第六週(7/17) エンジンの分解⑤ サンドブラスト。カレー鍋のような,A4の錆びた内部が露出!

 キックが降りなかった4号車カワサキZ750A4のヘッドを開けてみたら,3番シリンダーがえらいことになっていた。皆で,「うわぁなんじゃこれぇー!」と大騒ぎ。リングはシリンダーに固着し,バルブも駄目。ラスペネをたっぷり吹いて,一週間放置しておくことにした。
 ブラスターが稼動し始めたので,ガラスビーズのメディアで,ブラストを始める。

第6週:錆びてカレー鍋の中のようになったシリンダー

 錆びてカレーの鍋の中のようになったシリンダー。一週間後,ラスペネが回ったところで上からプラスティックハンマーで叩いて,外した。ちなみに,本当のカレーについては,おいしいカレーの作り方を参照のこと。

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第五週(7/10) カワサキZエンジンの分解④

 学生さんは皆,カワサキZのエンジンが貴重なものだということは理解してくれていて,壊すことなく,上手に分解していく。ゆっくりとじっくりと,皆で協力し合って分解しているのは見ていても気持ちがいい。作業のスピードは遅いけれど,それで良い。

 みんな一様にバイクが好きで,バイク趣味の王道中の王道,Zをさわれるもんだから,嬉々としている。そりゃ,楽しいさ。Zやで,なんせ。普通,整備士学校でも,大学の自動車工学科でも,空冷Zをいきなり触れるところなんて,世界中,他にないぞ。

 ゼッツーのエンジンは真っ先にバラバラになり,Z1000Rのエンジンがそれに続く。錆びて眠っていたZ750A4の車体は,多少手こずっている。Z1Rのエンジンは,ヨーロッパ帰りの元カフェレーサーカスタム。かなり杜撰に扱われていたようで,クランクケースの中から,アルミの雌ネジの破片がでてきた。Z1000R2のエンジンからも,アルミの欠片が出てくる。ところがどちらも,中をよくよく調べても,どこも欠けていない。おそらく,昔割れたパーツを交換して,欠片がどこかに引っかかったまま残ったのだろう。ミステリー。

 分解したシリンダーやヘッドはマスキングしてガラズビーズのブラストをかけていく。

第5週:学生が同様に分解していく

教員の分解実演に続いて,学生たちが自分のチームのエンジンを分解していく。慎重に,慎重に。結局,ボルトは一本も折れなかった。

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カワサキZエンジンの分解③ 講義;工具とケミカルの説明等。

 そして,次の週,,,,いきなり,皆で5機のカワサキZエンジンを分解し始める。ほとんどが予備知識無し。文献読んで来いと言うたのに,どーも,教員も含めて真面目に読んできた奴はあまりいないみたいだ。目前のエンジンに,目の色変えて皆でむしゃぶりついていくみたいな・・・。
 カワサキZのエンジンという貴重なものを,素人に等しい学生たちに触らせて分解させていいのかという意見もあったのだが,いざ始まってみると,「ま,ええか。壊したら,俺が治すわいな」てなもんで。自分のレベルより遥かに高いものに触れて,技術を学ぶのはKCGの伝統だ。でも,ぶっ壊さないように丁寧に分解しろよ。
 旧車のエンジンを分解するときは,カムのタイミング等,計測したり記録したりしておいたほうが良いことが多々ある。また,各種ボルトやパーツには番号を振った荷札をつけたり,ジップロックに分類して管理する。

Z750A4のエンジンを下ろす前

 
写真はカワサキZ750A4のエンジンを下ろす前。近県の山奥で30年間,眠っていた車両。あちこち錆がひどい。

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分解したカワサキZエンジンのガスケット剥がし

分解したエンジンのガスケットを剥がすとき。

 古くなってへばりついて固まったガスケットには,CRCやなにか潤滑剤を染みこませて,すこしふやかしてから,カミソリで削り取る。カッターナイフや柄の付いた金属ヘラよりは,昔ながらのカミソリ(髭剃りに挟む剃刀)の刃を指で直接もって,シコシコと根気良く削り取るのが良いと思う。柄のある刃は,力が入りすぎるので,接合面を傷めることがある。

 「この道具・工具ではすこし弱くて,力が入らない」と思うようなもので,根気良く,シコシコとしていくことが肝要。決して,気短にならないこと。慎重に,慎重に。それでも,ボルトを捩じ切ってしまうことがあるし,うっかり床に落としてしまったりすることがある。床には布団を敷いておいたほうがいいかもね。

 ボルトを捩じ切ると,あとが大変。プロに依頼するしか方法はないことが多く,そうすると高くつく。

第5週:各チームに分解の仕方を実演して解説する

各チームに分解の仕方を実演して解説する。

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第三週(6/19)エンジンの分解の仕方の実演②

 教室では,カワサキ空冷Zの系譜を説明。Z系エンジンとJ系エンジンの解説。実習室に移って,カワサキエンジンをどうやって分解するかの実演を行う。皆必死で凝視している。

 カワサキZはデータが蓄積されているから,計測する必要は無いが,旧車でマニュアルの無いエンジンを初めて分解するときの記録のとり方を,BOSSが実演。点火タイミングを計って記録しておくことが大事。

第三週目:分解の仕方の実演

 

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カワサキZ1/Z2等,カワサキ空冷の車台番号とエンジン番号,生産台数の謎① 

バラバラになっていく48年式のZ2

バラバラになっていく48年式のカワサキZ2。これはフレームの芯出しと塗装を行って,再度組み立てる。

 生産台数とそれぞれの車台番号,そしてエンジン番号との差異は謎が多い。手元の資料で調べたことを以下に記す。間違いがあれば,また,新しい事実をご存知なら,教えてください。

 カワサキZ1は,フレーム100番くらいまでが,フレーム番号とエンジン番号が一致していて,その後,順次ずれていく。Z1/Z2は,フレーム番号とエンジン番号の相関によって価格が変わるほど,マニアックに拘る人が多い。しかし,フレーム番号よりエンジン番号が先であったり,後であったりというのは往々にしてあるようだ。筆者は,火の玉Z1でフレーム番号プラス240番で乗せ換えた形跡がないものを知っているし,また,Z2でも,フレーム番号よりエンジン番号のほうが前に来る(若い)ものも数台,見たことがある。これらが本当に乗せ換え無しなのかどうか定かではなかったが,複数台そういった例を見ると,差異の+/-100や200は,普通にあったのかもしれないと思われる。

Z1
1972-73 Z1F-000001~
Z1A タイガー Z1F-020001~
Z1B 玉虫 Z1F047500~ Z1E045000~
Z900A4 Z1F 085701~ Z1E 086001~

Z2
1973 Z2RS Z2F00026~ 
5月までのZ2E1086まで1枚 ガスケット
火の玉はZ2F 3687まで
Z2A Z2F 3688~ タイガー
Z2B 1975 Z2F10337~

[以上,Z1Z2File 出版社:スタジオ タック クリエイティブ]

 Z2の生産台数と,Z750A4のトップ番号は謎である。一説には,Z2F-15999まではZ2になるという。初年度登録年は昭和51年でフレームナンバーはZ2F-159○○で,シート開閉はレバー式というものがあった。(実車は未確認。売主の説明による)少なくとも,一万5千9百番台までは生産されたと思われる。ただし,輸出仕様のバイクの国内番であるから,15999台とか,16000台などといった,キリの良い数字で生産が打ち切られたと見るよりは,輸出仕様が変更されたのに伴って,国内仕様も同時に変更され,形式も変更されたと推測すると,キリの良い数字ではなかったのではないかとの疑問が残る。

 別冊MOTORCYCLIST 1990年2月号( №138八重洲出版 1990年)によると,
Z2(Z750RS)は車台番号Z2F-00026~で,3662台,Z2Aは車台番号はZ2から連番で,Z2とZ2Aの総生産台数は9711台(Z2Aのみならば6049台になる)との記載があるが,上述の159百番台とはあきらかに違う。また,筆者は,1万2千3百番台のZ2Aを確認しているので,本誌の記載は間違っている。 Z2でフレーム番号2番を見たという話も聞いたことがある。

 また,Z2AからモデルチェンジをしたZ750A4は,同誌によると,Z2F-18403
~と記載されているが,筆者は車体番号Z2F-166○○番のZ750-A4を確認済みである。Z2AからZ750A4に続くのは連番ではないとの記載を複数の雑誌で読んだ記憶があるが,国内仕様は,輸出仕様の,いわばエンジンだけを変更した簡易な組み合わせであることも鑑みると,連番である可能性のほうが高いのではないだろうか。また,形式認定を得るときに,始まりをキリの良い数字にするのは想像できるが,終了番号をキリの良い数字にする理由は考えにくい。

 カワサキZ1/Z2は,車台番号とエンジン番号にこだわり,乗せ換えていないオリジナルが尊重されるが,それが乗せ換えであるかどうかについて,実は確証を得る手段がほとんどない。エンジンマウントのボルトを解いてないかとか,配線などの取り回しで工場出荷時の特徴を見分ける程度しかない。

 かくなる上は,所有している人たち皆で,番号を教えあい,出来るだけ多くの例を収集して,分析していきたいところである。そうすると,車台番号何番付近は,エンジン番号があちこちに飛んでいた,とか,ある程度の分散の度合いがわかるとか,色々と見えてくるものがあるだろう。

 ご存知の方,教えてください。また,自分は車台番号何番でエンジン何番を持っているというような情報もお寄せくださると幸甚です。

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第二週(2007/6/12) 空冷Zのファミリーについて説明。Z2解体ショー。エンジンの分解の仕方の実演① 記録の取り方等

 教室では,カワサキ空冷Zの系譜を説明。Z1から始まり,丸Zから角Z,そしてJ系,ローソン,カワサキZのファミリーを解説していく。問題は各車両の生産台数で,肝心のゼッツーはいったい何台生産されたのか,よくわからない。ご存知の方,教えてください。

2時間目は,カワサキZ2の実車解体ショーを行い,Zの車体の概要を説明していく。エンジンを下ろして,「これがぁ,世界に冠たる日本のZのエンジンだぞ」と吠える。学生さんたちは輪になって,興味津々で眺めている。学生がこれほど熱心な顔で授業を聞くなんて,イマドキの日本では珍しいだろうなー。

次回までに,Zエンジンの分解の仕方に関する文献を読んでくることを課題として出す。

第二週目の,実習室での授業

実習室での授業,Z2を分解して見せる

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飲み会(第一週 その2)

乾杯の図

 授業のあとは,京都駅前のカフェで,顔合わせの飲み会。未成年はソフトドリンク,その他はビールで,「飲んだら乗るな,乗るなら飲むな」を徹底するぞと誓って乾杯。一人,原付で来た学生さんがいたので,キーを没収する。明日学校で返してやるからな,と。

 隼乗り,カワサキGPZ400逆車乗り,ゴリラ乗り,etc. 学生さんも多彩だ。SRに興味があるという人もいる。大型免許を持っているのが数名,中型から原付まで,免許なしもいるけれど,夏休みには実家に帰って取ってくるという。皆で盛り上がり,最後はちょっと飲みすぎたのが一人いたが,友達が自分の下宿に連れて帰った。

 筆者が学生の頃は,教授も学生も集まって飲んで騒いでいた。必ず誰かが酔いつぶれて道路で吐いているのが普通だったし,そうやって酒の飲み方や宴会のマナーを覚えて行った。しかし,イマドキの一般の大学では,大学当局が学生が急性アル中で倒れることを恐れて,アルコールを伴う催しは禁止にしているところが多い。クラスやクラブの新歓コンパ(死語になりつつある)でも,教員や大学側スタッフは嫌がって参加しないらしい。

 KCG,京都コンピュータ学院には,「学生主体の飲み会」という伝統が残っている。非常時の対策も完備,というほどではないが,いざと言うときに点滴を受けることのできる某救急病院の近所で飲むことが多い。そして,飲みすぎて動けなくなると,速攻で救急に運び込まれることになっている。飲みすぎで救急の点滴を受けると1万円以上取られるので,それに懲りて,二度と飲み過ぎないようになるという。ん~?
まあ,宴席のマナーを学ぶのも,大人への第一歩だもんな。

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第一週(2007/6/5) 概要説明 原付分解 飲み会

 いよいよ開講。まずはスタッフと履修登録をした学生さんとで顔合わせ。5チームに分けて,学生さんの希望を聞きながら,次の段取りを考える。集まった学生さんは,自動車制御学科が大半だが,KCG/京都コンピュータ学院保守本流のソフト系学科の学生さんや,メカトロ・ハード系もいる。ほとんどがバイク乗りで,いい顔してる。

 オートバイというものは社会的にあまり必要でない乗り物であって,とても危険なものなんだ,それに乗るということは,それなりの覚悟と決意と注意が重要なのだ。絶対に事故を起こさないようにするんだぞ,と,強調する。

 また,この日は,バイクを分解したことのない学生さんのために,経験者が分散するように3チームに分けて,原付の分解を体験してもらった。知っている学生が知らない学生に,丁寧に教えている。互助の精神があるね,バイク乗りは。そうそう,こういうコラボレーションができるのが京コンの良いところ。

みんなで原付を分解する

 
みんなで原付を分解するの図

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議論

 しかし,教員・スタッフのスキルや知識もまちまちな上に,まったくの初心者からベテランまでいる学生多数を相手に,どのように何を教えるのか,何を学ぶのか,それが議論になった。

 京都コンピュータ学院自動車制御学科のカリキュラムはITが主なので,自動車工学とりわけ二輪についてはあまり授業が開講されていなかった。エンジンの基礎構造も大事だし,二輪独特の車輪とシャーシと路面の関係を知ることも大事。いやそれ以上に,バイク乗りにとって重要な知識のひとつとして,貴重な日本の文化遺産であるカワサキ空冷Zの,文化的な意味での知の体系化が一番大事ではないか。ここは学校であり,世界初の自動車制御学科なのだから,CarITを教えるのがメインテーマであるので,カワサキZの電気系統のIT化やインジェクション化とIT制御もやろうじゃないか。VMキャブにインジェクションを仕込んで,概観は当時モノ,中身はデジタルってのも面白い,云々・・。手前味噌な意見もあって,夢は展開する。

 議論百出して結局,バイク,とりわけカワサキZが好きな仲間が集まる場を創って,若者に人生を教えることを一番の目標にしようということに集約してきた。つまり,技術や知識を伝授するだけではなく,好きモノが皆で集まってワイワイとバイクを製作していたら,そこから何かが出てくるはずだと。(こういう教育方法をコンストラクティビストデザインと言う)

 まあ,楽しけりゃいいか。IT・コンピュータで日本一の伝統を誇るKCGのスローガンは,「楽しい学校」。そういえば,本学創立者は,戦争中の学徒動員で明石のカワサキ工場で飛行機を造っていたそうだ。カワサキZ1のエンジンは,「日本で最初にコンピュータを使って設計されたエンジンだ」という話を聞いたこともある。紙カードパンチと大型機の時代の話。ご縁です。

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