やきとり,吉田の屋台—京都の和食,日本食

 京都情報大学院大学のある百万遍から東へ10分,京大農学部の門の前,吉田山の登山口に,夜は屋台が出る。
 昔から同じ経営で,味も変わらない。うどんとおでんと焼き鳥の店だ。この焼き鳥が,関西一ではないかというくらい,イケてる。せせりという,首の周りの肉を串に巻きつけて,甘い目のタレで薄味に焼き上げるのだが,安い材料でたいしたことはしていないくせに,凡百の焼き鳥を蹴っ飛ばすほど完成されているのである。うどんも京都式の汁もろとも飲み込む,あの淡さである。おでんは時間によって出来具合が大きく異なるので,鍋の中をよく観察して,頃合の良いものだけを選ぶようにする。
 暖かい季節には,とりあえずビール,せせりが焼けるまでにおでん少々,せせりを食べたら締めに昆布かきつねうどん。冬になると,テントの中でストーブが三台焚かれて,おでんが暖かくて熱燗が美味い。しみじみと京都の夜のもうひとつの側面を感じることができる。
 日中,少しでも雨が降ると,その夜は店を出さない。昼間雨の降った日には,行っても振られることになる。

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ぎお門の親子丼—京都の和食,日本食

ぎお門

 うどん,蕎麦,丼,焼き鳥,串カツなどを日本料理・和食のディナーだと勘違いしている人がいるが,これらは日本の伝統的ファストフードである。ヨーロッパのサンドイッチや,アメリカのハンバーガーなどに比較するものであって,決して,フルコースディナーの比較対象ではない。間違っても,「ディナー」だとは思わないこと。ファストフードでありながら,健康的で,美味いところが,そんじょそこらの洋もんを寄せ付けない,和の文化の深遠なのである。さて,京都・和の文化の伝統的ファストフードと言えば,トップバッターはぎお門の親子丼やデ♪

京都コンピュータ学院洛北校から東へ20分。京都コンピュータ学院白河校(旧浄土寺校)から北上しても20分,北大路通りと白川通りのT字路から北東に入ったところに「ぎお門」がある。蕎麦・うどんの類から定食までメニューは色々あるが,なんといっても親子丼が有名である。

 やや甘すぎる嫌いがあるが,玉子の溶き方,火加減,出汁と具の比率,何をとっても申し分無い。玉子はあくまでも半熟でありながら,他の具には完全に火が通っている。この状態でテーブルに出すには,加熱時間は一瞬のタイミングしかない。よくあるように,固まった玉子がしゃぶしゃぶ出汁に浮いているようなものでは,断じて無いのだ。頃合,間合い,タイミングの勝負を見せつけてくれる。

 東京でこういった丼物を注文したら,玉子がガチガチに固まっていて,黒い汁がかかっていて,醤油と塩がきつくて,いつも驚く。そんな丼ものに慣れた関東の人から見ると,京都の親子丼はお菓子の一種かと思われるかもしれない。それくらいまったりと甘く,ほんわりとしているのだ。京都の食べ物は,例え昼のファストフードでも,塩辛い労働のためのエナジーではなくて,たゆたう日常の心和むひと時なのである。

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ラーメンとは・・

 カウンターに向かって伏して,冷めてはマズイと思いつつ麺を啜っていると,すぐにその魔味に引き込まれていく。同席の家族や友人との会話も無く,食事を楽しむというわけでもなく,ひたすら丼を見つめながら,苦渋に満ちた顔で混沌の中に溺れていく。ラーメンは,あまりにもストイックな食べ物だ。そして,これこそ,武士道日本の文化である。

 子供の頃から日本のラーメンを食べ続けて,最近やっと解ったことは,日本のラーメンというのは,化学調味料の中毒症状を起こす食べ物だということである。試しに,化学調味料を多量に含有するインスタントラーメンや,ど○べえのカップうどんと,家庭で作る鶏ガラスープの汁だけのラーメンや,昆布だしだけのうどんを,目前に並べて食べ比べてみれば良い。そして試しに,行きつけのラーメン屋で,「化学調味料抜き」を注文して食べてみると,さらに本質を理解することができると思う。これはぜひ試していただきたい。人間はかくも哀れにも,ケミカルドラッグに溺れやすいことがわかるだろう。

 唾を必要以上に分泌させる化学調味料と,それがもたらす心理的焦燥感が,ラーメンの非常に重要なファクターなのである。自然の調味料や出汁によるものは,そういった焦燥感をもたらさない。ラーメンとは,化学調味料の強烈な魔性の誘惑に独り立ち向かい,人間の性の哀しみや悲しみに対峙して,焦燥感に駆られるための,一種の孤独なトリップをもたらす,ジャパニーズネイティブのケミカルドラッグなのだ。

 若い頃特有の,孤独で焼け付くような焦燥感と,これから始まる人生への不安や期待と,そして,その若さゆえの胃袋があったとき,ラーメンは必要不可欠な食べ物だった。最近は,麺のかん水と,豚脂が内臓に堪えるので,さっぱり食べなくなってしまった。齢を重ねて,食生活はナチュラル志向になった。前半の鮨の薀蓄も,その年齢的・身体的理由が根底にある。この理解の域に達するのには歳月を要するのである。

京都のラーメン考
鮨,寿司,うまいすし,ラーメン,うどん,そば,美味いもの,グルメ@京都情報大学院大学

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ラーメンのレシピ・家庭で作る究極の京都ラーメン

スープの材料

豚骨 脛の部分1本に対して,鶏ガラ2羽分,あるいは,鳥の足(爪先)200g~300gくらいが良い。
ますたに系を目指すなら,豚の背脂と鶏がらだけ。テンイチ系を目指すなら豚皮200gくらいを追加。天々有系を目指すなら豚皮の代わりに鶏皮や手羽先を200gくらい入れる。
ラーメンの麺 二人前(麺は,生麺,乾麺,自分で手打ち麺,お好みで。)
にんにく4カケ
醤油,酢,唐辛子,塩。化学調味料たっぷり一瓶

チャーシューの材料
豚バラブロック・ニンニク・醤油・砂糖少々・酒・葱

市場に溢れているラーメン屋さん。食べ歩きして,結局100%満足できた店はいくつあっただろう?日本のラーメンは中国人にも評価が高く,美味いものとの定評がある。ラーメンは美味いものだが,なにか,他の食べ物と根本的に違うところがあるはずだ。

 他の食べ物との大きな違いは,大量に混ぜられる化学調味料のもたらす効果である。多くのラーメン屋さんでは,その作り方を見ていると,小さじ半分から一杯くらいの化学調味料を入れている。化学調味料は,人間の味覚を狂わせ,一種の中毒を引き起こす。

 しかし,ここで化学調味料やラーメン店でのラーメンを否定するともともこもなくなるので,それを肯定しながら,家庭のラーメンを模索してみたい。何度もトライして,自分なりのベストを探すのが,家庭ラーメンである。

調理方法
ベースとしては,豚の骨,脛のあたりを1本に対し鶏ガラ2羽分を煮込む。豚骨と鶏ガラの比率は,色々試したが,容積比で1:2くらいがベストだと思う。
強火でガンガン2時間,濁った白いスープができるとOK。強火で煮ると,スープに脂や空気が溶け込んで白くなる。鶏ガラよりも鶏の爪先を使ったほうが,下町っぽい味になり,ゼラチン質も多くなる。鶏の皮とか,豚の皮を入れても良い。皮を入れるとゼラチンが多くなり,トロンとしたスープになる。これは好みによるので,こってりが好きな人は入れればいいけれど,あっさりが好きな人には向かないだろう。

麺は,自分で打ってもいいけど,面倒くさいので,そこらで売っている生麺を購入する。細麺,太麺,堅い目柔らか目,お好みのままに。

豚バラブロックは,タコ糸でぐるぐる巻きにして,醤油と砂糖少々,酒,ニンニク,葱を入れて,これまた強火でガンガン2時間煮る。すると,脂身がとろ~りとしてくる。

あとは化学調味料と醤油でスープベースを作る。このとき,躊躇せずに大量の化学調味料をたっぷり入れる。目安としては,どんぶり一杯につき小さじ山盛り一杯くらい。これが日本のラーメンを形作る基礎である。
(ただし,アメリカ人など,グルタミン酸に慣れていない人にとっては,発作を起因することがあるので注意のこと。日本人は昆布などグルタミン酸に慣れているが,それに慣れていない人たちには,病気のもとになることもある。)

スープがある程度出来上がったら,ニンニクの摩り下ろしたのと唐辛子を入れて,味を強烈にする。好みで酢をちょっと垂らす。

京都のラーメン考

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京風ラーメンと,京都ラーメン

 80年前後だったと思うが,四条河原町の阪急百貨店に,「あかさたな」という京風ラーメンの店ができた。細く硬い麺と,醤油と魚介系プラス鶏がらの薄い和風だしのスープで,ラーメンの概念で対峙すると,うどんか蕎麦の温麺に思える。しかし,うどんや蕎麦を基本概念に置いて取り組むと,あくまでもラーメン,という不思議な汁麺であった。その後,いっときは,「京風ラーメン」と同じようなものをあちこちで見かけるようになったのだが,その後は衰退した。たしかに,和風のだしで細麺の,あっさりした醤油ラーメンは,日本の真髄,京都のはんなりを象徴していたものである。いわゆる東京式醤油ラーメンよりも,はるかに和風で軽やかであった。

 その当時は,「京風」あるいは「京都風」というと,そういった和風の鰹・鯖の出汁の効いた鶏がらあっさりラーメンというものであって,今,「京都ラーメン」と言われているような,鶏がらプラス豚骨のこってりしたものは,「京都」,「都」,「雅」,の味の概念範疇にはなかったのである。どちらかというと,邪道の下町食文化の扱いで,誰も「京都の味」だなどとは思っていなかった。

 あれから20年余,京都の下町食文化であるラーメンは,「京都ラーメン」として市民権を得て全国デビューし,かつての京風ラーメンと言う命名と概念を忘却の彼方に押しやってしまった。バラエティもスポーツも,関西下町文化が強い時代になった。食文化も然りである。

京都のラーメン考

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東洋 —(幻の)京都ラーメンLegend

 京都コンピュータ学院の昔の山科の学生寮(旧西野寮)の前,国道一号線の一本南,新幹線のガード下の南側に,夜中3時まで開いているラーメン屋さんがあった。京都コンピュータ学院と京都医進学園の,旧西野寮出身者ならば全員が知っている,あのラーメン屋さん,「東洋」である。

 こってり系でありながら,ここだけはテンイチを遥かに凌ぐものがあった。単なる脂っこいだけではなく,ゼラチンも濃くて奥深さや味わいがあって,これを一番美味いラーメンと言う人が多くいたのだ。
 当時の西野寮生にとっては,夜中に腹が減るとここしかなかった,というのも事実なのだが,寮生にとっては,最高の台所だった。から揚げも美味かったし,焼き飯も美味かった。夏は冷麺も絶品だった。
 あれは学生時代の元気な頃だったから,夜中のあのコテコテが良かったのかもしれないけれど,当時の仲間は皆,これを懐かしがる。こんな店のすぐそばに寮があるとは,恵まれた学生時代であった。

 長じて久しく行っていないけれど,どうなっているのだろう。学生寮も移転してしまったが,東洋も閉店したとの噂もあり,ガード下に移転して屋号が変わったとの話も聞く。いずれにしても,あの味は,もう無いのだそうだ。確かめに行けばいいのだが,学生時代は記憶の彼方に遥けく,山科西野は気分的に遠い。味が変わったことを嘆き,時が流れたことを痛感するよりは,学生時代の煌く思い出として封印しておいたほうが良いように思うからだ。

京都のラーメン考

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らんたん–京都ラーメンLegend

 30年以上前から,常連を多く獲得している店のひとつ。京大病院の向かいにある。
 出身が京都ではないことがわかる訛りのある陽気な主人が,札幌式硬めの麺に,醤油濃い系の豚骨&鶏ガラスープで仕上げるアンチ京都式ラーメンでありながら,塩加減は京都風。ライスを頼むと麦飯。この麦飯が醤油ラーメンに合う。
 サラダオイルを少々入れてあるので,豚脂よりさっぱりしているように思うのだが,食べたあとは結構ウップと来る。慣れると,変にしつこくなくて,もやしをたっぷり感じる。夜よりも,昼飯に食べるラーメン。
 奥さんがまた人格者で,頼もしい母ちゃん。一度は行ってみるべき京都大学病院御用達のラーメンである。最近行ってないが,味が大人向けになったとの噂。親父も母ちゃんも俺も,みんな年取るんだよ。始めてらんたんを訪れたあの日から,長い歳月が経ったものだ。
 
 そういえば今日は,京都情報大学院大学の創立記念日。おめでとうございます。

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一番星–京都ラーメンLegend

 筆者の高校時代の友人がイチオシ。とろりとしながらあっさりしたスープで,まったりとしていて,好きな人には受けるのだが,やや甘い。麺は硬めで,チャーシューの煮方が上手である。甘いのはたまねぎを入れてあるからだそうだ。ちょっと化学調味料が多いようで,それで酔うからスープは残す。化学調味料に強い人には,最高のラーメンのひとつだろう。
 昔から,薫り高い柴漬けの細切れを付け合せに出してくれる。店構えも,粋やねぇ♪
 
 関係ないけど,この店からすこし西に行った丸太町沿い,平安神宮の北側に,美味いたこ焼屋さんがある。ラーメンのデザートにどうぞ。
 炭水化物で腹いっぱいになったあとは,平安神宮の庭を見に行こう。入場料が必要だが,特に紅葉の季節と,桜の時期には絶対に行くべきである。庶民的で心配りの行き届いた美味いものをはらいっぱい食べて,悠久の歴史と高尚な文化に触れる。この対比を実現できる街は,そう多くは無い。学生時代を送るなら,やっぱり,京都やデ。若いときに,京都に住んでみてほしいね。その後の人生が豊かになるはずだ。
 京都も秋が深まり山々が彩られて,空気が透き通ってきた。こういった光景も風の匂いも,京都の味覚に影響すると思う。美しい街,廉いのから高いのまで美味しいもの,文化の深遠と広大,ええなあ~,京都は。世界中で一番,好きやなぁ~。京都が一番!

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みよし–京都ラーメンLegend

 「博多長浜ラーメンみよし」,と言う。三条木屋町を下がったところにあって,先斗町や木屋町で一杯飲んでラーメンで締めるときはここになる。京都式のセオリーから見ると,麺とスープの調和が弱いように思われるが,これはコレで,博多式。
 ミュージシャンのGackt=ガクトが好み,東京に支店を出したそうだが,結局撤退したらしい。いくら博多式豚骨ラーメンとは言っても,やはり京都文化の影響は強く受けていて,スープがはんなり甘口で上品なのだ。なんでもだだ鹹い東京では,この味わいは雑踏の中に雲散霧消してしまうだろう。京都にいなければわからない,味覚の深遠というものがあるんだよ。
 豚骨ベースの嫌味は皆無である。麺は硬麺で,スープとはあまり混ざり合わないけれど,それを補うトッピングが色々自由に選べるのがいい。トッピングは,定番の紅しょうがや高菜から,胡麻,天カス,牛スジの煮込み,果てはカレー粉まである。
 スープと麺がそれぞれ独立している上に,様々な関連性のないトッピングをあれこれ色々入れて楽しんでいると,だんだん訳がわからなくなって来て,豚骨スープが混沌として「豚混カレー」になる。最後は「激辛胡麻入り天麩羅カスドロドロ紅ショウガ色牛スジカレースープ,ラーメンの切れ端入り」とでも命名したいような料理の残骸が丼の底に残り,結構豪華なディナーを終えたような気になる。先斗町で飲んだあとの締めの一杯にするにはもったいないくらい,フルコースな高級料理なのではないかと思った・・,のは酔っ払っているせいだったか。
 シラフで食べたことが無いので,イマイチ論評しにくいのだが,皆美味いと言っている。

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横綱–京都ラーメンLegend

 国道171号線を大阪へ行く途中,吉祥院に横綱の本店がある。昔はここ一店舗で営業していた。自転車で行くには,一番遠いラーメン屋であった。イマイチ個性に欠けるのだが,固く練ったニンニク唐辛子を混ぜて,葱をてんこ盛り乗せて食べると美味いので,よく行ったものだ。
 近年はどんどん支店ネットワークを拡大しており,京都市内に多くの支店が点在しているのみならず,大阪や愛知県の東端あたりで評判になっているらしい。へぇ~と思ってググってみたら,なんと,ラーメンの通販もしているし,さらには,千葉の松戸にまで支店を出している。頑張れ京都のラーメン。
 最近,市内の某支店に行ったのだが,牛丼の吉野屋と同様に,夜は店内が蛍光灯で白々とやたら明るい。煌々と明るすぎるねん。夜中に一人で,あの輝光と有線の演歌の響きに包まれて,ラーメンを啜っていると,しみじみ美味いなあ~と思うんだが,同時に,心にシメ~っと哀愁が漂ってくる。「夜中の吉野屋」と「夜中のなか卯」と「夜中の横綱」は,いつも,腹いっぱいにはなるのだけれど,淋しさと哀しさで,胸いっぱい,涙ほろり。辛いなぁ,人生は…。

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