—私立大学・短大定員割れ過去最悪—
ここ数年,大学の定員割れは4割のままで推移しており,「淘汰がいっこうに進まないな,やはり旧制度(昭和の制度)の大学は強いな」と思っていたら,来た。いきなり7.4ポイント増え,とうとう私立大学の定員割れが,47.1%になったという。これには驚きを禁じえない。
大学と短大を合計すれば933校で,大学266校+短大243校=509校が定員割れだから,なんと,高等教育の頂点であった大学と短大の半数以上,54.5%が定員割れとなったのだ。
半数以上。わが国の旧来の大学・短大制度は戦後すぐにできた旧来の制度であるが,これがとうとう崩壊したと言ってよい。
下記毎日新聞の記事には,「800人未満の大学が学生数減少」という記載があるが,日本各地には,総定員800人以下(一学年200人以下)というような小規模大学がたくさんある。昔から,地方,小規模,文系,単科のいずれかの条件を複数持つ大学は危ないと言われてきた。
2004年の制度改革以前,とりわけ昭和に出来た旧来の4年制大学や短大は,法が求める設備要件が厳しく,「定員を充足して始めて成立する経営モデル」として認可を受けているため,定員割れは即座に経営困難を意味する。その定員割れが,とうとう私学のほぼ半数にまで至ったとは・・・。最終章が始まったということか。
昭和の高度経済成長期には,誰もが大学を目指した。一般市民は,「大学に行けば,学士様になって出世できる」と思いこんでいたのである。
そして,多くの名ばかりの大学が乱立されて,この20年ほどで大学数は倍になった。ところが,その大半は「文系」で,実務教育や先端のITに徹底して疎い。将来就職を志す学生には,あまり関係のない教育内容である。「大学を出たけれど」と言う現実的結果が,世の中に知られていくようになった。
今,半分の大学が定員割れである。もはや,大学進学妄念の時代は終わった。
問題は,そこまで経営破たんしつつある大学に,何千億円もの国庫補助(我々の税金)が,人件費や運営費として,今なお歳出されていることなのだが,どうして誰もそれに文句を言わないのだろう。社保庁の消えた年金も大問題だが,無駄遣いの私学補助金も実は大問題だ。経営破たん大学の中には,人件費比率が学費収入の10割を超えているところもある。そこに投入されるのは,国税からの補助金である。大学の淘汰が進むと,税金もかなり節約できることになる。
大学はあと3年が正念場」と言われはじめて,一年が過ぎつつある。あと二年で,小規模4年制大学と短大が,多数消えていくのだろう。「やがて消える大学」へ,進学すると,将来学歴を失うことになりかねない。
専門学校と大学院の複合体であるKCGグループは,日本最初のIT・コンピュータ教育機関であることと,京都という「地の利」があるからだと思われているようだが,本質的には,国庫補助に依存する経営モデルではないところが強みである。
今,IT人材の不足は日本の大問題である。かつての読み書きそろばんは,IT実務教育にとって変わった。そして,今や空気や水の次に大事と言って過言ではないIT・コンピュータ。自動車や家電には小型のコンピュータが仕込まれ,携帯電話は電話の機能を持ったコンピュータである。人間ひとりあたり,数十台のCPUを持っている時代である。IT・コンピュータ関連の仕事は今後も拡大を続ける一方である。
我々KCGグループとしては,良い学生を獲得して,技術立国日本のIT分野に送り出したい。そして,それら我々に賛同してくれる学生たちが,日本の文化の中心である京都で学んで,社会に貢献してくれることが,日本の将来のためであると思っている。
毎日新聞 2008年7月30日 以下は同記事の引用。
私立大:47%が定員割れ…今年度、半数未満も29校
今年度の入学者が定員割れした私立大は全体の47.1%(266校)に達し、過去最多となったことが30日、日本私立学校振興・共済事業団の調査で分かった。定員の半分に満たない大学も5.1%(29校)で、昨年度(17校)の1.7倍に急増して過去最多。定員割れが進むと補助金の削減率が上がるため、文部科学省は「経営難に陥る大学が増える危険性がかなり高い」と懸念している。
私立大565校の今年度入学定員は44万8580人で、前年度比0.8%(3535人)増。志願者は延べ306万2825人と同1.3%(3万9138人)増だった。一方、入学者は47万7918人と同1.4%(6997人)減だった。
大学の規模による二極化が顕著で、1学年の定員800人以上の大学では志願者が前年度比約6万7000人増えたが、地方を中心とする800人未満の大学は約2万8000人減った。
全体の定員充足率は過去最低の106.5%で前年度比2.4ポイント減。定員割れした大学は前年度の222校から266校へと大幅に増えた。学部別では福祉系の低迷が目立ち、定員充足率は同7.9ポイント減の92.1%だった。
入学者が定員の半数に満たなかった29校のうち、志願者数が定員を上回ったのは3校のみ。最も定員充足率が低かった大学は11.3%だった。
同事業団私学経営情報センターの堀敏明私学情報室長は「今年の18歳人口は前年比約6万人の大幅な減少だったが、今後19年ごろまでは減り方が緩やかになる。地方の小規模校はこの10年で教員の人件費削減など経営改革を進め、収支を合わせていくことが重要になる」と話した。
私立大への補助金は、学部や学科の入学者が定員の半分以下になるとゼロになる。文科省は昨年度から教育研究組織の規模縮小などを進める大学への新たな助成枠「定員割れ改善促進特別支援経費」を設けており、今年度は約8億円支出している。【加藤隆寛】
毎日新聞 2008年7月30日 22時14分