カワサキZ1とZ2

Z

カワサキZ2の公式写真(カワサキ本社提供)

 カワサキZ2は,73年1月から試作車の製作が始まった。そして,Z1が72年型から73年型へと移行していくにしたがって,連動してZ2の細目も変化していく。Z2の試作車は73年1月生産なので,最初期のものは72年型Z1と共通するところが多い。

 48年3月のZ2初期型の発売時には,すでにZ1のフレーム番号は9000~10000番付近に到達していた。そういったことから,Z2のフレーム番号1番は,Z1の5000~6000番台あたりを生産していた頃ではないかと推測される。

 Z2最初期のロットは,シリンダーは1枚ガスケットのもので,ヘッドは砂型の,いわゆるなごりヘッド(ブローバイの跡が残っているもの)である。その一枚ガスケットシリンダーが装着されていたZ2は,フレーム番号1000番から1100番手前ぐらい(初年度登録 48年5月車まで)までであり, 排気量の刻印は段付き浮き大文字である。

 Z2はフレーム番号25番まで(と思われる)が試作機で,市販された26番以降と多少仕様が異なる。48年1月にZ2試作車25台程度製造されたが,それらには,無番マフラー,かまぼこフロントフォーク,シートは黒スポシートに センターバンド付き,28パイキャブなどのZ1最初期型(72年式)の部品が付いている。

 Z2最初期型のキャブレターはZ1初期同様 ドレンが真下の六角になっているタイプである。この初期型のキャブは仕向け地によって刻印が異なり,北米向けは147,ヨーロッパ向けは149,そしてZ2国内向けには202の番号が打ってある。

 いわゆる無番マフラーは,Z1の1番から6000番あたりまでで,小刻印マフラーはZ1の6000番あたりから9000番ぐらいまでに装着されている。それ以降は末尾36Sである。対してZ2においては,フレーム番号26番以降,50番台くらいまでが小刻印マフラーで,その後は末尾36Sになる。

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文中間違いや誤解があればご教授くださると幸甚です。

空冷 カワサキ Z1,Z2,Z1000R,のカスタム@京都コンピュータ学院自動車制御学科
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おいしいカレーライスの作り方

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カワサキZ1とZ2

Z2

カワサキZ2のカタログから。コピーに,「ロイヤルマシン」 「ロードスター」とある。カワサキZ750-RSの「RS」はロードスターの意。

 輸出モデルである「カワサキZ1」の国内向けが「カワサキZ2」であり,Z1あってのZ2であるから,Z1が変更された後は,Z2も連動して変更されていった。しかし,運輸省認可型式がZ2と同一のままであったZ750Four(A4)は,フレーム番号がZ2Fでエンジン型式もZ2Eであることから,Z2と呼ばれることがあり,これが後年,「Z2とはどこまでを指すか」という,妙な議論を産むひとつの原因になった。

 主流のZ1(ズィーワン)が,Z900A4になってからは,もはやZ1と呼ばれないことを考えると,Z750Four(A4)はあくまでもナナハンフォアであってZ2ではないと言える。Z750A4,A5の運輸省認可型式は「Z2」だが,本家のZ1がすでにZ900となっている以上は,Z2という呼称には無理があると思われる。発売元としても,当時は二番手を連想させるZ2よりも,それ独自の価値観を醸し出すために,あえてZ750FourとPRしたのではないだろうか。当時のカワサキのカタログや広告にも,Z2という名称は使用されていない。広告やカタログにおいては,Z2,Z2AのことはZ750RS(RSはロードスターの略)と称されており,ロイヤルマシンとのコピーがある。対してZ750A4からZ750D1に至るまでは,すべてZ750Fourという名称で記述されている。

 時代背景と生産事情を考えあわせると,Z1とは,Z1,Z1A,Z1Bの三種類の型式(認可事項)であり,呼称であるとともに,Z2とは,その国内向けバージョンであるから,Z2,Z2Aである。総生産台数は,Z1が約80,000台,Z2が約16,000台くらいであろうか。
 
 そして,以上のように生産台数を見ると,一般に市販されたZの中では,Z750 D1が一番生産台数が少ないことに気付く。免許制度が変更された後は大型の販売台数が伸び悩んだのかもしれない。

 その,空冷Zのカワサキ750モデルで,最も生産台数の少ないものを尊ばずに,サイドカバーをZ2に似せたニセモノ(今も発売されている)に取り替えて,Z2カラーに塗るという,逆転現象が生じているのは嘆かわしい。

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カワサキZ1とZ2

 カワサキZ1が世界で一斉を風靡していた一方,国内では「メーカー自主規制」という名の官僚による強要のような指導があった。「大排気量は危険だ」という理由で,国内では750cc以上は発売できなくなっていた。そして,Z1の国内仕様である,排気量750ccのモデル,「カワサキ750-RS」が開発・発売された。これが「カワサキZ1」に対して「カワサキZ2」と呼ばれたのである。
 Z2エンジンは,Z1エンジンを基本に,クランクがショートストローク化されており,シリンダー内径とピストンが異なる。ボアとストローク,クランク,キャブに至るまで入念に再検討されたことにより,結果として,本家Z1を上回るほどのバランスの良いオートバイになった。(月刊オートバイ05年3月号付録歴代名車カタログファイルVol.4.)
カワサキの国内向け750ccオートバイは,後にZ650のやや小ぶりなエンジンに取って代わるので,Z1という天下の名機を基礎にした750ccオートバイは,このZ2Eで始まる番号のエンジン一機種を搭載したものだけである。

 いつの時代も,官僚は現実社会を知らない。出力や性能は,排気量という単一の尺度で規制できるものではなく,チューニングの度合いや,車両全体としての性能によって,危険性の度合いは変わる。それを知らない馬鹿げた官僚指導の結果,Z2(ゼットツー,ゼッツー)という,特殊な国内向けモデルが誕生し,それが熟成を重ねたバランスの良いバイクとして生まれ,さらには,それらが故に,数々の伝説と神話が生まれることとなった。政府の馬鹿げた指導が,図らずも別の価値を創出したのである。
 世界を席巻したZ1のボアダウンバージョンであるZ2は,海外でのZ1人気を背景に,国内には大きな衝撃をもたらし,そして,ホンダのCB750とともに,日本独自の「ナナハン文化」を創っていった。「オートバイの最高峰,最上の価値は,ナナハン」という観念である。

カワサキZ2の型式等は以下の通りである。
⑤Z2(750-RS) 1973年1月より
・車台番号 
試作車 Z2F 00001~00025?(プロトタイプとして,20台程度が試作されたという。筆者の知人・友人が16番~19番などを確認している。また,2番のフレームを確認したという話もある。)
市販車 Z2F 00026~(運輸省認可型式はZ2)
・エンジン番号 Z2E 00001~
・総生産台数 3662台(カワサキの発表による最終番号は3699)定かではない。

⑥Z2A(750RS) 1974年-1975年
・車台番号 Z2から連番(運輸省認可型式はZ2)
・エンジン番号 Z2から連番
・総生産台数 下記文献等には6049台とあるが誤りであると思われる。正確には不明。Z2F-15900番台が確認されているので,12000台程度とも推測できる。また一説には,1万6千100番台でエンジン番号が+34番というのがあるという。

⑦Z750A4(Z750Four) 1976年
車台番号 Z2F-19582まで。始まりは不明(下記文献にはZ2F-18403~とあるが,筆者は1万6千6百番台のZ750A4を確認している。Z2から連番かどうかも定かではない。Z2Aから連番だと思われる。運輸省認可型式はZ2。)
エンジン番号 Z2から連番。
(総生産台数1万6千番あたりから始まったとすると約3200台かと推測できる)

⑧Z750A5(Z750Four) 1976年
車台番号 Z2F-19583 ~ 22400(A4から連番。運輸省認可型式はZ2)
エンジン番号 Z2から連番。
(総生産台数 2817台)

⑨KZ750 D1(Z750Four) 1977~78年
車台番号 KZ750D-000111~002300(運輸省認可型式はKZ750D)
エンジン番号 Z2から連番
(総生産台数 2189台)

⑩KZ750D2(Z750FX) 1979年(1月~8月)
車台番号 KZ750D-003901~(運輸省認可型式はKZ750D)
エンジン番号 Z2E024801~
(総生産台数 2185台)
*エンジンの外観はZ1000Mk.IIと同様だが,クランクケースは旧来のZ2とほぼ同じ。

⑪KZ750D3(Z750FX) 1979年10月~1980年4月
車台番号 KZ750D-006301~(運輸省認可型式はKZ750D)
エンジン番号 Z2E-27201~
(総生産台数 850台)
*Z750FXのD2と大差はないが,クランクケースが改良されており,Z1000Mk.IIと同じものになっている。つまり,エンジンはZ1000Mk.IIのボアダウン仕様である。外観では,ヘッドライト下にKAWASAKIのロゴの入ったオーナメントが付くといった程度。

 輸出モデルであるZ1は,Z1AとZ1Bと三種に分類されたが,国内向けZ2は最初のZ2とその後のZ2Aに分類された。(Z2Bという呼称は,マスコミやマニアなど一部の部外者によるもので,カワサキ社内ではZ2Bという分類はされなかったようである。)
Z750A4という命名は,輸出モデルがZ900A4となったことと連動しているのだが,運輸省認可上は,型式名は変わらず,フレーム番号はZ2Fになっている。従って,750ccモデルは,第三のグループがA4と命名されたという,妙な現象が生じた。

 輸出モデルの国内向けバージョンのZ2は,生産台数も少なかったので,輸出モデルであるZ1があくまでも主流であり,国内向けモデルであるZ2はいわば片手間に生産されていたのは明らかである。従って,輸出モデルの型式名が少々変更されても,国内向けにはよほどの違いが無い限り,即ち,運輸省の認可を得る必要の無い程度の変更ならば,同一型式で生産・販売されたのだろう。

参考;
別冊MOTORCYCLIST 1990年2月号 №138八重洲出版 1990年
Z1・Z2の神話–誕生の真実 全記録–スタジオ タック クリエイティブ2006年

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カワサキZ1とZ2

Z1

カワサキZ1のカタログから。有名な写真。

 高度経済成長期に世界中で絶大な好評を得た日本製大型オートバイ,「900Super Four」,通称カワサキZ1は,1972年に生産が開始された。型式等は以下の通りである。

①Z1(900Super Four) 1972~1973年
車台番号   
  試作車 Z1F-90001~900**(数十台がプロトタイプして試作され,各国のプレスに試乗されたという。5桁表示で9万番台はプロトタイプであり,市販車の9万番台は6桁表示となる。)
市販車 Z1F-000001~
エンジン番号 Z1E000001~(「Z1E」とその後の連番の間には-ハイフンは付かない)
総生産台数は約17000台と言われているが,正確には不明。筆者の友人が確認した最終番号はZ1F-016998である。

②Z1A(900Super Four) 1974年
車台番号 Z1F-020001~
エンジン番号 Z1E20001~

③Z1B(900Super Four) 1975年
車台番号 Z1F-047500~
エンジン番号 Z1E047500~

④Z(KZ)900A4(Z900) 1976年
車台番号 Z1F-085701~
エンジン番号 Z1E086001~

 以上が,排気量900ccでフレーム番号がZ1Fで始まる車両の種類である。総生産台数は,Z1,Z1A,Z1Bまででおよそ8万台程度と推測される。排気量900ccはZ(KZ)900A4(Z900)までで,その次のモデルチェンジで排気量が1000ccに拡大された。

 上述の①から④まで,900ccの各車の特徴は細目で異なるが,Z900A4(A4は,Z900の第四のグループとの意)になると,シートキャッチのレバーが無くなり,フロントブレーキがWディスク標準になった。そして,商品名がZ900(KZ900)となったことから,これは,Z1とは呼ばず,Z900と呼ぶのが一般的である。①②③がカワサキZ1である。

900ccのZ1は,モデルチェンジを重ね,驚異的なヒット作となった。後に,同じ900ccのKAWASAKI  GPZ900R ニンジャが大ヒットしたことと合わせて,900はカワサキのマジックナンバーだと言われるようになったのである。

参考;
別冊MOTORCYCLIST 1990年2月号 №138八重洲出版 1990年
Z1・Z2の神話–誕生の真実 全記録–スタジオ タック クリエイティブ2006年

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カワサキZ1000R1,Z1000R2,Z1100R,ローソンレプリカの生産台数

Z1000R1

 カワサキ ローソンレプリカとは,広義では,カワサキZ1000R1,Z1000R2,Z1100Rの三機種を言う。狭義では,Z1000R1だけを指す場合があり,さらなる狭義では,Z1000R1のうち,米国向けのものだけを本当のローソンレプリカだという説もあるが,フレーム番号が異なるだけで,エンジン等の仕様は変わらない。いくらエディ・ローソンのイメージでマーケティングをしたとは言え,そこまで絞るのはどうかと思われる。そもそも,ローソンレプリカと言っても,カラーリングなどのイメージだけであって,サーキットレーサーとストリート仕様とではかなり違う。サーキット仕様として30台程度が発売されたS1は,エディ・ローソンの特別仕様を参考に製作されたから,「本当のレプリカ」と言うなら,S1だろう。

 「カワサキの記録によると,Z1000Rは,R1,R2を合わせて合計6260台が生産され, R2の米国向けが約1000台,欧/豪州向けが約4300台,Z1100Rの生産台数は約1300台」,という記載がバイカーズステーション 2000年3月号にある。これによると,R1は900台程度となる。また,ビッグバイク・クルージンNo.40には,R1が900台,R2が5300台,S1が30台とある。
 
 Z1000R1は,米国内向けに,エディ・ローソンのサインを入れたステッカーがタンク上面に貼られている。エディ・ローソンがカワサキからヤマハに移籍したことに伴い,ローソンのサインを消して,広告イメージも変更したのがR2である。バイク自体は,カムのプロフィールとスピードメーターが電気式から機械式に変更された程度で,乗り味は変わらない。いずれにもKERKER(カーカー)のマフラーが標準装備される。

 Z1100Rについては,①豪州仕様(南アフリカ,イタリアを含む),②ヨーロッパ一般仕様(イギリス,フランス含む),③ドイツ仕様(スウェーデン含む),④ノルウェー仕様,⑤スイス,⑥カリフォルニア仕様,⑦カナダ仕様,の各種がある。この商品化は,インジェクション化されたGPZ1100の,キャブ仕様のデマンドがヨーロッパからあったからだそうだ。エンジンがハイパワーであり,フロントホイールが18インチ化されているので,こちらは乗り味が異なる。マフラーは二本出しが標準となる。

 R1とR2のエンジンはカムのプロフィールが多少異なる程度でほぼ同じであり,1100Rは空冷最強と言われるGPZ1100Rと同型のエンジンが搭載されている。エンジンで大分類すると,R1,R2とZ1100Rの2類になろう。

 さて,謎は,Z1000R1の,アメリカ国内向けと南ア向けの生産台数である。R1は合計で約900台が,カナダ,米国,南アに輸出されたが,カナダ・米国向けはKZ1000R1とされ,南ア(ヨーロッパ)向けは,「KZ」がナチスを連想することから,単にZ1000R1とされた。即ち,フレーム番号の表示,型式名が異なるのである。
 エディ・ローソン人気により,カナダ・米国向けの台数のほうが圧倒的に多かったであろうことは容易に想像できるので,南ア向けのZ1000R1が,ローソンレプリカの中で,車名もそのままZ1000Rであり,最もレアなモデルということだろうか。生産台数が少ない空冷Zには,国内向けのZ750A4やZ750FXなどがあるが,これらは2~3千台は生産されている。警察の白バイ仕様などの特殊な顧客向けを除くと,一般に販売された空冷Zの中では,「Z1000R1の南ア向け」が,最も生産台数が少ないということになる。

写真は希少な南ア向けのカワサキZ1000R1である。タンク横のKERKERのステッカーは後付。マフラーはKERKERの市販後期型に交換してある。また,南アフリカ向けは,サイドカバーに金色のシリアルナンバープレートが貼り付けられていた。それらの点で,原型を留めるものではないが,貴重な標本として,京都コンピュータ学院京都駅前校舎西館に展示されている。学生が勝手に分解組立したりしているんだが・・・,まあ大目に見ておきたい。

参考文献;
(1)バイカーズステーション 2000年3月号  遊風社
(2)ビッグバイク・クルージンNo.40,スタジオ タック クリエイティブ,平成10年9月発行

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カワサキZ1 Z2 フレーム番号とエンジン番号

ちなみに,手元にあるカワサキZ1記録の一部。結局,Z1もZ2も,生産台数1万番台あたりまでで,プラスマイナス200番程度は普通に生じていて,Z1の8万番台に至ると,それがプラス400番くらいの差異になる,という程度。

Z1F-9○○ (+86)
Z1F-097○○ (-154)
Z1F-102○○ (+240)
Z1F-129○○(+263)
Z1F-828○○ (+401)

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カワサキZ2のフレーム番号とエンジン番号の相関

Z2

昭和48年型 カワサキZ750RS(Z2)

カワサキZ2のフレーム番号とエンジン番号の相関を少々。

下記は,ここしばらくの間で筆者がこの目で見たもの,あるいは,販売されていたカワサキZ2でフレーム番号とエンジン番号を公表していたもの,実際に所有しているもの等の記録である。販売者からの情報については,こちらが購買可能性のある側なので,尋ねて教えていただいた番号についての信憑性は高いと思われる。これ以外の情報をお寄せいただけたら幸甚である。Z750A4とともに,個別データから相関特性を導き出せたら,Z2の生産台数が推測できるかもしれない。

車台番号とエンジン番号は,ナンバープレートと同様に政府管理番号であって公のものである。従って,プライバシー保護の対象ではないが,諸般の事情を慮り,下2桁は○○で伏せてある。○はひとつで一桁である。

+と-については,エンジン番号がフレーム番号より後だとプラス,前だとマイナスで記載している。番号違いしか判明して無いものは+/-で表記。初年度登録が判明しているものは,その右に昭和をSで記載してある。ノンレスとは,レストアしていない個体であるという意味。

 こうして並べてみると,日本中のあちこちで取引されているカワサキZ2には,エンジン番号のほうが若いものが多々ある。番号をすべて教えてもらったもの,また,筆者と友人たちが所有しているカワサキZ1・Z2でも,マイナスが数台ある。「マイナスのすべてが乗せ換えである」というのは,思い込みに過ぎないことがわかるだろう。なお,Z2F-15900番台と16200番台 のZ2があるとの話を聞いたことがあるが,最終番号は不明。したがって,Z2は一体何台生産されたのかは,謎である。

カワサキ(KAWASAKI)Z750RS
フレーム番号 エンジン番号 差異 登録年  備考
Z2F-012○○ Z2E-013○○ (+55) (S48/3登録) ノンレストアは確かとのこと
Z2F-016○○   Z2E-016○○ (-23)
Z2F-019○○   Z2E-019○○ (+/- 15)
Z2F-027○○ Z2E-027○○(-10)ノンレスは確かとのこと
Z2F-030○○   Z2E-031○○ (差異不明だがプラス)(S48登録)
Z2F-034○○ Z2E-034○○ (-68)
Z2F-034○○ Z2E-034○○ (-60)
Z2F-056○○ Z2E-0057○○ (+98)
Z2F-059○○ Z2E-0060○○(差異不明だがプラス)
Z2F-067○○ Z2E-068○○(+99)
Z2F-069○○ Z2E-0070○○(+112)
Z2F-070○○ Z2E-007○○○(差異不明,教えてくれなかった)
Z2F-07○○○ Z2E-007○○○(+130程度とのこと)
Z2F-120○○ Z2E-0119○○(-144)
Z2F-123○○ Z2E-0123○○ (-45)
Z2F-145○○ Z2E-0145○○ (+6)
Z2F-159○○ Z2E-不明

Z750F-A4
Z2F-166○○  Z2E-168○○(+212)
Z2F-16○○○ Z2E-16○○○(+44)
Z2F-198○○ Z2E-0199○(差異不明だがプラス)

こうやって並べてみると,相関性なんて,ほとんど無いなあ~。

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カワサキZ1 Z2 フレーム番号とエンジン番号の言説

 京都コンピュータ学院自動車制御学科の主張のひとつとして,カワサキZのフレーム番号とエンジン番号について論じておきたい。

 カワサキZ1・Z2には,フレーム番号とエンジン番号の「こだわり」がある。どのような車両でも,「エンジンを乗せ換えていない車両は価値が高い」とされているが,それが空冷Z1・Z2の場合は,妙な方向へと展開して,様々な言説がまことしやかに語られている。ここまでフレーム番号とエンジン番号にこだわる車両は他にないだろう。

 カワサキZ1000R1やZ1000 Mk.IIの車体番号にこだわる向きはいるが,データが流通していないからということもあって,エンジン番号にまで言及する人は少ない。しかし,Z1とZ2だけは,フレーム番号とエンジン番号の相関が,中古車価格に影響するのである。

 二輪・四輪の世界で,コレクションの対象となるようなマニアックな車両の中には,エンジン番号と車体番号のデーターベースが出来上がっているものがある。オリジナルにこだわるコレクターは,そのシャーシとエンジンが,元のものであることにはこだわるが,その場合は,他の全てのパーツまでがオリジナルかどうかで,価格が決まる。また,エンジンを一度下ろしたかどうかにはさほどこだわらない。

 ところが,Z1・Z2においては,マニア間で,妙なこだわりが流布されており,それが妙な方向へと発展している。 元々,フレーム番号とエンジン番号の相関関係は,単に車両の程度(走行距離や使用頻度)を証明する手段であったのが,言説がさらなる言説を生み,意味の無いこだわりができあがったのだろう。

 Z1・Z2は,車両に搭載されたままでエンジン上部(シリンダーヘッドとシリンダー)を分解整備できる。いわゆる腰下,すなわちクランクケースは,フレームから下ろさないと分解整備できない。したがって,エンジンを車体から下ろした形跡の無い車両は,「クランクケースを分解した経歴がない」,すなわち「一度もフルオーバーホールしていない」ということになる。つまり,エンジンをかけたときの調子と相俟って,その車両のエンジンの程度や走行距離を証明する一部分なのだ。

 本来は,「エンジンをオーバーホールしていないのに,これだけ程度が良いのだ」ということが「価値」なのである。逆に言うと,レストア・フルオーバーホールしてあるならば,フレーム番号とエンジン番号の相関性が合ってなくても,車検に通る程度に同形式のエンジンならば,何も問題はないし,それで価格が大きく変動する根拠にはなりえない。

 Zのエンジンは,シリンダーヘッドのバルブガイドの交換やシリンダーのボーリングに比すると,消耗したミッションギヤやクランクの交換がやっかいな問題となる。ミッションやクランクはメーカーからパーツが供給されていた頃でも高価なものであったし,メーカーからの供給が無い現在においては,修理はかなり高額な作業となる。

 Zには,そういった車体特性があるために,エンジンを下ろしたかどうかを見分けるテクニックも発達した。エンジンを一度下ろすと,エンジンマウントのボルトやプレートなど関連パーツに痕跡が残る。そして,エンジンを積み替えると,フレーム番号とエンジン番号の相関性が変わることがある。そして,Z1・Z2は,フレーム番号とエンジン番号の相関性が,メーカーから曖昧に発表されている上に,実際の相関が法則性に欠けるから,さらに人々の興味の対象となったのだろう。

 これに,価格を上げて売りたいショップの語る言説と,知識の浅い顧客の思い込みなどが入り混じり,フレーム番号とエンジン番号の神話ができていったと推される。そして,そういったエンジンの本質的な程度を示すための手段であった「積み替え形跡なし」の有無は,フレームとエンジンの相関性という別の価値観を生んだのである。即ち,「たとえボロでも乗せ換えしていなかったら高く,たとえフレームとエンジンの双方の程度がとても良くても,番号が離れていると安い」という,変な現象である。

 Z1は,製造番号100番程度までは,フレーム番号とエンジン番号が一致している。その後は,エンジンが単体で売られたため,フレーム番号とエンジン番号が,徐々にずれていった。そのずれ幅は,一般に,車体番号が後ろになればなるほど,大きくなるのだが,番号差は,決して等比級数的ではない。

 また,エンジンは別のところで組み立てられ,車体に搭載される前に数十機程度は組み立てラインの横にストックされていて,ランダムに搭載されていった。エンジンは単体で販売されたが,注文に応じてストックから抜かれた。さらにまた,ストックエンジンは定期的に抜き取り検査を受けていたそうで,検査が済んでからはラインに戻された。それらのことから,フレーム番号とエンジン番号の数字的差異は,等比級数的に比例してはいないし,ある程度の相関性はあっても,法則性は無い。
 初期の100台程度を除いて,ほぼすべての車体は,フレーム番号とエンジン番号がずれているが,その「ズレ幅」は,すべての車体において異なるのである。おおよそ,車体番号三桁ならば数十,とか,4桁なら百前後,5桁で200程度,など,ある程度の相関性が見られるという程度である。エンジン番号よりフレーム番号のほうが若いのが大半だが,逆もある。これは,実際に数百台のZ1・Z2を観察しているとわかってくるものだ。

 ところが,そういった「車両の程度の見分け方」と「背後の歴史的事実」を理解していない初心者が,言説を妄信してさらなる言説を生み出した。「すべてのZ1・Z2は,フレーム番号は常にエンジン番号より若い」という妄信がそのひとつである。そして,そのような妄信で車両価格が変わるために,わざわざエンジンを積み替えたりしている愚かな者もいる。これでは価値の逆転である。「オーバーホールを経ていない,よりフレッシュなエンジンを欲すること」が,「古くて消耗していても良いから,番号が合っているほうが価値がある」という,逆立ちの評価基準ができあがってしまったのだ。

 もちろん,初期型から後期型まで,エンジンを構成するパーツは様々に変遷していて,興味は尽きない。それがいったい何台生産されたのか,構成パーツは年式年代によってどのように改良され,変遷していったのか,などという話は,技術的な意味でも,歴史的な意味でも,ファンにとっては興味の対象であることに疑いはない。マニアックな観点から見れば,「すべてがオリジナルのまま残っている,できるだけ使用頻度の少ない車体」がより良いのは言うまでもないが,しかし,それは,必ずしも,「エンジンを積み替えたり,パーツを交換してはいけない」という意味では無いし,ましてや,たとえボロでもオリジナルのほうが常に価値があるという訳でもなかろう。

 昨年,まったくのオリジナルで残存していたジャガーのEタイプが,アメリカのオークションで超高値で落札された。そういったマニア垂涎のオリジナル車体は,メーカーからデリバリーされたときのまま,取扱説明書や車載工具なども,新品同様で付属していて,さらには登録書類に至るまで綺麗に残っていることが本質的な価値=価格であった。ジャガーEタイプが,いくらオリジナルパーツで構成されていたとしても,それが錆びてボロボロでは,捨て値しかつかないのが常である。リプロパーツで構成された,きちんと走るもののほうがむしろ高価だ。しかし,カワサキZ1・Z2においては,これが逆転しそうな,変な価値判断基準が出来始めている。これは是正すべきだと思う。

 繰り返しになるが,車台番号とエンジン番号の相関性は,生産台数,技術的変遷やメーカーの思想,性能の向上,あるいはメーカーのマーケット対策などを解明するために必要な知識であって,価値=価格を決定するためのファクターではないのである。

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