各種鮨種について-平目(ヒラメ)

平目(ヒラメ)
 淡くとも滋味溢れる魚である。1月から3月までの寒平目は,産卵前で特に味が円熟している。淡白で奥深い,上質のヒラメの味わいがわかるには年季を要する。若い頃はこの美味さが分からなかったが,近頃ではヒラメを食べないと鮨を食った気にならない。この魚は生きているのをすぐに食べるよりも,締めてから半日から一日くらい置いたほうが,滋味が溢れ出てくる。昆布締めもさらに美味いのだが,しかるべき産地の,しかも職人が頃合を見計らったものは,昆布など合わせなくても,奥深い濃い旨みがある。天然ものは,砂地につく側が真っ白である。養殖ものは病気で裏側が白くないものが多いので見ればわかる。江戸前からそれより北の寒い地方のほうが美味い。とはいってもせいぜい樺太か千島列島までで,それよりベーリング海側になると味が変わる。回転寿司店や町の魚屋などで,オヒョウをヒラメとかカレイとか偽って出しているときがあるが,ベーリング海のそれは明らかに異なる水の匂いがする。

ヒラメの縁側
 そのまま握っても美味いが,軽く炙ってもらうのも良い。ヒラメの縁側は,鮨種のなかでも高価なものだが,もちろん,白身のヒラメが美味い店でないと,注文しても意味がない。ヒラメが美味いと思ったら,財布の中と相談して,縁側があるかどうか聞いてみることである。味覚の地平にまた一つ新しい広がりを発見することだろう。

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