塗装の剥離

 塗装の剥離に手間取っている。剥離剤を塗ってタワシでゴシゴシするのだが,結構面倒。
 チームで手分けして,残っているエンジンパーツのブラストと,塗装の剥離。そして,補修パーツの仕分け。地味な作業が続くので,ちょっと疲れてきたかな。しかし,レストアに限らず,職人仕事というものは,準備8割組立て2割。あとすこし,頑張っていこう。
 パーツも揃ってきたし,下準備は着々と進んでいる。

 5号車カワサキZ1Rは,シートキャッチが切り取ってあったので,アルミで作成することにした。どうせだから,前後にスライドできるようにして,PMCのロングテールを使い,シートの前後幅を詰めるようにする予定。セパハンを付ける場合はタンクを後ろに移動しないといけないから,前と後ろからシートが短縮されることになる。コンパクトにまとまるのではないかな,と。

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クランクのチェックと芯出し

 クランクは,コンロッドとウェイトの間の隙間をゲージで計る。マニュアルの規定値ならOKとしたいところだけれど,コンマ1mm程度少ないのを限度と考えたほうが良い。
 フレが出ていないかを見て,出ていれば銅ハンマーで叩いて治すのだが,これは素人には難しい。きちんとした治具(ジグ)が必要であるので,プロに修正してもらう。
何十本も何百本も,カワサキZのクランクを触っていると,使用限度がただちにわかるらしい。コンロッドを持って左右にゆすると,ある程度限度がわかるというが,百本触ってわかるというようなものだろうと思われる。

準備8割組立て2割が,こういった職人仕事の常であるが,組立てに至るのはまだまだ先のこと。今は下準備の日々。

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カワサキZの講義,後期はすでに始まっているのでした。

 実はすでに後期は始まっていて,もう二週目が過ぎていたのであった。

 夏休みの間の補習でだいぶ進んだものの,まだエンジンのブラストが残っている。

 フレームの塗装剥離や補強などに入った。フレームを並べてみると,カワサキZ1/Z2のフレームがどのように変遷していって,Z1Rとなり,そしてZ1000Rのフレームになるのか,その経過が見て取れる。Z1でよく言われるガゼットの部分や,ネックの部分がどのように補強されていったのか,フレームだけを並べてしげしげ眺めると興味深い。

 Kawasaki純正の補修パーツと,PMCのパーツも届いて,手分けしてパーツリストと睨めっこ。カワサキの純正パーツは品番が統合されて,パーツリストと異なる番号のものが届くことがある。一見してわかるものはいいのだが,Oリングや単なるボルトだと,いったいどのパーツの代替品なのか,なかなか分かりづらい。一台分のパーツだけを発注するとなんとか推測できるだろうが,一度に五台分注文したもんだから,いまだになにかわからんものがある・・・。組みながら推測していくしかない。パーツの整理だけでかなり時間が取られる。

 カワサキZ1/Z2,Z1000R,Z750A4,Z1Rを題材としたものの,もうすこし台数を絞ったらよかったかも・・。

 Z1Rのフレーム補強は仕上がっているが,Z2のほうはまだ。フレームを待つ間に,各種小物パーツの剥離と再塗装にかかるようにする。エンジンを組み上げていくのは,一機ずつ丁寧にしていこうということになった。

 

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第七週 エンジンの分解とサンドブラスト

エンジンの分解とサンドブラスト ⑤号車の車体の仮組みとジオメトリーの検討,補強の指示を確定。

 ブラスターが一機しかないので,渋滞が起こり,エンジン表面仕上げが遅れるとともに,ガスケット削りに難航している。皆始めての経験だから,仕方ないさ。

 本日の授業で,前期が終了。予定より大幅に遅れてしまったので,夏休みに補習をすることになった。2グループに分かれて,全員の都合がつく日に,朝から晩までまる一日をかけて,作業を行うことになった。作業は,エンジンのブラストと,必要パーツの洗い出し。

 京都情報大学院大学の学生がとても興味を持ってくれて,大学院でもZ学を開講してくれと言ってきた。聴講はOKだから,来たら?ただ,大学院の単位にはならんよ~。

ありあわせのパーツで,とりあえず立ててみた,カワサキZ1Rのフレーム。足回りは手持ちのニンジャのものを入れてみるか。ホイールは昔懐かしいミッチェルの17インチ。Z1Rの角型基調のデザインに合うだろうと思って。形にしてから,ディメンジョンを考える

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第六週(7/17) エンジンの分解⑤ サンドブラスト。カレー鍋のような,A4の錆びた内部が露出!

 キックが降りなかった4号車カワサキZ750A4のヘッドを開けてみたら,3番シリンダーがえらいことになっていた。皆で,「うわぁなんじゃこれぇー!」と大騒ぎ。リングはシリンダーに固着し,バルブも駄目。ラスペネをたっぷり吹いて,一週間放置しておくことにした。
 ブラスターが稼動し始めたので,ガラスビーズのメディアで,ブラストを始める。

第6週:錆びてカレー鍋の中のようになったシリンダー

 錆びてカレーの鍋の中のようになったシリンダー。一週間後,ラスペネが回ったところで上からプラスティックハンマーで叩いて,外した。ちなみに,本当のカレーについては,おいしいカレーの作り方を参照のこと。

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第五週(7/10) カワサキZエンジンの分解④

 学生さんは皆,カワサキZのエンジンが貴重なものだということは理解してくれていて,壊すことなく,上手に分解していく。ゆっくりとじっくりと,皆で協力し合って分解しているのは見ていても気持ちがいい。作業のスピードは遅いけれど,それで良い。

 みんな一様にバイクが好きで,バイク趣味の王道中の王道,Zをさわれるもんだから,嬉々としている。そりゃ,楽しいさ。Zやで,なんせ。普通,整備士学校でも,大学の自動車工学科でも,空冷Zをいきなり触れるところなんて,世界中,他にないぞ。

 ゼッツーのエンジンは真っ先にバラバラになり,Z1000Rのエンジンがそれに続く。錆びて眠っていたZ750A4の車体は,多少手こずっている。Z1Rのエンジンは,ヨーロッパ帰りの元カフェレーサーカスタム。かなり杜撰に扱われていたようで,クランクケースの中から,アルミの雌ネジの破片がでてきた。Z1000R2のエンジンからも,アルミの欠片が出てくる。ところがどちらも,中をよくよく調べても,どこも欠けていない。おそらく,昔割れたパーツを交換して,欠片がどこかに引っかかったまま残ったのだろう。ミステリー。

 分解したシリンダーやヘッドはマスキングしてガラズビーズのブラストをかけていく。

第5週:学生が同様に分解していく

教員の分解実演に続いて,学生たちが自分のチームのエンジンを分解していく。慎重に,慎重に。結局,ボルトは一本も折れなかった。

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ボルトの固着

 旧車はボルトがさび付いたり,固着していたりする。旧車のエンジンを分解していくと,プロでもボルトを捩じ切ってしまうことがある。特にアルミエンジンに鉄やステンレスのボルトなど,異なる金属同士を締めてあるものは,電位差が原因で錆びて固着していることが多い。
 ボルトの捩じ切りを防ぐためには,潤滑剤をたっぷりと吹きかけて,長時間放置することである。決してあせってはいけない。
 
 捩じ切ってしまったボルトには,小さな穴を開けて,逆ネジのボルトを入れたり,エキストラクターという特殊工具を入れて回すのだが,これが結構難しい。ボルトを折らないに越したことは無い。

 Zのエンジンは,そもそもとても丈夫な過剰品質と言われるものなのだが,人為的なミスによって破損していることが多い。扱い方を熟知しておかないと,貴重な文化遺産を破壊することになるので,自信の無い向きは,触らないほうが良い。原付のエンジンなどで練習して,何本もボルトを折ってから,Zエンジンにかかるようにしたいものだ。どうか,この名作エンジンを一機でも多く,後世に残してください。

小物パーツはジップロックに入れて整理していく。

小物パーツはジップロックに入れて整理していく。

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カワサキZの車体の分解について

 ボルトをどんどんほどいていったらよいだけなのだが,一番の注意点が,エンジンを下ろすところだろうか。カワサキZのエンジンは70キロほどあって重たいので,必ず二人か三人がかりで行う。

 一人だと,床に古布団を敷いて,横に寝かせて外すという方法もあるけれど,やめておいたほうが良い。フレームから外しても,床にはクッションをたっぷり厚く敷いて,フィンを割らないように細心の注意を払うべきである。そぉ~っと。金属だから固いだろうなんで思わないこと。アルミの鋳物はとても弱い。

 エンジンを下ろすときは,前のマウントボルトから外していく。後ろ下のボルトが最後。後ろ一本のマウントボルトになる前に,フレームに,古タイヤチューブなど,厚手のクッションを巻いておくこと。決して直接フレームに接触させないこと。

 近年,レストアベースのカワサキZも価格が高騰してきた。しかし,「値段が高いから」ではなく,「今後減少する一方の貴重な文化遺産を取り扱うのだ」という意識を持つべきだと思う。値段の高低よりも,この世に残存する数のことを考えて,二度と生産されることのないこの名機を,ひとつでも多く後世に残すべきだと思うんだ。

分解したパーツをデスクの上に並べて整理する。

分解したパーツをデスクの上に並べて整理する。ピストンには番号を振っておく。1番シリンダーに入っていたピストンは,1番シリンダーに戻す。

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カワサキZエンジンの分解③ 講義;工具とケミカルの説明等。

 そして,次の週,,,,いきなり,皆で5機のカワサキZエンジンを分解し始める。ほとんどが予備知識無し。文献読んで来いと言うたのに,どーも,教員も含めて真面目に読んできた奴はあまりいないみたいだ。目前のエンジンに,目の色変えて皆でむしゃぶりついていくみたいな・・・。
 カワサキZのエンジンという貴重なものを,素人に等しい学生たちに触らせて分解させていいのかという意見もあったのだが,いざ始まってみると,「ま,ええか。壊したら,俺が治すわいな」てなもんで。自分のレベルより遥かに高いものに触れて,技術を学ぶのはKCGの伝統だ。でも,ぶっ壊さないように丁寧に分解しろよ。
 旧車のエンジンを分解するときは,カムのタイミング等,計測したり記録したりしておいたほうが良いことが多々ある。また,各種ボルトやパーツには番号を振った荷札をつけたり,ジップロックに分類して管理する。

Z750A4のエンジンを下ろす前

 
写真はカワサキZ750A4のエンジンを下ろす前。近県の山奥で30年間,眠っていた車両。あちこち錆がひどい。

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分解したカワサキZエンジンのガスケット剥がし

分解したエンジンのガスケットを剥がすとき。

 古くなってへばりついて固まったガスケットには,CRCやなにか潤滑剤を染みこませて,すこしふやかしてから,カミソリで削り取る。カッターナイフや柄の付いた金属ヘラよりは,昔ながらのカミソリ(髭剃りに挟む剃刀)の刃を指で直接もって,シコシコと根気良く削り取るのが良いと思う。柄のある刃は,力が入りすぎるので,接合面を傷めることがある。

 「この道具・工具ではすこし弱くて,力が入らない」と思うようなもので,根気良く,シコシコとしていくことが肝要。決して,気短にならないこと。慎重に,慎重に。それでも,ボルトを捩じ切ってしまうことがあるし,うっかり床に落としてしまったりすることがある。床には布団を敷いておいたほうがいいかもね。

 ボルトを捩じ切ると,あとが大変。プロに依頼するしか方法はないことが多く,そうすると高くつく。

第5週:各チームに分解の仕方を実演して解説する

各チームに分解の仕方を実演して解説する。

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