80年代の中頃,コンピュータがかつての大型機から小型化して(ダウンサイジングと言う),パーソナル化し,パソコンと呼ばれるようになった。
それまでの大型コンピュータはメーカーからリースするにしても,おいそれとできるような費用ではなかったので,限られた教育機関にしか設置されなかった。しかし,パソコンの時代になり,「教室にパソコンを並べたら,コンピュータの学校に見える」ようになった。それで,全国に多くのコンピュータの学校ができた。
80年代中ごろにできたコンピュータの学校は,コンピュータ業界とあまり関係のない人たちが設立したものが大半である。そして,それらの学校の多くでは,ハードウェアとしてのパソコンは並んでいるが,インストールされているソフトウェアは非常に少ない,というのが通例であった。せいぜいワープロソフトと表計算ソフトくらいしかインストールされていなかったのである。
つまり,それらは「コンピュータの学校」と言うよりは,「アプリケーションの使い方の学校」だったのだ。21世紀になり,少子化が始まって,専門学校,そして短期大学,今は四年制大学と順番に淘汰が進んできた。それらの80年代にできた多くのコンピュータの学校も,今はほとんどない。特に,コンピュータの教育だけで学校を営んでいるところなど他に無いようだ。振り返ると,コンピュータの学校というのは,実は,我が国には,最初から今まで,実に少ないのだということがわかる。
KCGは創立46年目になった。そして,業界ではますますIT化が進んでいるのに,本当の意味でのコンピュータの学校が実に少ないようである。それには,いくつかの理由があると思う。
コンピュータは進化発展のスピードがあまりにも速いので,従来の大学や普通の学校のレベルでは,変化に追従できないのだ。そして,大学という形態は,一般に,教授がイニシアチブを取るのだが,教授になるのは40歳以上,50歳以上という大学が大半だ。即ち,すでに時代変化に追従できない年齢になっているということである。そして,コンピュータの技術にITというビジネス界での応用がここまで発展すると,象牙の塔に籠って研究しているようでは,まったくITによる世の中の変化に追従できないのは当然だろうということになる。
もうひとつ,コンピュータ・ITの教育には費用がかかる。私立学校がそれをやりたくないのは当然だろう。私立大学に文科系が多いのは,費用のかかる工学部・医学部はミニマムにして,文系学部で稼いでいるという訳だ。
KCGは私立学校でありながら,何故,コンピュータ・ITの教育を実現しているのかというと,古くからこの業界で教育をしているおかげで,世界中の多くのメーカーや研究者の間に様々なネットワークがあるからである。日本のコンピュータ・IT教育の老舗との評価を頂いているが,老舗であるからこそできることがあるわけだ。
「最先端の教育は最古参学校でこそ完遂する」,という,IT関連教育の逆説は面白いと思う。
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