーターは4連ですべてフロントフォークに装着される)と前輪18インチ化により,シミーが出た。
十分な走行テストを行わずに,世界的なビキニカウル装着のカフェレーサーブームに乗って製品化されたのだろう,空冷Zの中では最も操縦性に劣る。Z1からの丸Zが,Z1000で完成に至ったというのに,その良さを無視した製品化であったといわざるを得ない。
また,デザイン優先で設計されたスレンダーなタンクは,ガソリン容量も当然少なく満タンで走れる距離もかなり短い。(ドイツ向けにオプションの大容量ガソリンタンクが発売されていた。)

しかし,それら多くの欠点を補って余りある,Z1R独特の魅力は,今も絶大なファンを多く獲得している。メタリックの水色と黒基調のエンジンとのコンビネーションが美しい。Z1000Mk.IIが男っぽい無骨の代表とすれば,こちらは,男前の流麗の代表と言えるだろう。

フレームは,ダウンチューブが二重構造になっており,Z1に比するとかなりしっかりしている。Z1Rのハンドルバーは,低く構えるのに幅が広く,独特の形状をしている。カウルの中に装着される4連メーターとメーカー純正の集合管は,独特の世界を創出する。

カスタムする際には,カウルやメーター類をすべてフレームにマウントにすれば,問題は解決する。



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Kawasaki  Z1R-II

Z1R-II Kawasaki

Kawasaki Z1R-II (Z(KZ)1000D2,D3)
カワサキ Z1R-II
 発売年 1979年

D2
車台番号 KZT00D-017501~
エンジン番号 KZT00DE017501~

D3
車台番号 KZT00DE017616~
エンジン番号 KZT00DE017616~

前輪後輪ともに18インチであったZ1Rは,重いカウルの影響もあって,操縦性に問題があった。それを改良して,Z1000Mk.IIをベースにしたのがZ1R-IIである。前輪はトラッドな19インチになり,タンクも大型化され,マフラーも二本だしとなる。

年式によってD2とD3がある。D2は黒と赤の二種のカラーリングだが,D3ha黒だけである。

このころは交通法規の関係で,北米向けのリアフェンダーは短いままだが,ヨーロッパ向けのリアフェンダーは長い。写真はヨーロッパ向けのリアフェンダーである。

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Kawasaki Z750 FX

Z750FX Kawasaki

 Kawasaki Z750FX
 カワサキZ750FX
 発売年 1979年

いわばマーク2の国内向けで,Z2と同様に,輸出モデルを国内向けにアレンジしたものであり,D2とD3の二種類がある。いずれもZ1に対するZ2ほど類似しているわけではない。

KZ750D2(Z750FX) 1979年(1月~8月)
車台番号 KZ750D-003901~(運輸省認可型式はKZ750D)
エンジン番号 Z2E024801~
(総生産台数 2185台)
*エンジンの外観はZ1000Mk.IIと同様だが,クランクケースは旧来のZ2系とほぼ同じである。

KZ750D3(Z750FX) 1979年10月~1980年4月
車台番号 KZ750D-006301~(運輸省認可型式はKZ750D)
エンジン番号 Z2E-27201~
(総生産台数 850台)
*D2と大差はないが,クランクケースが改良されており,Z1000Mk.IIと同じものになっている。つまり,エンジンはZ1000Mk.IIのボアダウン仕様である。外観では,ヘッドライト下にKAWASAKIのロゴの入ったオーナメントが付くといった程度の変化が見られる。

D2とD3でエンジンが異なる。前期のD2のエンジンはそれまでのZ2エンジンが基本であり,カムカバーなどが角型になっているだけで,中身はあまり変化はない。一方,後期のD3はエンジンがMk.IIと同じZ系最強のクランクケースとなっており,クランクとカムのチェーンコマ数や歯数の異なるものである。また,D2,D3ともに,マフラーがZ1000Mk.IIとは異なり,750cc用の専用設計となっている。

国内向けの750は,輸出仕様のパーツを少数生産の国内向けに使用してボアダウンバージョンを生産していたのであるが,この750FXを最後に,カワサキフラッグシップのボアダウンバージョンは国内で販売されなくなった。類似名称でZ750FXのIIやIIIがあるが,それらは,最後にはゼファー750に至るZ650ベースのザッパーエンジンであり,フレームも全く異なるものである。

モリワキがこれをベースにモリワキモンスターと呼ばれるレース車を作成したこともあって,人気も高い。同時期には,400ccで4気筒のZ400FXが人気を博した。エフエックス,あるいはフェックスと呼ばれたりする。

このころ,街ではよく空冷カワサキ4気筒の集合管サウンドが聞こえたものだった。それが750であろうと400であろうと,空冷カワサキ+ヨシムラやモリワキの集合管の音は,なによりも心に響いたものだ。それはスズキやヤマハよりも重厚で,ホンダよりも乾いた音であり,カワサキの音だということが遠くでもわかった。水冷エンジンはなかったので,ことさら空冷などと言うことはなかったが,カワサキが集合管の音は独特の魅力を感じたものだった。

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Kawasaki  Z1000 Mk.II

Z1000 Mk.II Kawasaki

 Kawasaki Z1000 Mk.II (A3)
 カワサキ Z1000マーク2
 発売年 1979年

Z(KZ)1000-A3A, Z1000-A3(Z1000Mk.II.) 1979年
車台番号 KZT00A-038427~
エンジン番号 KZT00AE081566~
(KZ1000-A3Aは北米向けの排ガス対策車)

Z1000-A4(Z1000Mk.II) 1980年
車台番号 KZT00A-043001~
エンジン番号 KZT00AE092601~
(Z1000-A4は,80年モデルとして中南米,中近東,欧州,アフリカ,大洋州に輸出された。欧州仕様はハンドルが低く,ウインカーが後方に移動されている。塗装はA3と同じく青と赤の2タイプである。)

Z1直系のエンジンの最後のモデルである。「角ゼット」の代表格である。1015ccの排気量で93psを絞りだすが,車体が重くなった分,乗ってみると「重くて頑丈」,という印象が残る。
クランクとカムのスプロケットの歯数がZ1,Z2とは異なるので,エンジンをバラすときは注意が必要である。カムチェーンの駒数も異なる。標準でトランジスタ点火となったことも大きな特徴である。
販売されたのは,79年,80年の2年間のみであった。

Z1,Z2の「丸Z」からZ1R,Mk.II,そしてZ1000Jへと,デザインが曲線から直線基調へと移っていくのだが,その過渡期の作品であり,デザイン的には完成されているとは言い難い。しかし,その武骨さがまさにカワサキらしく,男性的であるとも言え,熱烈なファンが多い。

Z1・Z2よりは大柄な感じがするが,実際はさほど変わらない。タンクとシートの形状が異なるだけで,フレームの基本的な寸法はほぼ共通である。
Z1・Z2からこのMk.II系まで,つまり,Z1Rの二機種やMK.II,Z750FXーIなど,同じZ系エンジン搭載車は,多少加工が必要であるが,タンクとシート,テールカウル,サイドカバーを交換すると丸Zにすることができる。逆ももちろん可能である。

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Kawasaki  Z1000H

Z1000H Kawasaki

カワサキ Z1000H
kawasaki Z1000H
 発売年 1980年

マークIIのインジェクション仕様である。北米向けにはZ1クラッシックが開発されたが,ヨーロッパ向けには,マークIIのインジェクション仕様としてこれが発売された。インジェクションは,四輪用のボッシュLジェトロニックをベースにし96ps/8,000rpm, 9.1kg/7,000rpmと発表された。
このブラック&ゴールドの配色は,「Hカラー」とも呼ばれ,マークII系のオーナーたちが塗装している。黒に金色のホイールとラインが美しい。

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Kawasaki Z1000ST

Z1000ST Kawasaki

 カワサキ Z1000ST
 Kawasaki KZ1000ST (E1)
 発売年 1979年
 

カワサキのミッションギアの設計・生産能力は高く,播州歯車のブランドで自動車メーカーなどにもギヤを納入していた。
そのギヤ設計能力を駆使して,かのカワサキ大型6気筒,Z1300とほぼ同時期に開発された,後輪シャフト駆動の名作である。リアホイールは17インチである。
今となっては,ホイールの交換が難しいことから,シャフト駆動はあまり好かれないが,ノーマルのままで長く乗ろうとするならば,実はシャフト駆動の方が便利ではある。
Z1000Mk.II やZ750FXと似ているが,フレーム形状もZ系とは異なっており,酷似しているかに見えるタンクも互換性が無い。空冷Zの中では異端中の異端である。

空冷カワサキは大きく分けてZ1の系譜であるZ系と,大きくリニューアルされたJ系があるが,このZ1000STは,そのどちらに分類するかと言われると,エンジンの基本構造はZ系であるが,フレームが異なることから,どちらにも属しないと考えた方が良いかもしれない。
下のZ1000Mk.IIと比べると,タンクの形状や傾きが異なることがわかる。

Z1000 Mk.II Kawasaki



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カワサキZ2 70年代当時のまま

70年代 Z2 カワサキ

高校時代,早朝まで起きていたとき,家族が寝ている家からバイクをそぉ~っと押して出して,黎明の空の下,家や学校から脱出した。

家から50m程離れて,エンジンに火を入れる。エギゾーストノートが町内に響くと,飛び乗ってアクセルを開けた。

帰宅するのは昼過ぎで,当然,その日は学校を休んだ。

KCGに進学したとき,学校の面白さが始めてわかった。そこは逃れる場所ではなくて,好きにする場所だった。しかし,働き出して,長じて今になって,やっぱり,その瞬間の喜びが忘れられずに,時たま同じように日常から脱出する。そんなことをするのは,一年に一度あるかないかなのだが,日常から逃れることこそが,自身の日常であるのではないかという疑念が,今も,残るからだ。

70年代当時のまま,心が,そこにあるような気がする時がある。

カワサキ Z750RS(Z2) 

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Z1からZ1Aへ

カワサキ Z1

カワサキZ1の生産台数関連情報。

初期型火の玉,ショートピッチタンクは,1973年7月までは生産されていた。
車台番号18800番台のZ1と,車台番号21100番台のZ1Aを確認した。前者が,1973年7月の生産であり,後者は同年8月の生産であることを,それぞれのステム部分のステッカーが生産年月を示している。

もちろん,前者はZ1であり,カラーリングは火の玉オレンジ,後者はZ1A,いわゆるタイガーの赤である。つまり,1973年7月から8月の間に,Z1は,Z1Aへと進化したのであった。生産台数は,1万8千番台から2万1千番台へと推移している。

当然,国内向けのZ2は,このあたりを境に,ショートピッチタンクからロングピッチへと変化する。輸出モデルがZ1Aへと進化しても,国内向けZ2は,従来のZ1イメージを踏襲して,火の玉オレンジに塗装され,国内で販売され続けたのである。
そのZ2は,同73年,昭和48年の夏以降は,Z1Aのフレームやタンク,即ち,タンク下の台形部分の長穴がないZ1とそれがあるZ1Aのフレームが混在している。3100番台の長穴ありフレームと,3200番台の長穴無しのフレームを確認している。つまり,一般に言われる「Z2初期型」とは,Z1とZ1Aの日本版が混在している。73年,昭和48年の7月~8月が,Z2初期型の過渡期であったのだ。

Z1 生産台数
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Z1000R,ノーマルとカスタムと

Kawasaki Z1000R1

kawasaki Z1000R1のノーマル写真。

下は,カスタムの一例である。
横から見るとわかるように,下のカスタムは,フロントが立ち過ぎている。
90年代のカスタムは,かようにフロントの立った状態にするのが流行した。
しかし,実際のところ,法定速度内で,それなりに楽しく走るには,フロントはあまり立てる必要はない。
下記の写真のところまでカスタムする必要があるのかどうか,色々と乗り比べてみると,解ってくると思う。自分の走り方をよく分析せずして,正しいカスタムなどあり得ない。
まずはノーマルで走ってみて,少しずつ変更や改良を加え,自分のバイクを創っていくことが,カスタムなのである。

Kawasaki Z1000R1

Z1000Rのカスタム
ホイール;モーリス前後18インチ
Fフォーク;カヤバ38パイZ用(やや短い)
ステム;PMC S1タイプ
キャブ;FCR39パイ
リアショック:オーリンズ
スイングアーム;PMC
ブレーキ:PMC S1タイプ&ロッキード2Pod

フロントホイールを19インチから18インチに変更し,さらにフォークを短くしているので前下がりになっている。尻上がりの近年のバイクのイメージが強いと,前下がりにして尻を上げたくなる心理が働くが,80年代初頭の設計のバイクを,いわゆるケツ上げにするのは見た目重視以外の何物でもない。このシルエットが,J系に多い誤った車体姿勢の作り方であると思う。

尻上がり,ケツ上げ,前下がりは,一見,ハンドリングが現代的になったような印象を受けるが,実は,疲れるだけの面白みのないハンドリングになってしまう。J系で前輪を18インチ化するならば,フォークはノーマルと同程度に長い方が,疲れない。

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