前準備

 まずはカワサキZ関連のパーツをかき集めて整理する。エンジンとフレーム,ホイールやらキャブやら,電装品まで,夫々を総点検した上で,足りないものをあちこちから集める。長い間かかってコツコツ集めて倉庫や屋根裏や裏庭やらあちこちに溜め込まれていたパーツを全部ひっくり返して吟味すると,お宝をたくさん持っていたつもりが,実はたいしたものがないこともわかった。バイク一台製作するというのは,結構大変なもんだ。あれもこれも足りない。
 カワサキのパーツリスト,サービスマニュアル,雑誌,授業で配布する資料として,コピーを作成してもらう。担当の方には,感謝。そして,授業資料の収集と整理,授業用パワーポイントスライドの作成など。結構時間がかかった。開講は6月から通年の一年間,とすることになった。

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何故カワサキ空冷Zなのか?

 ありとあらゆるエンジンの中で,これがダントツに面白い,楽しい,感性に響いてくる,からである。偶然の賜物だとしか思えないのだが,空冷Zエンジンの奏でる音は,イタリアのカンツォーネか日本の演歌か,なんだかわからんが,心に響いてくるものがある。集合管をつけた日にゃあ,もう,唯に感涙むせぶのみ。嗚呼,Kawasaki Z!
 高度成長期の日本で設計・生産され,世界を席巻した工業製品としての当時の技術力と,そして,今なお,多くのファンを惹きつけてやまないその魅力。それは単に技術という枠を超えた,文化的な何かがある。単なる交通手段としてではなく,享楽の道具としてオートバイを設計するならば,次の時代は,絶対性能や加速,最高速ではなくて,乗って楽しいかどうか,感性に響いてくるかどうか,を,ITで実現することだ。だから,京都コンピュータ学院の底力を結集して,実現すべき対象を研究しようと。等等・・・。

第二週目の講義

 
後日の,教室での授業風景(あとから追加でアップしました)

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カワサキ空冷Zの実習車両について

 教員各人がすでに保有しているフレームやエンジン,各種パーツを持ち寄って,5台の空冷カワサキをレストア・カスタム製作をする。学生を5チームに分けて,いっしょにやろうということになった。

 1号車は,カワサキZ2(Z750RS)のサーキットレーサー。できるだけ当時のパーツを使って渋く仕上げる。モトマーチンのスイングアームとホイールに赤いマルゾッキを合わせて,ちょいヨーロピアン。スポンサーは<ヘッド>。エンジンはヨシムラ860cc。

 2号車は,カワサキZ1000R2をベースに,エディ・ローソンが乗った実車のレプリカ。これもサーキット専用。できるだけローソンの実車に合わせたいところ。S1レプリカというよりも,ローソンがサーキットを走った実車が目標。スポンサーは<大阪コーチャン>。

 3号車は,カワサキZ1000R1のストリート仕様,これはスポンサーの<Pop…?>のもの。

 4号車はカワサキZ750Z4のフルレストア,錆びてボロボロになった一台を再度光らせようという試み。スポンサーは<タカギトシユキ>

 5号車はカワサキZ1Rをベースに,17インチでアメリカっぽいカスタム。スポンサーは私,元締めの<輪ん>。
以上,5台を製作することにした。

 番外編として,写真のようなSR500のカスタムを組み立てる。

京都のオフィシャルさんが製作したもの

 
写真は京都のオフィシャルさんが製作したもの。クラッシックなカフェレーサー仕様。

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インストラクショナルデザイン(授業と教え方の設計)

 IT教育の話を少し。KCG自動車制御学科の正規科目なので,正式名称は「自動二輪特論」。前期と後期,通年での授業である。教室での基礎知識の授業と,実車を分解して組み立てる実習授業のブレンド。もちろんKCGのすべての授業がそうであるように,ネット上のKCGのEラーニングのプラットフォームにあらゆる情報が乗っていて,各資料をネットで閲覧できる。
 一方的に知識を伝授する旧来型の授業ではなくて,学生主体で学び学生が楽しめる授業を目指す。教師から学生への押し付けはできるだけNG。そして,各種資料を検索するためのサポートを可能な限り徹底する。教員たちがコレクションしてきた様々な雑誌,マニュアル,パーツリストも集めて書架に並べ貸し出しにしている。ネット上のデータ量はもちろん,書籍コレクションも含めて,情報量はハンパではない。カワサキ空冷Zに関するあらゆる情報を蓄積し,カワサキ空冷Z情報のデジタルアーカイブを創り上げていきたい。

教室での授業

教室での授業
授業は全てeラーニング化される。授業コンテンツは全部学内ネットにアップされていて,学校でも自宅からでも,ダウンロードできる。

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担当教員

 京都コンピュータ学院(KCG)京都情報大学院大学(KCGI)の関係者で車・バイク好き,Z好きの先生方に声をかけたら,あっと言う間に10人も集まった。以下,スタッフ紹介。

<BOSS>
 キャブ時代のフェラーリ12気筒やアルファロメオ,オースチン・ヒーレー等を得意とする,ヒストリックカーの世界では有名なメカ。学生時代は鈴鹿で二輪のレースに熱中していた,当時モノのZ2レーサーである。

<じゃが>
 某外車ディーラー出身のベテラン一級整備士で,京都コンピュータ学院自動車制御学科の兄貴先生。80年代のバイクブームをリアルタイムで経験してきたツワモノ。

<Pop…?>
 若い頃KHからRZと2ストを数台乗り継いだ。最近,返り咲きリターンライダーとして限定解除し,750で周山街道を走って練習している。

<大阪コーチャン>
 自己生成プログラムのスペシャリストで,中年でバイクに乗ろうと教習所に通う。かつては某大手メーカーで電気製品の企画設計を担当していたアメリカ帰り。

<タカギトシユキ>
 元某ソフトハウスのSEで,四輪レースに命をかける。二輪も好きで色々所有しているが,大半のコレクションは実家のガレージで分解されてバラバラになっているらしい。

<メリーさん>
 十代の頃にスティードに乗って走り回っていて,再度バイクに乗ろうと思って限定解除に通う姉御。グループの世話役。

抹茶ん>
 大型二輪で全国をかっ飛んでいるプログラム言語やアルゴリズムの専門家。カリキュラムの都合で,たまにしか参加できないが。

<輪ん>
 今回の企画の言いだしっぺのカスタムゼッツー乗り。若い頃に事故をして膝を潰しているが,でもそんなの関係ねぇ。懲りてない。自動車とバイクのエンスーオタク,ドン・コレツィオーネ。

<boku>
 ハード系の大先生。電気・電子・ICのことは任しとけィ。ローレプの電気式メーターなんてお茶ノコ。親父になって,今はスクーターだが,かつては峠のTZR。

以上,皆,車やバイクが好きな,KCGの先生たちである。教員・スタッフで,あちこちから集めて持ち寄った5台のZを製作しようという,贅沢な?授業である。IT,コンピュータとどう関係があるんだとお叱りを受けそうだが,あるんだな,コレが,,,,詳細は後述。

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イントロ

 京都コンピュータ学院自動車制御学科の周辺科目の企画のひとつとして,カワサキ空冷Zを技術・技術史としてだけでなく,日本が世界に誇る文化として捉え,それを研究していくような授業を開講することにした。当時世界を席巻し,今なおオートバイ趣味の王道中の王道として君臨するカワサキ空冷Z。これを,現代の技術でレストアやカスタムを行って,できるだけIT化して環境にやさしい旧車趣味を研究したい。自分自身が学ぶために,とりあえずやってみようと思うに至った。
 環境問題に関連して。環境への対応という美名の背後で,実は別のところでCOをかなり輩出することになるという例がかなりあるらしい。実際,今からハイブリッドや電気自動車を生産するよりも,すでに地球上にある旧車に排ガス浄化装置をつけて,IT化して高効率化したほうが,社会的なコストは低く,地球温暖化の阻止にも貢献するかもしれない。

プロフィール画像

 ま,色々理屈や想念は出てくるんだが,一番大切なこととして,「移動のための道具,交通手段としての自動車やバイク」,というカテゴリーと,「人生を楽しむ相棒としての自動車やバイク」という概念には,決定的に差異があることを強調しておきたい。言うまでも無く,ここでは後者を対象とするのであって,人間の感性に関係する文化の問題をITで対処するということである。電気自動車の開発やらハイブリッドカーのことなどは,他の担当や巨大メーカーに任せておいて,本講義では,趣味の世界,人間感性の問題を,ITをできるだけ使って,追求していくことにしよう。

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