パイオニア精神,阪神電車–鉄道

 10月の鉄道の日を記念して,今日からしばらくは鉄道のことを書きます。まずは電鉄企業のパイオニア阪神電車を取り上げます。阪神電車は阪神タイガーズの親会社です。1905年に営業を開始しており,都市間電気鉄道(インターアーバン)としては日本最古の歴史を誇ります。
 大阪-神戸間にはすでに官営鉄道が開業していたので,そこへ新たに鉄道を引くことはとても無理でした。そこで,考えたのが「路面電車」を引くことでした。経営者たちは路面電車は内務省の管轄(軌道法)なので開業可能と考えたのです。ところが,全線が路面上にあると電車の速度が遅くなるので,「線路のどこかが道路上にあれば,それも路面電車である」という新解釈を適用させて開業させたのです。大阪梅田付近と神戸付近,御影付近だけ路面であとはほぼ通常の鉄道のような鉄道線が出来上がったので結構高速な鉄道になったんです。
 通常の発想では高速で走る鉄道の開業は無理でも,路面電車を一ひねりすれば速達性の高い鉄道の開業にこぎつけることができたんです。パイオニアスピリットはまだあります。当時の官営鉄道は大阪-神戸間は1日8本だったのですが,阪神は開業日から1時間に5本も走らせたんです。乗客数は膨れあがったそうです。
 一見順風満帆なようですが,やはり官僚の嫌がらせがやってくるのです。つづく。

【出典】
川島 令三「全国鉄道事情大研究〈神戸篇〉 」(1992年,草思社)

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